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連載

#1 とーやま校長ラストメッセージ

震災直後のラジオ、とーやま校長が「変えなかったこと」 曲にも想い

東日本大震災の頃のSOLについて語るとーやま校長=丹治翔撮影
東日本大震災の頃のSOLについて語るとーやま校長=丹治翔撮影

目次

【予告】「SCHOOL OF LOCK!」のパーソナリティーとして2010年からの10年間、10代リスナーと向き合い続けてきたとーやま校長。withnewsでは、生徒たちへの思いや、この10年で得たものについてインタビューをしました。3月17日から3回に分けてお届けします。
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2005年からTOKYO FMをキーステーションにJFN系38局で、平日毎日放送されている、「SCHOOL OF LOCK!(SOL)」の「とーやま校長」が、3月をもって退任します。2010年の着任から10年。生徒にとっても、とーやま校長にとっても大きな出来事の一つに、2011年3月11日の東日本大震災がありました。校長にとっては着任後1年経たない中での出来事。手探りの中続けた放送について、振り返ってもらいました。

<SCHOOL OF LOCK!>
2005年からTOKYO FMをキーステーションにJFN系38局で、月~金曜夜10時から放送。番組を「ラジオの中の学校」と位置づけ、パーソナリティーの「とーやま校長」と、「生徒」に見立てたリスナーたちが、電話やネットの番組掲示板を通じて交流。自由に書き込みをすることができる掲示板に登録した生徒は延べ50万人を超え、中高生からの人気を集める。

とーやま校長は2代目。初代はやましげ校長。教頭もいて、やしろ教頭、よしだ教頭、あしざわ教頭が番組を支えた。PerfumeやMrs. GREEN APPLE、サカナクションなども出演し、番組内に授業(コーナー)を持つ。そして、今年4月からは「さかた新校長」、「こもり新教頭」がパーソナリティーとなることが3月5日の放送で発表された。

「何をしゃべったらいいんだ」

SOLの校長を始めて1年経ってないときに、東日本大震災が起きました。
3月11日は金曜日で、その日の放送は休止になったけど、翌週の月曜日からは他の番組は基本ずっと報道番組の中、「SOLはいつも通りやる」となって。
 
正直、「やるんすか」ってなりました。ただ、「何をしゃべっていいかわからないけども、できることはあるだろうな」って気合入れていったのを覚えてますね。
 
当時は(パーソナリティーが)僕とやしろ教頭。
情報も錯綜していて、下手なことも言えない。CMもないし……そんな中で、何をしゃべればいいんだろうと困惑しました。
東日本大震災直後の放送を振り返るとーやま校長=丹治翔撮影
東日本大震災直後の放送を振り返るとーやま校長=丹治翔撮影

いつものくだり、生徒からの「落ち着いた」

めっちゃ覚えているのは、ファックス番号の呼び込みで、お約束のくだりをやったことです。

放送前にやしろ教頭と、「どうしようか」って話になったんですよね。ムードとしては、ぼける雰囲気まったくないし。
それで僕も、「わかんないっす、これは」って言って。
 
でも最終的にやしろ教頭が「変えるのも変だし、やろう」ってなったんですよ。
 
そしたら、放送後、「いつもと同じ時間があったので、とても落ち着きました」って書き込みがあって。

なるほどと思いました。

過剰に「大丈夫ですか」っていうのもうそくさいし。極力普段通りにやるというのが(リスナーは)安心するというを学びました。
東日本大震災があった3月11日の翌週、14日の放送後記
東日本大震災があった3月11日の翌週、14日の放送後記 出典:スクールオブロック!

限られた選曲の中で

震災直後の選曲は、作家さんやディレクターの人たちが話し合って、「揺れる」や「波」の歌詞が入った曲を入れないということを徹底していたんです。

だから流せる曲も限られました。
 
アーティストの方が独自にCD-Rに曲を入れて送ってくれた曲も流しました。ゴッチさん(ASIAN KUNG-FU GENERATION(アジカン)の後藤正文さん)も、弾き語りを録音したものを持ってきてくれました。

印象に残っている「アネモネの咲く春に」

東日本大震災後の2013年に、番組を通して福島・岩手に行っているんです。

昼間、めちゃくちゃ天気がいい中、車で沿岸地域を回っていたときに「(岩手からの生放送だった)今日の1曲目、校長が決めて」と言われて。
 
そのとき、アジカンの「アネモネの咲く春に」が浮かんで、すぐディレクターに伝えました。この曲は「拝啓 冬の朝 白いため息たちよ」から始まり、「凍土」とかの言葉も出てきて、震災を感じる曲。
 
「アネモネの咲く春に」が入ったアルバム(2012年リリースの「ランドマーク」)も、アジカンが震災への思いも込めたアルバムだったんですよね。
 
実は、SOLの放送中に流す曲は、ディレクターさんが生放送中に、とっかえひっかえそのときの内容に当てて選んでいます。
 
普通の番組は、「このときにはこの曲を流す」と決めた構成台本がありますが、SOLは、ほとんどを話の流れで決めています。「ここまでの話の流れだったらこの曲だけど、話の流れが変わったからこの曲だ」とか。
 
そんな中、自分で選曲した曲で印象的なのは、その曲です。聴くと、未だに海ぞいの景色を思い出します。
震災復興祈念公園として整備が進む宮城県南三陸町の防災対策庁舎周辺。後方はかさ上げされた土地につくられた新しい商店街=2020年2月、福留庸友撮影
震災復興祈念公園として整備が進む宮城県南三陸町の防災対策庁舎周辺。後方はかさ上げされた土地につくられた新しい商店街=2020年2月、福留庸友撮影 出典: 朝日新聞

10代へ「震災は自分事」

2年ほど前、美味しいものでも食べに行こうと思い、自分で車を運転して福島に行きました。

3時間くらいで到着して、高速道路を降りた時にまず目に飛び込んできたのは、汚染土が入ったたくさんの黒い袋でした。

新聞でももちろん知っていたことでしたが、実際目の当たりにすると凹みました
 
今思うのは、2011年の記憶がもしかしたらおぼろげかもしれない10代に、「震災は自分のことなんだよ」というのを伝えたいということ。僕はあの時東京で体験しているので、自分のことと思えますが、10代にとっては他人事になっている人もいるかもしれない。
 
取り返しのつかないことになる前に、今出来ること、例えばもしもの時の家族の待ち合わせ場所を決めておくだとか、スマホにしか入っていない大事な人の連絡先を紙に書いて財布にでも入れておくとか。些細だけどいつか知っておいて良かったと思う日が来ると思うので、こういうことをうるさく伝えて行くのが大事だと思っています。
【予告】「SCHOOL OF LOCK!」のパーソナリティーとして2010年からの10年間、10代リスナーと向き合い続けてきたとーやま校長。withnewsでは、生徒たちへの思いや、この10年で得たものについてインタビューをしました。3月17日から3回に分けてお届けします。

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