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水曜どうでしょう藤村忠寿D「迷走しても勝算はある」新作の正体

「だから、みんなも安心して食えたんじゃないかな」

大泉洋さん(左)と鈴井貴之さん=「水曜どうでしょう」最新作より (c)HTB
大泉洋さん(左)と鈴井貴之さん=「水曜どうでしょう」最新作より (c)HTB

目次

2002年にレギュラー放送を終了した後も、数年ごとに新作を発表し、多くの人に愛され続けている番組「水曜どうでしょう」(北海道テレビ)。前回の「初めてのアフリカ」(2013年)から6年、ファン待望の新作の放送が12月25日深夜から始まりました。第一夜と第二夜の占拠率が50%前後という驚異的な数字をたたき出すほど、熱い視線が集まっています。しかし、番組チーフディレクターの藤村忠寿さんは「迷走している」と言い、出演する大泉洋さんも「手応えがない」。そんなぶっちゃけが言える勝算と、6年の間に起こった変化を、藤村ディレクターに聞きました。

テレビがYouTubeに負けるワケ

――2019年には「水曜どうでしょう祭」や「チャンネルはそのまま!」放送や、クリスマスには「水曜どうでしょう」の新作の放送開始もありました。どんな1年だったでしょうか。

自分たちの中で一番大きかったのはYouTubeを始めたことですね。「YouTuberになる」って言って、2月から始めて、チャンネル登録者数28万人になって……。イベントとか本とかはやっているけどね、テレビとは違う動画の出しどころっていうのは、自分たちでも初めてだったから。

それまではYouTubeも見てなかったからね。ヒカキンとかはじめしゃちょーとかが何やってるか全然知らなくって。驚愕だったんだよ、何億円も儲けているなんて。ちょっと待てふざけんなよ、噓だろ、それはやべえよ、ちょっとやってみたい、と。

始めてみて、YouTubeで儲けようっていうもくろみはちっとも形にはなってないけれども(笑)、なんとなく仕組みはわかってきた。
「水曜どうでしょう」チーフディレクターの藤村忠寿さん=瀬戸口翼撮影
「水曜どうでしょう」チーフディレクターの藤村忠寿さん=瀬戸口翼撮影
――YouTubeを始めて、これはテレビと違うなと思うのはどういったところでしたか?

YouTubeは「個人」なんだよね、個人の発信なんだよね。

テレビは個人じゃないんです。コメンテーターとかも最近は、個人としての意見とか過激な表現はできないから、世間を代表した意見を言っていることが多い。昔だったら「この人はどういう発言するんだろ」とか思っていたのにね。

YouTuberは個人で発信しているから、どうしたってその人の個人が出る。そこが大きな違いだし、テレビにとっても一番大事で、失った部分っていうのを今のYouTuberが担っているんですよね。

個人の発信力とテレビの発信力が戦った場合、個人の発信力が勝つんだって、当たり前のことなんだけど、改めてはっきりわかった。

テレビだって新聞だって、もうちょっと個人的な感覚っていうものを発信しないと、誰も聞いてくれないのにね。そりゃ負けるよねっていうのはわかった。

「どうでしょう祭」は生存確認

――これまでも全国を行脚する「どうでしょうキャラバン」やイベントなど、お客さんと直接コミュニケーションをとる機会はあったかと思いますが、「どうでしょう祭」を再びやってみていかがだったでしょうか。

う~ん、できればやりたくなかったけど。僕なんかはキャラバンで十分だなと思っているし。

でも、鈴井(貴之)さんと大泉(洋)さんにしたらね、僕と嬉野(雅道)さんはみんなの前で出る機会が非常に多いんだけど、「『どうでしょう』は4人だから自分たちだってやるんだよ」って鈴井さんが強く言っていて

「確かにそうなんだよな」って思って、「鈴井さんがそこまで言うんだったらやりましょう」と。

でもね、実際にやってみて、鈴井さん大泉さんが出てくると、ファンの人たちはやっぱり盛り上がる。あそこで「水曜どうでしょう」の生存確認ができるんだなと。
(左から)藤村忠寿ディレクター、鈴井貴之さん、大泉洋さん、嬉野雅道ディレクター (c)HTB
(左から)藤村忠寿ディレクター、鈴井貴之さん、大泉洋さん、嬉野雅道ディレクター (c)HTB
――生存確認?

そうそう、「水曜どうでしょう」っていうものはまだ生きてるんだなって。

僕と嬉野さんがイベントとかでやってるのは常にそういうことなんですけどね。「『水曜どうでしょう』はまだ動いてるんだよ」っていう。僕らが休止している訳ではないし、常に血を巡らせてるという感覚があって、大きく血を巡らせているっていうのは「どうでしょう祭」であって。

不思議なことに、狙ってた訳じゃないんですけど、新作の公開とまた時期が重なって、何かがあるんだろうな。

そろそろロケするって言ったのが、3~4年前。編集してると、「祭もやんなきゃな」くらいの時期がちょうど来る。不思議と全部「祭」と新作の時期が重なった。あててる訳じゃないんだよ、たまたまそうなっちゃった。
――たまたまだったんですね!

本当はね、先に新作の放送始めるはずだったから(笑) だって2017年から撮ってるから。

でも、こっちも面白いことたくさん増えちゃってさ。さっきも熱心にYouTubeのこと話してましたけど、編集やらずにYouTuberやってたから。前回のアフリカ編が終わって6年経ちますけど、お芝居も始めちゃったし、嬉野さんもコーヒー売り始めたりとかしてる訳でしょ。そりゃ……そうなりますわな(笑)

新作だって言ってんのに、もはや3年前だからね撮ったのは(笑) 寝かせすぎて腐ってるかもしんないからね。でもうちの場合腐らせた方が良い味出したりするから、わかんないけどね。若干臭みも出てるんじゃないかな(笑)
瀬戸口翼撮影
瀬戸口翼撮影

「今までの中で一番面白くない」と言えるのは

――「水曜どうでしょう」新作の放送が12月25日深夜から始まりました。10月の「どうでしょう祭」では第一夜、第二夜をお客さんと見ましたが、いかがだったでしょうか。

前のときもそうだったけど、ドキドキとかはなくて、楽しみ。こっちはお客さんの反応をずっと見ている訳ですよ、画面見ずにね。

「ここは笑うだろ」って思ったところでお客さんが笑って、「そうだろぉ~?」って感じかな。

もう笑うのはわかっているから、今回の新作に関しては、全員が「え~」っていうような、違う感情になってほしいと思ってたんだよね。

批判の「え〜」じゃなくって、「なんかちょっと違うぞ」「納得できねえな、おもしろいんだけど」ぐらいの反応が一番いいなと思っていて。

そしたら第一夜を見終わったときに、お客さんが「え〜」って言ったから、「ありがとう」「だよねえ」って(笑)
「水曜どうでしょう祭」の様子 (c)HTB
「水曜どうでしょう祭」の様子 (c)HTB
――コラムをまとめた「笑ってる場合かヒゲ 水曜どうでしょう的思考」(朝日新聞出版)の中でも、新作について「面白くしようと思わない」と書いたり、「どうでしょう祭」でも「迷走している」と明言したり……大泉洋さんも自信がなさそうでした。期待しているファンを目の前に、ぶっちゃけたことも言えてしまう。どうしてなのでしょうか?

普通言わないでしょ? 出てるタレントが「手応えがない」って絶対言っちゃいけないことです。タレントだったら「絶対面白いと思うんですよね」とか「なんかすごく楽しかったです」とか、手応えないとしても「楽しみにしてください」とか言葉選ぶ訳でしょ。

うちの場合、選ばないんです本当に。「今までの中で一番面白くない」とか平気で言う訳じゃない?(笑)

こんな平気で言う奴いないし、僕自身も「楽しませよう」なんて思っていない。でも、これによって視聴者は逃げるかっていうと、逃げないんですよ、うちのファンの場合は。「またまた~」って言いながらね(笑)

もしかしたら、本当につまらないものを見せられるということに、彼らは期待してるのかもしれない。「つまんない『どうでしょう』もちょっと気になるな」って。

そういう勝算があるから、言えるんですよね。

本当につまらないんじゃなくて、今までの笑いとは違うっていうこと。今までのように大泉さんはびっくりしないし、ウィーリーする訳でもないし、大きなことはないけど。そういう意味で、彼にとっては手応えがないって言ってるんだろうけど、それはそうだよなあっていう感じ。

藤村忠寿さんが朝日新聞北海道版で続けてきた、5年半のコラム「笑ってる場合かヒゲ 水曜どうでしょう的思考」(朝日新聞出版)は全2冊。第1巻は発売中、第2巻は2月7日に発売予定。
――なるほど……

みんな期待しているから、「次どこ行くんですか」ってよく聞かれるんですよね。でも我々にしても、これからまだ「どうでしょう」をずっと続けていくんです。

例えば大泉君に「じゃあ君、今さら南極連れて行かれて驚くかい?」って言うと、「いや、まあ確かにねえ…」って。「だろ? エベレスト登るかい?」「じゃあどこ行くんだよ、ないだろ?」「な? じゃあどうするんだよ」ってどんどん掘り下げていくと、これは「迷走」以外にありえない(笑)

「じゃあいいんだな、Bプランだけど、これでいいんだな」って。ここまでいくと、もう逆に勝ちですよ。

ディレクターがさじ投げちゃって、タレントも何も言えなくて、全員がしゅんとして企画を始めるっていう(笑)

でも「いいんだって俺たちなんかさ」って言えば言うほど、視聴者が「いやそんなことないよ!面白いよ!」って言ってくれる(笑) 本当に、不思議な関係です(笑)
2019年10月に行われた「水曜どうでしょう祭」には、約1万人が詰めかけた (c)HTB
2019年10月に行われた「水曜どうでしょう祭」には、約1万人が詰めかけた (c)HTB

「視聴者は対話相手」

――そんな風に、視聴者がツッコミや反応を入れる隙をつくることを意識されているのでしょうか。

そうだね、それが個人の感覚だからね。僕は編集するときはね、「大泉がしゃべってて面白い」っていう彼の感覚を出している。これは個人の感覚だから、見てる視聴者は対話相手であるし。

「祭」の会場見てもわかるように、彼らは本物が目の前にいるのに、そっち見ずに新作の画面ばっか見てるじゃないですか(笑)

そんなお客さんだからこそ、個人的な感覚でスーパー(字幕など)出すにしても何にしてもできるし、ものを作る上でも良質な客がいてくれるから、こっちは思い切ったものができる。

もちろん冒険することもできるだろうし。だけど、味は変えない。迷走はしてるけど(笑)

だから、みんなも安心して食えたんじゃないかなって思います。

最初は啞然としたかもしれないけどね。「もうちょっと豪華なご飯出してくれると思ったら、何これ?」「たくあん二切れ?」「まあ、うまいんだけどさあ」みたいな(笑)
瀬戸口翼撮影
瀬戸口翼撮影
――6年ぶりの新作撮影で、4人の中で変わっていたこと、もしくは変わらなかったことなどありますか。

大泉さんがねえ、前のめりですからねえ。飢えてたからね、もうがんがん来ていたから。それは変わったなっていう。

今までは、「どうでしょうロケがあるのが苦痛だ」とか言ってた癖にさ、今度は自分でロケのスケジュール切ってきたからね。「いいよ」って言ってるのに、「やるんだ!」みたいな感じですぐスケジュール持ってきて。

俺らも、別にやりたくない訳じゃもちろんないし。でも彼の前のめり具合からすると、鈴井さんも俺も嬉野さんも、どう見たってやる気がないよこの人たちっていうね。

大泉洋さんも「随分とがっかりした」って言い方したけどね、「いや君が前に出過ぎだよ」っていう(笑) それは大きく変わりましたよ、やっぱり今までの構図とはね。
「水曜どうでしょう祭」の様子 (c)HTB
「水曜どうでしょう祭」の様子 (c)HTB
――それは、大泉さん側に変化があったのでしょうか?

普通に年齢でしょうね。我々が50代を超える中で、ギリギリ彼は40代でふんばっているけど、彼も50代超えればあっという間に俺たちの境地がわかると思うんだよね。

今は彼、東京で最前線で仕事しててね、彼自身もなかなかあれだけ自由に振る舞える場所っていうのが多分ないと思うから。いろんな贅沢しても、いろんな視線にしばられた中で仕事しているんだと思うんだよね。

それでようやく荒々しく仕事ができるって思ったら、昔はあんなに暴れていた人たちが「まあいいんじゃないか」とか言ってるもんだから。それはやっぱり彼としては「もうちょっとやろうよ」っていう感じはあるんだろうな(笑)
「水曜どうでしょう祭」の様子 (c)HTB
「水曜どうでしょう祭」の様子 (c)HTB

新作の全貌は……

――現在、それぞれの場所で活躍されている4人ですが、「水曜どうでしょう」にどんなフィードバックがされていると感じていますか。

……なんだろうね。各自でいろいろやってるけど、まあまあ……ないねえ……。

4人の関係性っていうのは変わっていないから、大泉さんがちょっと前のめりになったのは変わったけど、それ以外はあんまり変わっていない。

だけど、それがお客さんが一番期待するところで、一番大事なところではあるから。いきなり藤村さんが大泉さんに対して下手に出過ぎるのもよくないし、嬉野さんがいきなり乱暴になることもないだろうし。

変わらないから、みんな安心できる。お題が毎回変わろうと、関係性は変わらないし、やっていることもあんまり大して変わらないから。だから何やってもいいんじゃないっていう境地にこっちはなっちゃってるからね。
瀬戸口翼撮影
瀬戸口翼撮影
――ありがとうございます。ちなみに「祭」のときはまだ新作の編集が終わっていないとおっしゃっていましたが、いかがでしょう?

まだ終わらないんだよね。6週目まではつくったけど、終わらないんだよね。早くしないといけないんだけど。

――全貌として何週分あるかは……

わかんないんだよ(笑) まあ先に、粗く編集はしてるんで、10週ちょっとくらいはいくんじゃないかっていう……

――放送しながら決まっていくんですね

もう始まっちゃうからね(笑) ※インタビューは放送開始の2日前

焦ってやんねえと年末年始休みねえよって言ってる(笑)
 
     ◇

「水曜どうでしょう」最新作の第三夜は1月8日(水)午後11時25分から、第四夜以降は毎週水曜の午後11時15分から放送。各話の放送直後から「HTB北海道onデマンド」でも配信される予定です。

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