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「クッピーラムネ」のキャラ「魚」だった過去 伝説の駄菓子の半生

「クッピーラムネ」について聞きました
「クッピーラムネ」について聞きました

目次

ウサギとリスのマスコットキャラクターで知られる駄菓子「クッピーラムネ」のキャラクターは、もともと魚だった!? キャラ変の理由は「読みにくいから」。2019年に創業100周年を迎えました製造元の「カクダイ製菓」が明かした驚きの事実。今や中日ドラゴンズの「ドアラ」などコラボ企画にひっぱりだこですが、そこにも中小企業ならではの「切実な事情」がありました。令和元年の年の瀬、昭和の駄菓子「クッピーラムネ」の謎に迫りました。

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名前の由来は勘違い! 「クッピーラムネ」誕生秘話

京都出身の記者(24)は、幼い頃からあのさわやかな味の大ファンでした。名古屋に赴任し、取材した地元の方から「名古屋駅のそばに本社と工場がある」と教えてもらいビックリ。さっそく取材に向かいました。

カクダイ製菓は、名古屋市西区、名古屋駅から北に2キロほどのところに本社事務所と製造工場を構えています。実は名古屋市西区は、フーセンガムの「丸川製菓」や、のどあめの「春日井製菓」など、製菓会社が集まっている地域です。

相談役の阿部昭夫さんによると、カクダイ製菓は第1次世界大戦が終結した1919年に「増進堂」という和菓子屋として創業しました。戦後は「大橋商店」と名前を変え、あめやようかんなどを製造していたそうです。このころ就任した2代目社長の大橋義春さんが、元々別会社でラムネ菓子の製造に携わっていたことから、大橋商店でもラムネの製造に乗り出しました。

クッピーラムネのキャラクターが入ったクッションを持つカクダイ製菓の阿部昭夫相談役
クッピーラムネのキャラクターが入ったクッションを持つカクダイ製菓の阿部昭夫相談役 出典: 朝日新聞


当初は、今でもスタンダードな「5粒ひとひねり」のラムネを、100個100円で販売。「固形ラムネ」「ビンズラムネ」として、くじのオマケなどの用途向けにまとめ売りしていたといいます。

「5粒ひとひねり」のラムネ
「5粒ひとひねり」のラムネ

製品のラムネを箱詰めする際、100個数えた責任者が名前を書くカードを一緒に入れていました。そのカードには、縦じま模様が特徴的な熱帯魚「エンゼルフィッシュ」のイラストが。それを見た取引先が商品を「グッピーのラムネ」と呼ぶようになったそうです。エンゼルフィッシュを「グッピー」だと皆が勘違いしていたのだとか。

優雅に泳ぐプラチナホワイトエンゼルフィッシュ=2011年、山口県下関市の海響館
優雅に泳ぐプラチナホワイトエンゼルフィッシュ=2011年、山口県下関市の海響館 出典: 朝日新聞

その後、1960年に会社名を「カクダイ製菓」に改め、事業を本格的にラムネに一本化。新商品の名前として、「グッピーラムネ」が挙がりましたが、濁点がついていて呼びにくい、との声が出て「グ」が「ク」に。ウサギとリスのキャラクターもこのころ提案され、1963年、現在の「クッピーラムネ」が誕生しました。

あのネズミキャラが前身?「ウサギとリス」の変遷

クッピーラムネのキャラクター「ウサギとリス」=カクダイ製菓提供
クッピーラムネのキャラクター「ウサギとリス」=カクダイ製菓提供

今ではクッピーラムネのキャラクターとして定番の「ウサギとリス」ですが、その誕生にも紆余(うよ)曲折があったそうです。

「キャラクターがいたほうが、お客様から親しまれやすい」

そう考えた2代目社長の義春さんが、ラムネ菓子のマスコットを作ることを提案。当初は、人気のあった「某ネズミキャラ」を参考に制作し、クレームがついたこともありました。

その後、当時の子供向け雑誌で漫画家「太田じろう」さんの連載「こりすのぽっこ」を発見。登場する動物のタッチが魅力的だったため、本人に制作をお願いしたところ、水彩で描かれたウサギとリスの絵が送られてきたそうです。

ところが、このキャラクターでゴーサインをだしたところ、「似すぎている」として出版社からまたもやクレームが。結局、太田じろうさん本人が出版社にかけあい、使用許可が出ました。

大活躍のウサギとリス。名前は?男の子?女の子?

誕生したウサギとリスはいまやクッピーラムネの代名詞。中日ドラゴンズの「ドアラ」とのコラボ商品やキャラクターグッズなど、数多くのアイテムが登場、販売されています。

コラボ企画のほとんどは相手方からの打診で決まるそうで、まさに引く手あまたの状態。総務課の藤井幸博さんは「うちの会社で一番営業を頑張っているのはこのウサギとリスとトリだ、とよく社内で話題になるんです」と笑います。

そうでした。確かに丸太に座ってラムネを食べるウサギとリスの上には「トリ」が飛んでいます。「トリ」も社内では大切なトレードマークの一部として認識されているようです。
そうでした。確かに丸太に座ってラムネを食べるウサギとリスの上には「トリ」が飛んでいます。「トリ」も社内では大切なトレードマークの一部として認識されているようです。

2匹と1羽のプロフィルですが、子供たちにキャラクターに親しんでもらおうと、カクダイ製菓が2018年に制作した絵本の中にヒントがありました。

仲のいい友達の「ウサギとリス」がピクニックをする物語。作中でウサギは「クッピーちゃん」、リスは「ラムちゃん」と呼ばれます(トリは「ことりさん」でした)。クッピーちゃんは「ぼく」、ラムちゃんは「わたし」と名乗ることから、どうやらクッピーちゃんが男の子、ラムちゃんは女の子のようです。

藤井さん「実はこれ、『絵本を制作するのに名前がなくては困る』と思ってつけた、仮の名前なんです」。

公式なプロフィルは?と聞いてみたところ、

藤井さん「特に決まっていません(笑)。『仮』の状態がもうずっと続いてしまって……」。

絵本は2018年度、関東の小児科に1500部寄付されたそうです。
絵本は2018年度、関東の小児科に1500部寄付されたそうです。

優秀な営業マンにもかかわらず、50年以上にわたってその実態が不明なウサギとリスとトリ。今後の可能性は無限大です。

様々な企業やキャラクターとコラボしているクッピーラムネですが、キャラクターの使用料などのロイヤルティーはあまりもらっていないのだとか。

阿部さん「今の清涼菓子業界は、大手メーカーが席取り合戦を繰り広げています。うちのような小規模会社は、いかに幅広い世代に手にとってもらえるかが勝負。大手のようにテレビCMをたくさん放映できるわけでもないので、コラボ商品はCMのつもりでやらせてもらっています」

「クッピーちゃん」「ラムちゃん」(仮)の後ろ姿=カクダイ製菓提供
「クッピーちゃん」「ラムちゃん」(仮)の後ろ姿=カクダイ製菓提供

 クッピーラムネの強みは「何十年も変わらないこと」と話す藤井さん。

「子供のころ、小銭をにぎりしめてクッピーラムネを買いに行った。そんな記憶が世代を越えて受け継がれることで、これまで続いてこられたのだと思います」
 

クッピーラムネピュア
クッピーラムネピュア

世代を超えて愛されてきた「クッピーラムネ」ですが、現在では新商品が続々と出ています。「1才ごろからのクッピーラムネ」は、着色料や香料を使用せず、小さな子供にも安心して食べてもらえるよう開発された商品。

2018年には、着色料や香料に加え、さらに酸味料も不使用にした「無添加クッピーラムネピュア」も発売しました。

「これからの世代の子供たちにも愛される商品であってほしい」

そんな思いを胸に、クッピーラムネは進化を続けています。

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