ネットの話題
まめっちさんからの取材リクエスト
都内でよく見かけるようになった「シェアサイクル」。一体、どのように運営されているのでしょうか。
シェアサイクル「トラブル」対処法 7千台超の自転車、どう管理?

取材リクエスト内容
最近、都内でドコモのバイクシェアを使い始めました。
赤いレンタル自転車です。
使っていて気づいたのですが、すでにたくさんの人が利用していて、ステーションに行っても自転車が残っていなかったり、自転車があってもバッテリー切れだったりすることがよくあります。パンクしている自転車もありました。
あのレンタルシステムは、一体どのように運営されているのか調べてもらえませんか?
・いつバッテリーを充電するのか。
・いつどのように自転車をチェックしているのか。
・たくさん残っているステーションとまったく残っていないステーションの調整をどうしているのか。
・近くにステーションが欲しい時にどうすれば設置してもらえるのか。
(スーパーや駅には積極的に設置してほしいです。熱望!)
・しばらく運用してきて、利用の多い場所と少ない場所はどんな傾向があるのか。
よろしくお願いします。 まめっち
記者がお答えします!
シェアサイクルは現在、東京などを中心に利用者が増えています。エリア内にあるたくさんのポート(拠点)のうち、出発地のポートで自転車を借り、目的地のポートに着いたらそこで返せる便利なサービス。それでも次に借りるときには、各ポートにちゃんと一定数の自転車が並んでいます。
いったいどうやって管理しているのでしょうか。バッテリーの残量不足を防ぐためのシステムや、パンクなどのトラブルに使える「裏技」とは。シェアサイクルの「中の人」に聞きました。
都内に7700台の自転車・760カ所のポートを配備
実は、記者もこのサービスのヘビーユーザー。投稿者さんの「(ポートに行っても)自転車がない」「バッテリーの残量がない」「パンクしている自転車がある」という3つの悩みは、よく自分も経験することです。そこで今回、中の人に直接、利用者の声をぶつけてみることにしたのでした。
対応してくれたのは、同社経営企画部の経営企画・広報担当課長の江崎裕太さんと、広報担当の山口恵さん。記者が自宅のあるエリアを話に出すと、二人はほぼ同時に「ではポートは〇〇か〇〇ですね」と即レス。サービスを熟知しています。特に江崎さんは自転車の保守まで担当しているそうで、「小さい会社ですから」と笑います。
2011年4月に横浜市でスタートしたドコモグループのシェアサイクル事業は、年々、利用者を増やしています。当初、年間4万回だった利用回数(※直営エリア)は現在約810万回に。会員数は64万人(※直営エリア)にのぼります。利用されている自転車数は都内で約7,700台、直営合計で約10,500台。約7割が東京都に集中しています。
スマートフォンアプリや交通系ICカードなどで解錠し、ポートさえあればいつでも、どこからでも乗ることができ、降りられるシステム。同社サービスでは全車両に電動アシストがついており、慣れると普通の自転車に戻れないほどです。ポートは都内に約760カ所と、ビジネス街を歩いていればほぼ必ず行き当たります。
全車両の位置をGPSで把握、需給予想はAIで

そもそも、数の多い自転車やポートをどのように管理しているのでしょうか。一つ目のポイントは、全車両に装備されたGPS。これにより、どこに何台の自転車があるのか、リアルタイムで把握できます。クレジットカード情報などを伴うIDとも紐づけられているため、ポートではない場所への自転車の放置など、ルール違反の利用は発生しにくいそうです。
二つ目のポイントは、利用者の移動データとドコモのAI技術を活用して、利用台数と自転車が必要になるポートを予測するシェアリング交通需要予測技術。これにより、自転車の再配置が効率的におこなわれます。利用状況からあらためてわかったのは、シェアサイクルは朝、住宅街からビジネス街へ移動し、夕方以降、ビジネス街から住宅街へ移動するという傾向。
例えば豊洲エリアは都心に勤める人が多く住んでおり、利用者数も全エリアのトップ。豊洲からは朝、大量の自転車が出ていき、夕方以降、大量に戻ってくるため、過不足のないようにする管理も大変とのこと。この利用の増減が急であるほど、また利用の頻度が高まるほど、需給予測は難しくなるそうです。
というのも、再配置は作業員とトラックによるマンパワーでおこなわれているから。予測に基づいて動こうとしても、最終的には人手や、トラックが移動する道路の混雑状況がボトルネックになります。これを解消するために、再配置は24時間365日の体制を敷いているものの、「多大なご不便をおかけしており、申し訳ないです」と江崎さん。
自転車がポートにないのは、人手不足や渋滞で再配置が間に合わなかったケース。そんなときは、別のポートを探すか、再配置が完了するのを待つしか、現状では手はありません。とはいえ、ビジネス街などでは、夕方以降ほとんどのポートが全滅、ということもまま、体験するのですが……。
バッテリーは取り外し式「省スペース化のため…」

このバッテリー、どうやって充電しているのでしょうか。実は記者も、再配置のトラックは何度か見かけたことがあるものの、充電している場面に遭遇したことはありません。電気自動車のようにポートで充電する、というのは誤解。実は、バッテリーが取り外し式になっており、再配置の自転車と一緒に、フル充電のバッテリーを運んでいるのです。
なるほどその方が効率的と納得しつつ、目の前に自転車があるのにバッテリー不足で乗って帰れないという状況は、利用者にとってはストレスです。必要なときはポートでサクッと充電することはできないものでしょうか。山口さんに聞いてみると……。
「実は、一部地域ではポートで充電できるシステムを導入しています。一方で、地域ごとの利用特性に応じて最適なシステムを選択しており、多くのポートを置く都内については、省スペースで電気工事が不要なシステムを採用しています。そのためポートに充電できる設備を設置していません。バッテリー不足はお客様にご迷惑をおかけすることになるので、今後も対策を検討していきたいと思います」
また、「都内での導入時期は未定ですが、一部エリアではアプリでポートの有無だけでなく、電源の残量を表示できるような実証実験も展開中です」(江崎さん)とのこと。今後に期待です。
利用者との双方向のやりとりでサービスを改善

「パンクに気づくと、アプリの問い合わせメールから報告してくださる利用者の方も多いです。そうすると、私たちも速やかにその自転車をシステム上、利用中止にできるので、ありがたいですね。逆に、パンクしたまま乗ってしまうことは、ホイールを痛める可能性もあるため、避けていただけるととても助かります」(江崎さん)
同サービスではこのような利用者との双方向のやりとりを大事にしており、山口さんは「ポートの新設についても、候補の場所はいつでも募集しています」と紹介します。同社の告知ページの問い合わせ先から連絡を、とのことでした。
ビジネス観点では、自転車は「余っている」よりも「残っていない」方が望ましいと考えることもできます(さすがに「いつ行っても残っていない」では使わなくなってしまいますが)。それでも、できるだけポートや自転車の数を増やし、設備や人材を投資するのにはワケがあります。
「インフラになることが目標なのです」と江崎さん。当面の利益よりも大事にしていることとして、「循環型社会」と呼ばれる、環境にやさしい世の中を実現することを挙げます。
「私たちの目標はこの事業で利益を追求することだけではないんです。目標としているのは、環境に配慮した持続可能な循環型社会の実現、およびそのインフラになること。まだまだ至らない点が多々ありますが、よりよいサービスにしていければと思いますので、今後もぜひ、ご意見をいただけますと幸いです」