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「就活エントリー、もう人気順で」漫画「でぶどり」が描くナビサイト

「ナビサイト就活」との距離感、考えてみませんか?

鳥のキャラクターが登場する漫画『毎日でぶどり』。主人公の「でぶどり」は、初めての就活に臨みますが……
鳥のキャラクターが登場する漫画『毎日でぶどり』。主人公の「でぶどり」は、初めての就活に臨みますが…… 出典: 橋本ナオキさん提供

目次

寒さ厳しい冬の季節。大学生にとっては、就職活動の準備に取りかかる時期でもあります。悩みの種の一つが「どの企業にエントリーするか」。手始めに、色々な会社の情報が載った「ナビサイト」に登録する人も少なくありません。一方で昨年には、業界大手の企業による個人情報の販売が問題化しました。橋本ナオキさん(@Abhachi_Graphic)作の人気漫画『毎日でぶどり』が、「ナビサイトと就活」について描きます。
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「片っ端からエントリー」だと困る

就活を扱った『毎日でぶどり』の描き下ろし漫画
就活を扱った『毎日でぶどり』の描き下ろし漫画 出典: 橋本ナオキさん提供

「ナビサイト」就活の「落とし穴」

出典: 橋本ナオキさん提供

でぶどりのように、企業選びに迷うのは「就活あるある」。そのため学生の多くは、求人情報がまとまった「ナビサイト」に登録します。

しかし昨年、このサービスを巡る問題が発覚しました。「リクナビ」を運営する業界大手・リクルートキャリアが、登録した学生の内定辞退率を、取引先企業に販売していたのです。

 就活のインフラとも言える情報サイト「リクナビ」が、学生の閲覧履歴をもとに内定を辞退する確率を予測し、本人に十分説明しないまま企業に売っていた。運営するリクルートキャリアは、政府からの指摘を受けて販売をとめたが、学生からは怒りの声があがる。

 リクナビは、年に80万人の就活生と3万超の企業が使う最大手。その閲覧履歴を使って2018年3月から始めたサービス「リクナビDMPフォロー」が問題になった。

 仕組みはこうだ。

 企業は、採用活動で向き合っている就活生の内定辞退を減らしたい。前年の辞退者の名簿を渡すと、リクナビは、その一人一人が、いつ、どの企業をどれほど閲覧していたか、人工知能(AI)で分析する。内定後も他の企業を閲覧していたか、といった具合だ。

 実績を踏まえ、その年の就活生が辞退する確率を1人ごとに5段階で予測。こうした情報を1年あたり400万~500万円で38社に販売していた。対象の就活生の数は「非公表」という。
リクナビ、「合否に使わぬ」合意企業に 学生の内定辞退確率、38社に販売 (2019年8月3日 朝日新聞朝刊)

リクルートキャリアは、一部の学生について、「第三者への情報提供」に関する同意を得ていませんでした。

 リクルートキャリアはこれまで、政府の個人情報保護委員会から「学生への説明が不明瞭」との指摘を受け、サービスを一時停止した、と説明。リクナビの登録時にデータ利用についての同意を学生から得ているので個人情報保護法には触れていない、としてきた。

 しかし、社内での再調査の結果、「第三者に情報を提供する」との説明が、19年3月以降の一部について同意を得る際の文言になかった。利用の同意は得られておらず、個人情報保護法に触れることが分かったという。
内定辞退予測、7983人同意なし リクナビが販売、情報保護法に違反 サービスを廃止 (2019年8月6日 朝日新聞朝刊)
出典: 橋本ナオキさん提供

販売された情報は、実際の選考に反映されたのか。その点があいまいであることも、事態を複雑にしています。

 サービスの狙いは「辞退する可能性が高い就活生を引き留めるための手段」。採用の合否には使わないと合意した企業にのみ売ってきた、という。

 しかし、合否に使われたかどうかは、外部からは知り得ない。ある企業の採用担当者は、このサービスを使ったことはないと断った上で「選考で最も重視するのは能力だが、入社する可能性が低いなら内定を出すかどうか迷う」と話す。就職活動は近年、学生の売り手市場が続いている。一般論として、採用難は、こうしたサービスのニーズを高めそうだ。
リクナビ、「合否に使わぬ」合意企業に 学生の内定辞退確率、38社に販売 (2019年8月3日 朝日新聞朝刊)
出典: 橋本ナオキさん提供

そもそもナビサイトへの登録時に、十分な説明がなかった状況も明らかになりました。


 リクルートキャリアはこれまで、政府の個人情報保護委員会から「学生への説明が不明瞭」との指摘を受け、サービスを一時停止した、と説明。リクナビの登録時にデータ利用についての同意を学生から得ているので個人情報保護法には触れていない、としてきた。

 しかし、社内での再調査の結果、「第三者に情報を提供する」との説明が、19年3月以降の一部について同意を得る際の文言になかった。利用の同意は得られておらず、個人情報保護法に触れることが分かったという。
内定辞退予測、7983人同意なし リクナビが販売、情報保護法に違反 サービスを廃止(2019年8月6日 朝日新聞朝刊)
出典: 橋本ナオキさん提供

そして、選考に不利となるような情報を扱う場合、個別の意思確認といったプロセスが必要との声も上がっています。

 中央大の宮下紘准教授は「リクナビのようにユーザーに不利益になる事項については、プライバシーポリシーでの包括的な説明では不十分。一問一答形式で同意を取るなど、わかりやすい表現が必要だ。個人情報保護法も同意について定義がなく、あまりに軽く見ている」と指摘する。
(時時刻刻)大学、リクナビ離れ 「信頼崩れた」就職説明会呼ばず 辞退率販売、行政指導へ(2019年9月4日 朝日新聞朝刊)

リクナビを巡る問題は、個人情報の取り扱いだけでなく、ナビサイトの存在感が大きい就職活動のあり方にも一石を投じる結果となりました。

<はしもと・なおき>
イラストレーター/漫画家
1992年、大阪生まれ。関西学院大学総合政策学部卒業。
システムエンジニアとして勤務したのちにイラストレーターとして独立。
現在は漫画やイラスト制作、SNS運営、グッズ販売などを中心に活動している。
2018年から漫画「毎日でぶどり」をTwitter,Instagramへ毎日投稿し、約2年でフォロワー数30万人を突破。
著書に「会社員でぶどり」「会社員でぶどり2」(産業編集センター出版部)がある。

■YouTubeチャンネル→「毎日でぶどり」

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