悪役だったエルサが『Let It Go』によってヒロインの一人に変更されたという「秘話」の真相。そして、日本でも大流行した「レリゴー」人気の理由、最新作の楽曲『Into the Unknown』について話を聞きました。
よい楽曲が生まれる「条件」

クリステン:残念ながら、エルサみたいに魔法は使えないの(笑)。私たちのように、映画の楽曲を作る上で重要なのは「キャラクター」と「ストーリー」。特に『アナと雪の女王』のような(ミュージカル)映画では、楽曲がストーリーやキャラクターに与える影響がとても大きいんです。
というのも、よい楽曲というのは、ストーリーの中でキャラクターが決意したり、変化したりしたときに生まれる。だから、私たちも制作の初期から携わります。ジェニファー・リーとクリス・バックという二人の監督と、私たちは何度も議論を重ねたわ。
――エルサは初期段階のプロットでは悪役でしたが、『Let It Go』を聴いた監督陣が「この曲を歌うエルサを悪役にするべきではない」と考え直して、アナとWヒロインに変更になったと聞きました。
ロバート:エルサが当初、悪役の予定だったのは事実だね。でも、少しニュアンスが違うかもしれないな。
クリステン:そうね。一気に、劇的に変わったのではなく、キャラクターとストーリー、楽曲を本当に深く深く掘り下げていく中で、「エルサは悪役ではない」という結論に達した、というイメージね。
「世界的ヒット」の多層的な要因

クリステン:そうね。どんなキャラクターが、どんなストーリーで、どんな楽曲を歌うのか。私たちはそれによって何を伝えたいのか、伝えるべきなのか。そうやってでき上がったキャラクター、ストーリー、楽曲が、結果的に多くの人に受け入れてもらえたのだと思います。
ロバート:その意味では、この映画が「強い意志を持った2人の姉妹を主人公にしている」という点も、映画や楽曲のヒットには強く作用しているんじゃないかな。これまでの映画は男性を主人公にしたものが多かったから。
――ハリウッドでは映画の主演俳優のうち、女性の占める割合が少ないことも指摘されています。
ロバート:女性は例えば、主役の男性の恋人として登場する、というキャラクター・ストーリーが描かれることも多かった。そんな映画ばかりでも、これまでは疑問を持つ人は少なかったのかもしれない。
でも、この映画はそうじゃない。運命に抗い、家族を愛し、行動する女性たちが主人公だ。そんな主人公像が、多くの人をハッとさせたのかもしれない。「Let It Go(ありのままで)」というメッセージと共にね。
通底していた「日本的」な感性も

ロバート:うん、知っていたよ。
クリステン:実は、YouTubeでたくさんの日本のファンがカヴァー(いわゆる「歌ってみた」)してくれているのを観ていたの。本当に光栄だったわ。
――初来日ということですが、日本の印象はいかがですか。
ロバート:仕事の予定ばかりで、まだあまりいろいろ見ることができていないんだ。原宿の竹下通りには行ってみたよ。今晩は新宿のロボットレストランに行く予定だ。
クリステン:よく言われることではあるけど、日本人は本当に親切で、礼儀正しいわ。そうそう、魔法ではないけれど、日本で『Let It Go』を気に入ってもらえたとしたら、実はこの来日で思い当たることが一つできたの。
――どんなことですか。
クリステン:それは、日本人にとても自分と近しいものを感じたということ。
私はカトリックで、スウェーデン人とアイルランド人の子ども。小さい頃から「いい娘でいなさい」と厳しく教えられてきて、今でも「ありがとう」「ごめんなさい」を1日に500回くらい言うの(笑)。そんな、自らを律することと、同時に自然とそれに反発してしまうことによる感情が、『アナと雪の女王』の楽曲にも、どこか反映されている。
ロバート:だからこそ、『Let It Go』のメッセージに共感してもらえたのかもしれないね。
「未知への旅」がテーマの新曲

クリステン:そう、前作ではエルサは人と違う本当の自分と、それを隠して生きる自分の間で葛藤していた。今作ではその苦悩から解き放たれ、まさに「ありのままで」生きていけるようになった。
でも、人と違うがゆえの不思議な運命に誘われ、一度は抗うけれど、やがて未知への旅へ出ることになる。だから『Into the Unknown』、そこから作品が始まるの。

――制作をする上で、大事にしたことは。
ロバート:まずはディズニー映画のこれまでの楽曲への敬意だね。そして、ファンへの感謝。続編は、それを待つファンの声がなければ作ることができなかったものなんだ。応援してくれたみなさんのことを、心から愛しているよ。
――これから観る人には、どんなことを望みますか。
クリステン:あなたにとっての「未知への旅」をしてほしい! 私たちがこうして日本に来て、自分と日本の共通点を見つけるなんて、想像もつかないことよね。
こんなふうに、世界は驚きに満ちているから。この作品が、新しい一歩を踏み出すきっかけになればうれしいです。