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「マスクしてくれんか」言われた女子高生 翻弄される社会、漫画に

しろやぎさんの作品から©しろやぎ秋吾
しろやぎさんの作品から©しろやぎ秋吾

目次

新型コロナウイルスの流行で翻弄される人たちを描いたマンガがインスタグラムで支持されています。描かれているのは、一斉休校で行き場を失った子どもたちや、マスクを買いに行く高齢者たち。作品を投稿したイラストレーターのしろやぎ秋吾さんは「色んな人の立場や思いがあるんだということを描きたかった」と話します。

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ズラリと並んだ先生からの一言

しろやぎさんが投稿した新型コロナウイルスにまつわるマンガは、一斉休校になった子どもたちの話と、高齢者を中心に描かれる話の2作品です。二つの作品には計4万7千の「いいね」がついています。

一斉休校の影響を受けている子どもたちの話は、休校期間中に卒業式を迎えた高校生の長女を中心に話は進みます。

一斉休校により高校生活が突然終わってしまった長女は、休校中のある日、卒業式のために朝早く家を出ます。
外出による感染を心配する次女に対して、弟は「大人は普通に外出してんじゃん。オレらももう感染してるかもよ~」と、ソファに寝そべりながら応じます。

一方、長女は電車内。正面に座っているマスク姿の男性に、「おい、ねーちゃん、マスクしてくれんか?」と声をかけられますが、「すみません、どこにも売っていないもので…」と冷静に対応します。

そして学校に到着した長女が教室のドアを開けると、ズラリと並んだ先生たちからかけられたのは「ご卒業おめでとうございます!!」の一言でした。

マンガの途中では、ディズニーランドの休園や、「外出をしている子どもがいた」というツイッターでの批判、選抜高校野球の中止……現実をリアルに描くコマも挟み込まれています。

しろやぎさんの作品から©しろやぎ秋吾
しろやぎさんの作品から©しろやぎ秋吾 出典:インスタグラム@siroyagishugo

「大騒ぎする大人の隣で子どもは…」

しろやぎさんは普段、子育てをメインにイラストなどをインスタに投稿していますが、「一斉休校後、学生たちがどう過ごしているのかが気になって」新型コロナウイルスに翻弄される人々を題材にすることにしました。

「一斉休校のニュースを見たとき、そろそろ卒業式ちゃうんかと思い、学生の声を知りたくて、ツイッターを見たんです。そしたら逆に、『外出するな』とか、若者を叩いている声がでかい印象があったんです」
「それを見て、イライラしてしまって…卒業式を描こうと思いました」

数年前に高校で教員として働いていたしろやぎさんは、そのときに接していた子どもたちだったらこういう反応をするだろうと想像しながら作品に登場する子どもたちの姿を描きました。

電車内で長女が大人から「マスクしてくれんか?」と声をかけられるシーンは特にリアル。「『変なこと言うおじさんがいる』『腹立てるのもばからしい』という感情なのかなと思って描きました」

最後のコマを「ご卒業おめでとうございます!!」と、文字だけで埋め尽くしたことについては、「僕が学生だったら休校はうれしいけど、そうじゃない人ももちろんいる。先生だってこの期間にくつろいでいる人もいれば、そうじゃなくて『卒業式はちゃんとしてあげたかった』と思っている人もいるはず」とした上で、「でもそれを長々と語るよりも、最後は『卒業おめでとう』の一言で十分だと思った」といいます。

しろやぎさんはこの投稿に、「大騒ぎする大人たちの隣で子どもたちは何を考えているんだろう。仕方がない社会の動きを受け入れて何処に気持ちをぶつけたらいいんだろう」とコメントを付けています。

しろやぎさんの作品から©しろやぎ秋吾
しろやぎさんの作品から©しろやぎ秋吾 出典:インスタグラム@siroyagishugo

「買い占め」と言われる人のリアルは

二つ目の作品には高齢者が登場します。

作品は、マスクを買うためにドラッグストアに並んだ高齢女性の「私が守らないかん」という心の声から始まります。
高齢女性は、「あのドラッグストアに朝から並んだらマスクが買えるらしい」という情報を得て、同居する孫のためにマスクをと思い、並んでいたのです。

ただ、当の高齢女性の孫は、母から「マスク使わせてもらいな」と言われていたのに、公園で遊ぶときにはマスクを外してポケットにしまってしまいます。
ネット上の「高齢者がマスクも紙も買い占めている」という声を知っていたからです。

一方、息子に「マスク使わせてもらいな」と声をかけた母親は、認知症である自身の母に面会するため、高齢者施設に行きます。面会後、施設からは「感染症対策のため明日から面会できなくなります」と制限をかけられてしまいます。

この作品に出てくる2人の高齢女性は、それぞれ、自身の祖母がモデルだといいます。
「『ばあちゃんだったらマスク買いに行くやろうな』とか『もしばあちゃんが施設に入っていたらこんな気持ちやろうな』と思いながら描いた」

しろやぎさんの作品から©しろやぎ秋吾
しろやぎさんの作品から©しろやぎ秋吾 出典:インスタグラム@siroyagishugo

「炎上するかと思ってた」

しろやぎさんは、新型コロナウイルス関係の情報をネットで集める中
、気づいたことがあると言います。
「ネットの声を見ると、みんな好き勝手言ってピリピリしている雰囲気を感じます」

そんな中でこの作品を投稿すれば、「『不安をあおるな』とかコメントがついて炎上するかと思っていた」。
ただ、予想に反して、そんなことはなかったといいます。逆に、こんなコメントがつき、「共感した」そうです。

「色んな人の立場を考えて、少しでも優しい気持ちになれたらいいな」

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