漫画「そんな未来の話」
舞台は、太陽が膨張を始め、いずれ地球も飲み込まれることがわかった未来。人類は宇宙船に乗り込み、次の「地球」への引っ越しを始めます。
当時子どもだった「たっくん」と「まきちゃん」も、長い宇宙船生活の中で大人になりました。頭上の「空」は宇宙船の天井。光にあふれていた地球とは異なり、近く、暗いものでした。

自分たちが生きている間に、次の星にたどり着ける保証はありません。地球での思い出が遠くなる中で、ふさぎこみがちになったたっくん。
「今の小学生は地球の記憶が無くて羨ましいよ」
一方で、まきちゃんは「ここにはここの良い所があると思うよ」と優しく語りかけます。彼女は彼のために、ある「サプライズ」を用意していました。

「ちょっと空を見ていて!」
そう言われたっくんが見上げた宇宙船の「空」。そこには、ライトで「結婚してください」の文字が……。
うんざりしていた「空」に描かれた愛おしいメッセージに、たっくんは涙を流しながら、プロポーズに応えるのでした。

対照的な2人、際立つように
今回の「そんな未来の話」は、みさみさんが5年ほど前に描いた作品をリメイクして投稿したもの。宇宙船の中でも地球にいたときと同じように、「結婚」という営みを続ける物語です。
藤子・F・不二雄のSF作品に影響を受け、「地球に住めなくなった未来でも、人類が生き残っていて欲しい」という希望も込めて描いたといいます。

みさみさんが過去作品をリメイクする上で気をつけたのは、2人のやりとりでした。過去を振り返りがちなたっくんと、前向きにとらえようとするまきちゃん。対照的な2人の気持ちが際立ち、寄り添っていく姿が印象的です。
昔のことがよく見えてしまっても…
特に、2人の目に映っていた宇宙船の「空」は、まったく異なるものだったことがわかります。「たっくん」が「息が詰まる」と表現し、「まきちゃん」はその環境を活かしたプロポーズを思いつく……。
みさみさんは「どうしても昔のことがよく見えて、落ち込んでしまうときも、視野を広げると思ってもみなかったものが見えてくることもあるのではないでしょうか」といいます。
「他人の考えを取り入れて、見方や考え方を変えることはすごく大切だと思っています」

「未来の宇宙船」という非日常の世界の中で、日常を紡ごうとする人々の思い。みさみさんの漫画は、普遍的なメッセージを伝えてくれています。