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ミルクボーイ 角刈り無料の恩、号泣の家族動画 にじみ出る魅力の源

漫才で「腕を組んでいる虎」といじったトニー・ザ・タイガー(中央)と腕組みポーズするミルクボーイの2人=2020年1月28日、東京都渋谷区
漫才で「腕を組んでいる虎」といじったトニー・ザ・タイガー(中央)と腕組みポーズするミルクボーイの2人=2020年1月28日、東京都渋谷区

目次

お笑い芸人は、プライベートと芸風が地続きになって魅力が生まれることが多い。昨年の『M-1グランプリ2019』で優勝を果たして以降、さまざまなメディアに引っ張りだことなったミルクボーイの駒場孝(33)と内海崇(34)も例外ではない。成功を信じ無料で角刈りにしてくれた理容室への恩。自らを奮い立たせた「昔は面白かった」の言葉。二人にまつわるエピソードから、お笑い芸人にとっての「キャラ」について考える。(ライター・鈴木旭)

コンビ低迷期を支えた駒場の肉体美

ダウンタウン・松本人志が本格的な肉体改造をはじめた2011年ごろ、芸人の下積み時代を送る駒場もまた、ボディーメイクに精を出す1人だった。父親の影響で中学時代からトレーニングを習慣としていたのだ。

今田耕司やサバンナ・高橋茂雄といった先輩芸人にかわいがられたのは、そんな時代背景もあったのかもしれない。2014年にはその縁がつながり、ピンで『やすとものどこいこ!?』(テレビ大阪)にレギュラー出演している。2016年、駒場は大阪ボディビルコンテストの決勝に進出。同年に『明石家電視台』(毎日放送)のボディービル特集や、『よしもとスポーツバトル』(関西テレビ)に出演するなど、肉体を活かした露出も目立っている。

一方、駒場には「M-1」との距離が遠くなっていた自覚もあったようだ。動画サイト「GYAO!」が1月末まで配信していた番組『M-1アフター座談会新王者ミルクボーイが語り尽くす!(中編)』のなかで、駒場は「やすとも(海原やすよ・ともこ)さんが楽屋で『ミルクボーイって昔は面白かったって後輩に聞くよ』って(言ってきて)ドーンときたんで、それが。もうやらなって。恥ずかし過ぎて」と、漫才と向き合ったきっかけについて語っている。

芸人によっては、お茶を濁して終わる一幕だったのかもしれない。しかし、駒場にとって漫才は特別なものだった。それからは先輩からの飲みの誘いも断り、漫才に打ち込む日々がはじまる。この駒場のストイックさは、漫才のかけ合いでも反映されているように思う。内海の長いツッコミを待ち、“ここぞ”という間合いで「分かれへんて。オレも○○やと思うてんけどな……」と挿し込むタイミングが職人を思わせるのだ。

ミズノが推奨する「ながら運動」の講習を受ける日本電技の社員ら。講師は、いま人気のお笑いコンビ「ミルクボーイ」が務め、会場は沸いた=2020年1月21日、東京都墨田区の同社本社
ミズノが推奨する「ながら運動」の講習を受ける日本電技の社員ら。講師は、いま人気のお笑いコンビ「ミルクボーイ」が務め、会場は沸いた=2020年1月21日、東京都墨田区の同社本社 出典: 朝日新聞

内海が“化けた”もう一つの要因

駒場のレギュラー番組が決まって2年ほど経った頃、内海は自身のブログで、パチンコや競馬といった趣味のギャンブルについて書いている。実際に競馬番組にも出演していたようだが、内海は手放しで喜べなかったようだ。今年1月に掲載されたクイックジャパンウェブのインタビューのなかで「ギャンブルをお笑いには活かせてなかった」と当時を振り返っている。やはり駒場と同じく、内海も漫才で周囲を圧倒したいという思いが強かったのだろう。

M-1グランプリの創設者である島田紳助さんは、2007年3月にNSC(吉本興業のお笑い養成所)で行った特別講義なかで「衣装を考えなあかんわ。区別でけへんで? 見てる側にとっては。『また同じようなヤツ出てきよった……』で、マイナスからはじまんねん」と、芸人にとって衣装がいかに大切かを語っている。膨大な数の芸人を見る審査員の目を引くには、まずは外見から印象づける必要があるということだ。

この点に気づいたのか、内海も2016年にダブルのスーツを着込み、翌年に髪形を角刈りにした。往年の漫才師然とした内海の見た目は、観客に強烈なインパクトを与える。すべてはここでそろっていたはずだが、2017年と2018年の賞レースではあと一歩のところで結果を出せずにいた。

2018年10月5日の内海のブログには「何もしていない日をなくそう。と彼女に尻を叩かれ」という一文が登場する。この彼女の言葉が響いたのだろうか。以降のブログを読み進めると、漫才に向き合って自信をつけていく様子が手に取るように伝わってくる。

「芸人さんにおもしろかったと言われてうれしいけど言われてるようではだめ。まじでびびったら何も言わない」「本当に面白いものは伝わる。絶対に間違ってない」といった自身を鼓舞する文章から、「ほぼほぼ新ネタで挑んだ かなり手応えあった隠しきれない自信」と、なにかをつかんだかのような言葉が続く。

そして、M-1グランプリ2019の決勝メンバー発表前には「決勝にいけばもうバイトすることもないだろうからかみしめて働こう」と予言めいた言葉まであるのには驚きを隠せない。

結果として、内海は、漫才に打ち込んで成功をつかんだ。その姿は、さながら落語「芝浜」に登場する魚屋・勝五郎のようである。内海は、日本人が好むサクセスストーリーを地でいった男なのだ。いずれにしろ、内海が“化けた”ことで漫才の完成度がグッと高まったのは間違いないだろう。

イベントにも引っ張りだこのミルクボーイの二人=2020年1月10日、大阪市天王寺区
イベントにも引っ張りだこのミルクボーイの二人=2020年1月10日、大阪市天王寺区 出典: 朝日新聞

人情の街・大阪で形成された漫才

1月11日に放送された『M-1アナザーストーリー ~“史上最高”大会の舞台ウラ完全密着~』(朝日放送テレビ)では、人情に厚いミルクボーイの素顔を垣間見ることができる。

内海が通う「理容プロムナード」では、ご主人のはからいで角刈りが2年ほど無料になっているという。M-1決勝メンバーとなった内海の頭を気前よく散髪するご主人。ひとしきり仕事を終えると、「絶対優勝すると思う! そら僕が散髪してる(んだから)」と内海に激励を送る。その声を受けて店を出た内海は、街を歩きながら「すみません……」と涙ぐんでしまう。“必ず恩返しをしなければ”という気持ちがあふれてしまったのだろう。

そして、結果は優勝。大阪にがいせんした内海は、さっそくご主人のもとへとあいさつに向かう。「ダントツやったな」と笑顔を見せるご主人。内海もうれしそうに歯を見せる。それから、いつものように散髪をはじめると、「コーンフレークと最中でな、あんだけ……二つのあれであんだけ攻めれるかって」「さすが芸人やなって思った」と感心した様子のご主人。それを背に涙をこぼす内海。漫才で喜んでもらったのがよほどうれしかったに違いない。

一方で駒場は、M-1で優勝して家族を安心させたいという思いが強かったようだ。2018年に結婚した駒場は同番組で「本人(奥さん)もそうですし、奥さんのお父さんとかお母さんとかにも、こう格好いいというか……あ、本当にちゃんとした人と結婚したんやなって(思ってもらいたい)」と語っている。

熱い思いが通じたのか、駒場は優勝という最高の土産を手に自宅へとたどり着く。笑顔で迎え入れる妻。そして、スマホで撮影された1本の動画が駒場を待ち受けていた。それは、M-1グランプリで最高得点をたたき出したミルクボーイを見て、駒場の家族が歓喜する映像。緊張と驚きが入り交じり、子どものようにはしゃぐ姿が印象的だ。その様子を眺め、男泣きする駒場。まるでうれしさと安堵(あんど)が噴出したかのようだった。

ミルクボーイの漫才は、人情に厚く、個性が許容される大阪の街の雰囲気がベースにある。ともすると、「コーンフレーク」「最中」といったネタばかりに目がいくが、大阪に土着した二人のキャラクターがあってこそ成立する漫才なのだ。大阪を拠点に「漫才を極めたい」と公言する二人。「キャラ」と「芸」が結びついたミルクボーイの活躍は必然だったのかもしれない。

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