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「筋肉体操」に隠れていたノーベル賞の理論、出演者も気づかず!
筋肉体操指導者の谷本さんが「ナッジ・アンバサダー」に就任。

霞が関の環境省で、筋肉体操指導者としておなじみの谷本道哉さん(近畿大学准教授)らが託されたのは「自発的な社会課題への取り組み」。カギとなったのは名セリフ「あと5秒しかできません」でした。(朝日新聞デジタル編集部・朽木誠一郎)
「ポケゴー」がナッジ? 環境省が取り組む理由

例えば、2016年頃から流行している『Pokemon GO』は、ゲームのプレイ要素の中に「歩行」「移動」を盛り込んでいます。運動不足の人でも自発的に運動をするようになる、このような取り組みがナッジと呼ばれています。
「運動不足の解消」のような社会課題、具体的には「どうすれば有給休暇の取得率が上がるか」「健康診断の受診率が上がるか」といったことについて、今、政府の関係省庁や自治体などがナッジの導入を試みているのです。
そこで、多くの社会課題を担当分野として抱える環境省が中心になり、有識者を交えて関連組織の間を取り持つことに。それが『日本版ナッジ・ユニット連絡会議』です。
第14回を迎えた12月26日は、会議の途中で谷本さんと筋肉体操制作チームの表彰がおこなわれ、谷本さんはナッジアンバサダーにも任命されたのです。
「あと5秒しかできません」筋肉体操のかけ声の効果

「筋肉体操の『あと5秒しかできません』『やりきる! 出し切る! 全部出す!』といった声がけにナッジの要素があると、環境省の担当者さんからご連絡がありまして。そのときに、『先生はナッジをご存知なんですよね』と言われましたが、僕の返事は『ナッジってなんですか?』でした(笑)」
ナッジはあくまで情報の受け手の自発性が重要。「あと5秒(筋トレを)しなさい」ではなく「あと5秒しかできません」と伝える、谷本さんの表現がナッジ的と評価されたようです。
しかし、この表現は谷本さんが筋トレをこよなく愛するがゆえに生まれたもの。結果的にナッジになっていたとも言えます。同時に、筋肉体操が大人気になったのは、そのかけ声や番組の作りがナッジ的で、多くの人が「自分もやってみよう」という自発性を促されたからでもあるでしょう。
谷本さんも「筋トレで一生懸命がんばるときに出てくる気持ちが自然に『ナッジ』になっているのでは」とコメントしていました。
筋肉体操は新春特番で「より前向き」に進化

表彰・任命式後、谷本さんと筋肉体操制作チームに話を聞きました。というのも、一つ気になることがあったからです。「あと5秒しかできません」「やりきる! 出し切る! 全部出す!」といったかけ声、たしかに後押しはされますが、「そっと」ではありませんよね……? そう質問すると、笑って「ちょっと強めですかね」と答える谷本さん。「いや、強すぎです(笑)」と制作チーム。
「前向きに後押しするということは、いつも意識しています。筋肉体操は新春特番を予定していますが、そこでは『あと5秒しかできません』よりさらに前向きにナッジする新しいかけ声もありますので、期待していてください」
ノーベル賞に思いを馳せ、これも「ナッジ的」であると意識しながらテレビの前で筋トレをすれば、筋肉体操の観方が少し変わるかもしれません。
『みんなで筋肉体操』の「新春スペシャル・豪華筋肉祭り」は2020年1月2・3日に二夜連続放送(23時20分~23時25分)。2日は谷本さん同様におなじみの俳優・武田真治さんに加え、歌手・西川貴教さん、エアードラマー・樽美酒研二さんが登場。3日は地下アイドル・川村虹花さん、声優・ファイルーズあいさん、外資系銀行員でフィットネスビキニ日本チャンピオンの安井友梨さんらが登場。