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一蘭に並ぶ中国人、なぜ「豚骨ラーメン」が人気? きっかけはあの店

中国人にも人気の豚骨ラーメン店「一蘭」=中島恵さん提供
中国人にも人気の豚骨ラーメン店「一蘭」=中島恵さん提供

目次

国民食のラーメンは、インバウンド客にも愛されています。特に、『一蘭』や『一風堂』などに代表される豚骨ラーメンは中国人観光客に大人気です。どうしてここまで、豚骨ラーメンが支持を集めるのか――。日中の異文化ギャップをまとめたジャーナリスト、中島恵さんの新刊『中国人は見ている。』(日本経済新聞出版社)に収録されたエピソードを再構成して紹介します。

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中国版「食べログ」上位に豚骨ラーメン

出身地にかかわらず、日本に住んでいたり、日本に観光に来たりする中国人に好きな日本のラーメンを聞くと、多くの人が「豚骨ラーメン」と答える。

これは中国版「食べログ」のような飲食店評価サイト「大衆点評」でも裏づけられている。

同サイトには、中国人が来日時に評価したラーメン店が6000店以上表示されるが、上位はいずれも豚骨ラーメン店ばかりだ(日本料理というジャンルの中のさらに細かい分類で、寿司、天ぷらなどと並び、ラーメンも独立したジャンルになっている)。

なぜなのか、論理的に分析するのは難しいが、同サイトのクチコミや中国人の意見を自分なりに総合すると、理由は主に次の三つがある。

・濃厚な味が中華料理に通じるので、親しみを感じる。
・中国で最初に食べた日式拉麺も豚骨で馴染みがある。
・日本のラーメンといえば豚骨が定番。

日本には醤油、味噌、塩、豚骨などがあり、東京では醤油ラーメンが最もポピュラーだが、「大衆点評」では豚骨以外はかなり下位だった。

他のジャンルの飲食店と並び、「大衆点評」に掲載されている一蘭と一風堂
他のジャンルの飲食店と並び、「大衆点評」に掲載されている一蘭と一風堂

きっかけは味千ラーメン?

上海出身で、東京で働く20代の女性は、来日した両親を魚介系のこってりスープで太麺が特徴のつけ麺店に案内したが、「味が濃すぎてスープが飲めない」と不評だったという。「スープ割り」をせず、つけ麺のスープを飲み干す日本人はほとんどいないが、両親は飲むものだと思ったようだ。

ところが、そのあと豚骨ラーメン店に連れていくと「ここは中国でも有名な店だね」と喜んでスープも飲んでいたそうだ。

このように、彼らが好んで豚骨味を食べるのは、中国で最初に食べられるようになった日本のラーメンが豚骨(熊本県に本社がある味千ラーメン)で、そのスープが彼らの口に合ったからではないか、ということだ。

味千ラーメンは1990年代後半に香港に進出。香港を足掛かりに中国各地に店舗を拡大し、2018年末には650店舗に到達した。私自身も北京や上海の味千ラーメンで食事をしたが、サイドメニューが充実し、ラーメンもメニューにあるファミリーレストランという感じだった。

中国人は孤食を好まず、食事は誰かと一緒にするもの、という認識があったことから、おそらくこのような豊富なメニューを取り揃えて「現地化」し、それが中国人に受け入れられたのではないだろうか。

そのためか、「日本では醤油ラーメンのほうがポピュラーで、最も多くの人が食べている」と聞くと、意外そうな顔をする。

味千ラーメン=熊本市、2011年10月
味千ラーメン=熊本市、2011年10月 出典: 朝日新聞

中国で専門店が徐々に増加

一方、日本のテレビドラマ『深夜食堂』が人気の上海では、「がんこ親父のこだわりラーメン」のような、日本のラーメン専門店を彷彿とさせる店が徐々に増えてきているという。

上海の旅行会社で働く30代の男性はいう。

「おそらく日本の影響でしょうね。以前、中国でラーメンといえば安い食堂のメニューの一つといった印象で、朝食や軽食として食べる人が多かったのですが、最近は具材にこだわり、スープも独自に考案する専門店ができてきました」

「中国発のラーメンが日本で進化し、再び別の形で中国に舞い戻ってきた、という感じでしょう。最近ではラーメン1杯60~70元(約960~1120円)もする店もあり、中国人がそれまでイメージしていた麺料理とはずいぶん趣を異にしてきています」

この男性によると、上海蟹をトッピングした399元(約6400円)の豪華ラーメンも登場して話題になったそうだ。

ラーメンといえば、日本では「中国はラーメンの本場だから、さぞおいしいんでしょうね?」という人がいるが、日本人が中国の麺料理を食べたら、「これは全然違うものだ」ときっとびっくりすることだろう。日本のラーメンは、「日本の匠の技」として芸術品レベルにまで到達した逸品として、中国で今注目されている。

     ◇

中島恵 1967年、山梨県生まれ。北京大学、香港中文大学に留学。新聞記者を経てフリージャーナリスト。中国、香港、アジア各国のビジネス事情、社会事情などを執筆している。

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