「ジャンプして着水した衝撃で死ぬ」……インターネット上でマンボウを「死にやすい生き物」として印象づけてきたこの説……。「死ぬ」というのは全くのウソですが、マンボウが「ジャンプをする」のは事実です。水族館でゆったり泳ぐ姿からは想像しにくいですが、どうしてマンボウはジャンプするのでしょうか? 実は、これには多くの謎があるのです。そして、「死ぬ」という誤った情報の発生源は……。
マンボウのジャンプとは
クジラのブリーチング
出典: PIXTA
マンボウがジャンプするのは自然界だけではなく、運が良ければ水族館でも見ることができるそうです。澤井さん自身も、200時間近く水族館でマンボウを観察して、数回ジャンプを確認したといいます。また、ジャンプするときは何度か続けて飛ぶこともあるそうです。
全身が水面から出るほどの大ジャンプを決める時もあれば、上半身だけ水面から出す「ジャンプ未遂」を行うこともあるというマンボウ。どうしてマンボウはジャンプするのでしょうか。
実は謎だらけのジャンプ
ジャンプする直前のマンボウ=鴨下悠加さん撮影
マンボウがジャンプして水面より上に出た瞬間=鴨下悠加さん撮影
コツコツ研究、市民科学者たちと
澤井悦郎さん
「着水の衝撃で死ぬ」誤った情報の発生源は?
2010年5月19日に追記されたWikipediaのマンボウのページ。現在はこの記述は削除されている。
今後、マンボウのジャンプに関する研究は行われるのでしょうか。澤井さんの見解を聞きました。
「水族館の協力が必要です。例えばジャンプ力の計測は、マンボウ水槽の水面付近にメジャーとビデオカメラを設置できれば、どのくらいの高さまでジャンプしたのか、精度の高いデータを得ることができると思います。ただ、機材を購入する必要もあるので、私の方ではすぐには難しいですね……」
まだまだ謎だらけのマンボウの生態。市民科学者の情熱で支えられているこの研究に、少しでも追い風が吹くことを願っています。
<さわい・えつろう>
1985年奈良県生まれ。マンボウ研究者。ウシマンボウとカクレマンボウの名付け親。著書に「マンボウのひみつ」(岩波ジュニア新書)「マンボウは上を向いてねむるのか」(ポプラ社)がある。広島大学で博士号取得後は「マンボウなんでも博物館」というサークル名で同人活動・研究調査を行っている。澤井さんの研究を支援するサイトはこちら。
マンボウのトークイベントを開催します
「最弱伝説」にされたマンボウと「最強生物」と呼ばれたクマムシ
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■チケット:本屋B&Bのサイトでお申し込みください
前売 1,500円 + ドリンク500円(税別)
当日店頭2,000円 + ドリンク500円(税別)
■出演
澤井悦郎(マンボウ研究者)
鈴木忠(クマムシ研究者)
野口みな子(司会、朝日新聞「withnews」編集部)
「ジャンプした着水の衝撃で死ぬ」「ほぼ直進でしか泳げず死ぬ」……ネット上で「最弱伝説」ができあがり、有名になった「マンボウ」。……でも、これらはウソ!
一方、マイナス273℃の超低温にも、プラス100℃の高温にも、ヒトの致死量の1000倍以上の放射線にも耐えることができるとして、ネットで「最強生物」と呼ばれた「クマムシ」。……でも、最強って本当?
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ゲストは、「最弱伝説」が残るマンボウとは対照的に、「最強生物」と呼ばれているクマムシを研究してきた慶應義塾大学の鈴木忠准教授です。
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