話題
コロナウイルスで生まれる情報格差 見落とされがちな「テレビ手話」
新型コロナウイルスの情報、いち早く知りたい気持ち、みなさんあると思います。それは障害者も同じです。
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新型コロナウイルスの情報、いち早く知りたい気持ち、みなさんあると思います。それは障害者も同じです。
新型コロナウイルスの感染拡大で、「緊急事態宣言は出されるのか」「外出自粛による影響への補償はどうなるのか」「休校はいつまで続くのか」――など、多くの人が情報を求めています。一方、様々な障害のある人たちにとって、情報収集のための手段は十分とは言えません。中でも、聴覚に障害がある人たちにとって、いち早く情報が欲しい場合、テレビ局などが生中継する記者会見の場に手話通訳者がいるかいないかは大きなポイントです。「一般財団法人全日本ろうあ連盟」理事の中西久美子さんと、非常時における「情報格差」について考えました。
新型コロナウイルスが各地で確認されるようになってから、多くの地方自治体も会見を開くなどして情報を発信しています。
しかし、中西さんによると、自治体ごとに開かれている新型コロナウイルス関連の会見では、手話通訳を配置するかどうかの対応が一律ではないそうで、もし会見の場に手話通訳者がいたとしても、テレビ局などの放送では、通訳者が映されないカットになってしまうことが多くあるようです。
「連盟では、今回の新型コロナの関連だけでなく、首長からの重要な発表の際には手話通訳を付けてほしいと要望を出しています。ですが、『放送の自由』という観点から放送局の問題にされてきました」
「一方、放送局側からは『話し手の表情をアップにしたい』という事情があるという話を聞いたこともあります。放送局には、重要な情報を伝える使命について一考していただきたいと感じています」
他方、自治体のホームページを見ると、会見の内容がテキストになったものや、手話通訳者が映った映像が掲載されている場合もあり、情報収集の手段は多様であるようにも感じます。そこで中西さんが懸念するのは、高齢者への情報伝達です。
「聴覚障害者の中でも自治体ホームページやツイッター、Facebookなどを利用して情報を得ることが可能な人もいますが、比較的高齢の方はそのような方法での情報収集が困難な方もいます」
同連盟は2月末、厚労相宛てに「新型コロナウイルスに関係する記者会見での手話通訳を配置してほしい」という要望書を提出しています。中西さんによると、4月1日時点で回答はないとのことでした。
また、聴覚に障害のある人は、手話以外にも、話す相手の口元から言葉を読み取るという手段をとることがあります。
4月1日に開かれた参議院決算委員会でも、新型コロナウイルス関連の質問・答弁が相次ぎました。この委員会では、マスク姿の閣僚も多く、口の形をみることができないものもありました。しかし中西さんは、「国会中継はそもそも口形を読み取るのが困難なケース」といいます。
「確かに聞こえない人のコミュニケーションでは、口形も大事な情報になります。しかし、国会中継のような長時間に渡る場合や、映像が話し手を正面から捉えていない場合、テレビ画面をとしてみる場合などは、口の形を読み取るのは非常に困難です」
「それよりは、手話通訳や字幕でしっかりと情報が得られるようにすることを望んでいます」
3日の参議院本会議は、NHKが字幕付きで中継しました。
手話が言語であることは障害者基本法にも明記されています。障害者差別解消法でも合理的配慮について言及されています。
中西さんは「手話の言語的認知がまだ十分でないこともあり、法律ができたことと現状との乖離があります」と指摘します。
「私たちは、きこえない人だけが優遇された環境を求めているのではなく、きこえる人と同じように情報が得られるような環境の整備を求めています」と訴えます。
「緊急災害時を含めて、テレビ放送での情報配信を充実させることや、「アイドラゴン」(手話や字幕のない番組にそれらを付けることの出来る「聴覚障害者用情報受信装置」)を活用した情報配信を期待したい」
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