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「一緒に勉強する系」動画、人気の理由 インフルエンサー投稿
なんのハプニングも起きない動画ですが…
2月末、政府から「全国一斉休校の要請」が出されてから約1カ月が経ちました。この期間、自宅での学習を進めてきた子どもたちが使っていたツールの一つに、YouTubeがあったことはご存じでしょうか。「教育系YouTuberの授業動画でしょ?」と思う方もいるかもしれませんが、実はそれだけではありません。授業動画ではなく、無言のYouTuberが、ただ勉強や作業をするだけの動画が増えているのです。視聴回数も伸びていますが、子どもたちはなぜ無言の動画を勉強のお供にするのでしょうか。「大きな自習室のような場所を提供したかった」と話すYouTuberに話を聞きました。
黙々と机に向かって作業を進めるだけ。それでも5万回以上再生された動画を作ったのは、YouTubeチャンネル「とある男が授業してみた」(チャンネル登録者数83.3万人)を運営している葉一さんです。
カメラは固定し、机に向かって黙々と作業する手元をライブ配信しました。
画面には、葉一さんの手元だけが映し出され、音も、最初に「一緒にがんばりましょう」などの一言がある以外は、文字を書くペンの音やページをめくる音(時々鼻をすする音)がするだけ。
1本およそ45分の動画を、3月は12本配信しました。
葉一さんに聞くと、この趣旨の動画を休校期間中に配信した目的は二つあるといいます。
「学生たちの生活習慣を崩さないようにすること」そして、「オンラインでつながることによる安心感の提供」です。
「急な休校措置で、『勉強どうしよう』と思った人は多いでしょうけど、だからと言って『勉強しなきゃ!』となる人は多くない」と考えた、と葉一さん。
「『やんなきゃいけないんだろうけど、どうしよう』という漠然とした不安に襲われた人の方が多いと思ったんです」
「それならば学年や科目が限定されるものではなく、大きな自習室のような場所を提供したいと思い、午前中の生放送を企画しました」
葉一さんの動画は、学生たちからは「おおむね好評」とのこと。「『午前中に勉強するリズムが出来ました』と言ってもらえたのは嬉しかったですね」
実はYouTubeでは、これまでにも人気YouTuber「はじめしゃちょー」さんが、無言で机に向かうだけの「オレと1時間勉強する動画」が2016年に投稿され、これまでに約450万回再生されています。GoogleのYouTube広報担当も「世界的にも『一緒に勉強しよう』がコンセプトの『#StudyWithMe』のジャンルは人気です」と言うように、昨年までの累計視聴回数は2億回を突破しています。
LINEなどでも「これから1時間は勉強しよう」と約束するなど、「一緒感」出すことはできそうな気がします。
ただ、葉一さんは「昔に比べてネットがこれだけ普及したため、誰かと繋がることは容易になりました。だからこそ、『1人』に対する不安感も強いのかなと思っています」と、動画が求められている背景を分析します。
「だからこそ、誰かと一緒に頑張りたい、それが自分の好きな人や慕う人であればなおさら嬉しい。そんな想いがあるのかなと思っています」
葉一さんは休校中に机に向かう子どもたちに向けて、「(休校期間中は)サボろうと思えばいくらでもサボれる。だからこそ、ここで努力をできた人は強いです」とエールを送ります。
YouTubeで公開されている「一緒に勉強する系」の動画は、他にも、チャンネル登録者数123万人の人気クリエイター「ゆきりぬ」さんも公開。1時間の作業動画は、2020年2月29日の公開後、約2週間で12万回以上視聴されています。
日本での「一緒に勉強する系」動画の視聴回数が休校期間中にどれだけ伸びたかなどの正確な数字はありませんが、GoogleのYouTube広報担当者によると、「以前から、『一緒に勉強する系』の動画はトレンドとしてありましたが、今回の休校期間で新たに投稿された動画もあり、全体として視聴回数は伸びています」と話します。
筆者は、1年前、社会福祉士の国家試験のため何年かぶりの受験勉強を経験しました。当時、もし「一緒に勉強する系」動画を知っていたら…多分、見ていました。
子育てしながら勉強していた当時、子どもを寝かしつけた後の深夜、のそのそと起き上がってきてテキストを開いていましたが、正直、もうその時点で疲労困憊状態です。さらに勉強なんて無理無理……と思いつつなんとか乗り切ったのですが、もし当時、オンラインで一緒に勉強してくれる人がいたらやる気と効率は格段に上がっていたと思います。
人の目があることで高まるやる気だってあるんです。
今年の秋、またとある試験を受けようと思っている私ですが、間違いなく、「一緒に勉強する系」動画、見ます。
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