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ポルノ禁じた教義、膨らむ欲求…「性の現実」わが子にどう伝える?
子どもが性的コンテンツを見ていたら、何と声をかけますか?
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子どもが性的コンテンツを見ていたら、何と声をかけますか?
夫婦とも宗教団体の元「2世信者」で、漫画家のたもさんには、悩みの種があります。それは、小学4年生の息子が「ポルノ」を見るようにならないか、ということ。かつて所属した教団で、「不道徳」として禁止されていただけに、不安は人一倍です。性行為の方法など、フィクションが多く含まれていることもある、ポルノ。将来のパートナーを傷つけないよう、正しい欲求との向き合い方を伝える術(すべ)とは? たもさんの作品から考えます。
「ポルノは性の不道徳を連想させ、有害です」「間違った欲望をかき立てるドラマや音楽なども気をつけましょう」
たもさんは、キリスト教系の宗教団体で、そのような指導を受けてきました。夫婦間の性行為以外は、全て「汚れ」として退けられていたのです。
しかし信者の中には、かえって欲求を強めるなどして、結婚後に性的トラブルを起こしてしまうカップルもいました。
そんな経緯を思い出しながら、タブレット端末でゲームする息子「ちはる」を眺める、たもさん。「まだポルノとか大丈夫だよね……」
健全そうなパズルゲームを楽しむ姿に、安心したのもつかの間。ロード画面に、突然半裸の女性が描かれた広告が現れ、慌てふためきます。
「ちはるも、そのうちAVとか興味持つようになるのかな……」。たもさんは、夫の「カンちゃん」に不安を打ち明けます。
「ポルノを見たくなるのは自然なことじゃない?」「そこから学ぶことだってあるかも」。そんな意見を投げかけられますが、心配の種はつきません。
というのも、ポルノには、様々なフィクションが含まれている場合があるから。お互いの同意なく性行為をしたり、避妊をしなかったり。そのまま真似すると、問題化しかねない表現も少なくないのです。
かといって、やみくもに禁じてしまうの不自然です。むしろ「現実と虚構は違う」と教えたい。夫婦の間で、そんな結論に至ります。
「親がびびっちゃダメだね」「今は心の準備をしておこう」。来たるべき日に備えて、静かに決意を固める、たもさんなのでした。
実はたもさんにも、性にまつわる思い出があります。学生時代、ボーイズラブ(BL)を扱った漫画を読んでいたのです。
宗教団体の教義では、同性愛も禁止事項の一つ。「熱心な信者である母親に見つかると、こっぴどく叱られた」と、たもさんは苦笑しました。
しかし、そうやって自然な情動を抑えつけられると、かえって悪い結果につながってしまう。漫画の冒頭に描いた、カップルのエピソードには、そんな気持ちを込めたといいます。
昨年、献血促進用ポスターに、胸の大きな少女が描かれ、SNSで炎上しました。この一件も、性の伝え方について、考えを深める機会になったそうです。
イラストに批判が集まったのは、「女性は男性を満足させるべき」という誤ったメッセージを、公共で伝えてしまう恐れがあったからではないか――。たもさんは、そのように捉えています。
「本当は、女性も男性も、相手を大切に扱わないといけない。そして、ちゃんと相手の意見を聞いて、嫌がることをしてはいけない。そういうことが、常識である世の中になればいいな、と思います」
【執筆協力・NPO法人ピルコンのアドバイス】
インターネットを使う際に、性的な情報を全てシャットアウトするのは、もはや難しいことです。
親が非表示にする情報を選択可能な「フィルター機能」には、一定の効果が期待できます。しかし、決して万能ではありません。何か困り事があったときは、親に相談するよう、あらかじめ伝えておくのが大切です。
そして、子どもがAVや成人向けマンガなどを見ていたとわかったとき、一方的に叱ったり責めたりすると、親に相談しづらくなる恐れがあります。
大人向けに作られた、性に関する演技や演出が含まれるコンテンツは、原則的にはフィクションです。中にはリアルに近いものや、思いやりを感じられるものもありますが、現実的な内容かどうか見極める知識や経験が必要とされるでしょう。
そのことが理解できるまでは見るべきではないと、子どもに明確に伝えましょう。
親子間で日常的に、インターネットの使い方や、そこから得られる情報について話し合う。そのことは、子どもとの信頼関係構築にもつながります。
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