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「水曜どうでしょう」に癒やされる 「普通の人」を励ます力

『5人目の旅人たち「水曜どうでしょう」と藩士コミュニティの研究』(慶應義塾大学出版会)を出版した東京都市大学の広田すみれ教授
『5人目の旅人たち「水曜どうでしょう」と藩士コミュニティの研究』(慶應義塾大学出版会)を出版した東京都市大学の広田すみれ教授 出典: 朝日新聞

目次

「水曜どうでしょう」(水どう)は1996年に始まり、今も絶大な人気を誇る北海道テレビ(HTB)のローカル番組です。今年10月にはのべ3万人を集めたイベント「水曜どうでしょう祭」で新作が発表されました。東京都市大学の広田すみれ教授は、「水どう」について、ホームページの番組掲示板を通じたファンとの交流、番組のカメラワークなどから探り、このほど『5人目の旅人たち「水曜どうでしょう」と藩士コミュニティの研究』(慶應義塾大学出版会)にまとめました。広田教授の考察をもとに、「水どう」の魅力について考えます。

番組掲示板が果たした「共感の共有」

著者自身もファンであることの告白からはじまる『5人目の旅人たち「水曜どうでしょう」と藩士コミュニティの研究』。

「水どう」の特徴として広田教授があげるのが、番組とファンの結びつきです。その際、重要な役割を果たしたのが番組掲示板です。

「水どう」は2000年に番組掲示板を開設し、ファンのお悩み相談に応じるなど、積極的なコミュニケーションをはかってきました。

広田教授は、番組掲示板の活動が、テレビが生み出す「共感の共有」の衝動を肩代わりして受けとめたとみています。

テレビは同時性、つまり人々が一緒に同じ時間や場合によって同じ場所でテレビを視聴し、結果としてその後学校や職場で番組について語り合い、番組に対する共感を共有したことが非常に重要であったと考えています。そしてその共感の喪失が、影響力が依然あるのにテレビに対する世間の評価を著しく下げた一因だとも。しかしこの番組の場合、番組掲示板を通して積極的にコミュニケーションすることで、視聴者同士の共感の共有をかなり維持できたのでは、と考えています。
『5人目の旅人たち「水曜どうでしょう」と藩士コミュニティの研究』から

世代によっては、家で見た番組の内容について、次の日、友だちや同僚と盛り上がるのが日常だったという人がいるかと思います。

しかし、近年、テレビ業界全体で見ると、録画視聴が広まる中で「共感の共有」が失われつつあります。

そんな中、「水どう」は、番組掲示板が「共感の共有」を担ったのです。


広田すみれ『5人目の旅人たち「水曜どうでしょう」と藩士コミュニティの研究』(慶應義塾大学出版会)

DVDを何度も見てしまう理由

広田教授は、「水どう」の持つ「身体性」も重要だと指摘します。

広田教授によると、「水どう」の映像は普段、私たちが見えている風景に近いものが映しだされるようになっていて、その撮影技法が、自然さを生み「認知負荷を下げているのではないか」と言います。

ズームを多用したり、発言する出演者の顔にいちいちカメラを振らず、時には固定した撮り方が、我々が日常生活で目にする見え方に比較的近い自然さがあるのではないだろうか。
『5人目の旅人たち「水曜どうでしょう」と藩士コミュニティの研究』から

大泉洋さんと鈴井貴之さんが原付きで旅をする時、二人を後ろから撮影しています。タレントである二人の顔は映さず、車のフロントガラスから撮ったものがそのまま番組に流れます。

広田教授は、この時、視聴者の中に「ベクション(視覚誘導性自己運動感覚)という感覚が生まれているのだろう」と解説します。

ベクションというのは、実際は動いていないのに自分の体が移動しているように感じること。よくあるのは、停車中の列車に乗っている時、隣の車両が動き出すと自分が乗っている列車が逆向きに動き出すように感じる場面です。

このベクションによって、視聴者は番組の中に入ったかのような没入感を得られるといいます。

ファンの中には番組のDVDを何度も見るという人が少なくありません。広田教授は、知っている内容のものを繰り返し見ることができるというのは、それだけ番組に「身体性」の心地よさがある証拠だと説明します。

等身大の包容力

今年10月にあった「水曜どうでしょう祭」にはのべ3万人を集め、ネット上でも話題になりました。北海道の地方局、しかも深夜番組という出発点から、番組掲示板のようなインターネットなどを通してテレビの外に飛び出した「水どう」。DVDの販売枚数は400万枚を超え、全国レベルのコンテンツになりました。

サイコロの出た目によって旅をするのが「水どう」の基本路線です。番組で、大泉さんと鈴井さんは様々なトラブルに見舞われます。それは、まるで、失敗するために旅に出ているようなおなじみの光景です。

失敗をマイナスととらえず、チャンスに変換してしまう。そんな番組の持つ柔軟さと等身大の包容力が、20年以上経っても、多くのファンをひきつける原動力になっているのかもしれません。

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