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アメリカとイラン、微博でもケンカ さっそく中国人ユーザーのネタに

在中国イラン大使館の微博アカウント、及び論戦の始まりとされる「アメリカの邪悪な勢力の終結」というツイート
在中国イラン大使館の微博アカウント、及び論戦の始まりとされる「アメリカの邪悪な勢力の終結」というツイート

目次

最近、中国版ツイッター微博において、在中国イラン大使館と在中国アメリカ大使館の論戦が注目を集めています。中国のネットユーザーたちが論戦に興味津々。ネットでは、「世界最大の帝国主義国家と世界最大の神権国家が、世界最大の社会主義国家のプラットフォームで論戦を繰り広げている」と話題になっています。一体、どんな中身なのでしょうか?

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在中国アメリカ大使館の微博でのアカウント
在中国アメリカ大使館の微博でのアカウント

英語圏のSNSへの不信

「世界最大の帝国主義国家」アメリカと「世界最大の神権国家」イランが中国で注目を集めたのは、1月3日のことでした。

イラン革命防衛隊の対外工作を担う「コッズ部隊」のソレイマニ司令官を、アメリカがドローン攻撃で殺害したことで、中東情勢の緊張感が一気に高まりました。

そんな中、中国メディア「観察者網」は、イランの最高指導者ハメネイ師のツイッターアカウントが一時アクセス不能になり、またフェイスブックやインスタグラムでは、イランに賛成・同情するアカウントや内容が削除あるいは制限されたと報じました。

そこで、イランが目をつけたのが中国版ツイッター微博です。微博は中国で最大規模のSNSで、月間アクティブユーザー数は4.6億人を超えています。

微博の言語は主に中国語ですが、外国の政治家、俳優、企業などもアカウントを開設しています。

かつてホーキング博士がアカウントを開設した時には、数時間で100万人のフォロワーを獲得し、大きなニュースになりました。

日本でも福原愛さんや木村拓哉さんらが微博のアカウントを持ち、数百万人のフォロワーを有しています。

イランの最高指導者アリ・ハメネイ(Ali Khamenei)師=2007年9月、テヘラン
イランの最高指導者アリ・ハメネイ(Ali Khamenei)師=2007年9月、テヘラン 出典:ロイター

「在中国イラン大使館」のアカウント 人気急上昇

在中国イラン大使館は、もともとフォロワーは数万人ほどで、存在感は大きくありませんでした。

ツイートの内容は、イラン政府と中国政府や民間の交流のほか、ペルシア文化や現地の観光資源の紹介など。投稿数も少なく、1日1、2件程度でした。

それが、ソレイマニ司令官の殺害後、一変します。アメリカを批判するような内容が増え、1月8日に、在中国イラン大使館が中国版ツイッターの微博で、「美国在西亜邪悪勢力的終結、已経開始」(西アジアにとって邪悪な勢力である米国の終わりは、すでに始まっています)と投稿し、論戦が始まりました。

論戦のきっかけとなった在中国イラン大使館の投稿には、5万3000件のシェア、3万4000件以上のコメント、また54万近くのいいねを集めました。フォロワーも急増し30万人を超えています。

ソレイマニ司令官の葬式に参加するイランの人々=テヘラン、イラン、2020年1月6日
ソレイマニ司令官の葬式に参加するイランの人々=テヘラン、イラン、2020年1月6日 出典:ロイター

アメリカ側は「自由」「民主主義」を強調

一方の在中国のアメリカ大使館は、微博で265万近くのフォロワーがあり、もともと影響力のあるアカウントでした。

普段から毎日10回以上投稿。内容はトランプ大統領やポンペオ国務長官の発言、また「透明度」というアメリカの価値観や選挙など、民主主義や自由に関する言論が多く見られます。

ソレイマニ司令官が殺害された後の1月6日と7日、在中国のアメリカ大使館の微博アカウントは中国語でソレイマニ司令官こそがテロリストで、暴力的な人物だと中国語で発信しました。

多くの参列者がいたソレイマニ司令官の葬式について、イラン人評論家の言葉を借りる形でイラン政府の政治的な動員にすぎないと主張しました(1月10日)。また1月14日には、イランの政権を腐敗的、残虐的だと批判しました。

在中国アメリカ大使館のツイート、選挙制度の重要さを訴えている。
在中国アメリカ大使館のツイート、選挙制度の重要さを訴えている。

激しい言葉のぶつかり合い

論争のきっかけとなった在中国イラン大使館の微博アカウントの投稿にある「邪悪勢力の終結」という一文は、1月6日にイランのザリーフ外相がツイッターアカウントから英語でツイートした内容が元になっていると見られます。

英語のツイートでは以下の内容が投稿されました。

「トランプさん、あなたはの一生の中にこのような人の海を見たことがありますか。我々の地域に対するピエロたちのアドバイスを依然として聞き入れますか。我々の偉大な国家と人々の意志を破壊することを依然として夢見ていますか。西アジアにとって邪悪な勢力である米国の終わりは、すでに始まっています」

1月8日、在中国イラン大使館の微博アカウントは、アメリカ軍基地への攻撃ついて発信しました。

「イランイスラム革命防衛隊の声明:アメリカの攻撃を受けて亡くなった指導者への復讐をするため、アメリカの駐イラク基地へ弾道ミサイル発射をしました。もしアメリカがこれに対して報復する場合、また必ず最強の復讐をします(1月8日9時41分)」

在マレーシアのアメリカ大使館前にソレイマニ司令官の殺害に抗議する女の子=クアラルンプール、2020年1月7日
在マレーシアのアメリカ大使館前にソレイマニ司令官の殺害に抗議する女の子=クアラルンプール、2020年1月7日 出典:ロイター

これらに対し、アメリカは、在中国のアメリカ大使館の微博アカウントから反論しました。その多くはトランプ氏の発言です。

1月9日 11:55
◎私はアメリカ大統領である限り、イランは永遠に核兵器を保有することが不可能です。昨夜のイラン政権の襲撃において、アメリカ人の負傷者はいませんでした。アメリカ国民もこれに対して感謝し、うれしく思います。

1月9日 12:33
◎イランが引き続き暴力、動乱、恨みと戦争を煽動するならば、中東には平和と安定は存在しません。文明世界はイラン政権にはっきりとした統一的なメッセージを出します。あなたたちの恐怖、暗殺、世界を混乱させる活動は容認されません。私はNATOが中東により大きく関わることを促します。

1月9日 13:21
◎イランの国民と指導者へ、われわれはあなたたちに偉大な未来、あなたたちに値する未来、国内の繁栄、世界各国と平和に過ごせる未来が来ることを希望しています。アメリカは平和を求める全ての人とハグをします。

両方のツイートを見ると、イランとアメリカが互いに相手が「侵略」したことを強調し、汚職政権、テロリストなどのレッテルを貼り、また相手こそが中東地域を暴乱・恨み・戦争へ導いた張本人と指摘しています。

在中国のアメリカ大使館の微博アカウントが1月9日に発信した「アメリカは平和を求める全ての人とハグをします」に対して、1月13日、在中国イラン大使館の微博アカウントが反論しました。

「あなたは本当に無数のイランの国民のそばにいますか? あなたは彼らの英雄を暗殺したばかりです」

葬式に掲げられているイラン・ソレイマニ司令官の写真=ケルマン、イラン、2020年1月7日
葬式に掲げられているイラン・ソレイマニ司令官の写真=ケルマン、イラン、2020年1月7日 出典:ロイター

中国のネットユーザー「本当のけんかはしないでね」

中国のネットユーザーの反応で目立つのは、イランへの応援です。アメリカに対しては「民主主義や自由などの理念を掲げているのに、自国の人種差別問題や人権問題を解決していない」という批判の声が多数、投稿されました。

一方、イランとアメリカの大使館が微博上で火花を散らしているのを様子を面白がる人も。

「口げんかはいいですが、本当のけんかをしてはいけません。でも、オフラインで会いたいのなら、地図によると、両大使館は1.5キロしか離れていないようですが……」

「両大使館の中間点は、亮馬橋(北京市内にある「亮馬河」という川をまたがる橋のことで北京地下鉄10号線の駅名にもある。駅周辺は外国大使館が多く、在中国日本大使館もその付近にある)です。そこで決戦してはいかがですか?」という投稿もあり、一時、微博上では「決戦亮馬橋」(The Battle over Liangma Bridge)が一つキーワードになったほどした。

論戦は、世界のメディアも報じています。

オーストラリア放送協会(ABC)や、ニューヨーク・タイムズも「イランとアメリカが中国の微博で論戦」というタイトルの記事を発信しました。

中国の国内向けメディアと思われていた微博。アメリカとイランの争いという状況においては、客観的・中立的な言論の場になり得ることを示す結果になりました。

非英語という環境から生まれる中国語のSNSの意外な役割は、中東情勢次第では、論戦の場としてますます活用されるかもしれません。

ちなみに、最近の両国は、中国で感染が拡大している新型肺炎の影響で「一時休戦状態」になっています。

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