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小3の私が作文帳に書いた「虐待SOS」学校は見抜いてくれなかった
子どものときに母親と義父たちから虐待を受けてきたことを実名で公表している羽馬千恵さん(36)は最近、小学3年生のときにつけていた作文帳を見つけました。この作文帳を読み返し、羽馬さんは「SOSを私なりに表現しているけど、担任には全く伝わっていない」と感じたそうです。「子どもの言葉でSOSを伝えるのはすごく難しい」。羽馬さんの経験から、子どものSOSに気づくために必要なことを考えます。(朝日新聞北海道報道センター記者・天野彩)
このノートに記された作文には、「お父さんが帰ってきたので、(ボール遊びを)やめました」「(犬の)さんぽにいく時間は(夜の)7時はんです」といった虐待の兆候がところどころにみられます。
しかし、担任の教諭は「いつも家族がなかよしでいいです」とコメントするなど、羽馬さんのSOSが届いていないことが読みとれます。
羽馬さんはこの作文帳を読むことで「自分が覚えていない自分に出会えた。子どもは親の悪口を言ってはいけないと思い込んでいた」と感じたといいます。
千葉県野田市で2019年1月に虐待死したとされる小学4年、栗原心愛(みあ)さん(当時10)は、通っていた小学校で実施された「いじめにかんするアンケート」の自由記述欄に「お父さんにぼう力を受けています。夜中に起こされたり、起きているときにけられたり たたかれたりされています。先生、どうにかできませんか」と書きました。そのアンケートのコピーを、市教育委員会が父親の要求に屈して渡したことが、問題視されました。
「心愛ちゃんは死ぬほどの勇気を出して大人に、こんなにはっきりしたSOSを出したであろうに、それでも裏切られた。アンケートまで出てきたのに、こんな対応をするなんてありえない」と羽馬さんは憤ります。
羽馬さんも心愛さんと同じく、作文帳でSOSを発信していました。
縄跳びをする羽馬さんに、「お母さんがへんなことをいうので飛べませんでした」とあります。羽馬さんは「母はいらだつと時々そういういじわるをしました。いらだちや悔しさがあったのを覚えていますが、『へんなこと』としか表現できなかったのです」といいます。
作文には、いつも夕飯の後、一人で犬の散歩をしていたことが書かれています。毎晩、怯えながら、真っ暗な夜道を懐中電灯で照らして歩いたそうです。
義父は「しつけだ。飼うと言った責任だ」と言っていたそうです。
「これが子どものSOSの限界。担任はかなりしっかり読んでくれていますが、それでも私の感情の波が読みとれていません。子どものSOSを家庭から救い出すのは難しいことです。ここで家庭への支援が入っていれば、悪化はしなかったと思います。少人数制の学級で、子どもの書くものに隠された意味を聞いてあげるようなケアが必要です」
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