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「9月1日」ずっと続く苦しさ、どうすれば? 当事者世代の大事な視点
夏休みが終わるころ、学校生活への生きづらさに悩んでしまう「9月1日問題」が注目されることが増えてきました。withnewsをはじめ、様々なメディアも特集を組んで報じてきました。でも、悩んでいる人は「9月1日」に限った話ではありません。なんとか学校に行きながら、一人で苦しんでいる子も少なくないはずです。すぐに解決できない悩みへのヒントについて、同年代の高校生に考えてもらいました。
「生きづらさを抱える10代にどんなアドバイスが届けられるか」。そんな問題について考えてもらったのは8月に開かれた「高校生のための夏休みメディア講座」に参加した高校生30人です。実際に相談機関などに寄せられた悩みを元にした質問について、グループごとに話し合ってもらいました。
まず「LINEグループがしんどい」という悩みについて。
同じ経験をしたというメンバーからは「返事をしないと名前がバレる」「人数が多いと誰が見ていないかはわからないけれど、人数が少ないとそうはいかない」といった、当事者ならではのエピソードが寄せられました。
その一方で、「気にしたことがない」「返信しないくらいで無視するのは友だちではないから気にしない」といった意見も。
「ステータスメッセージに『今返信できません』と書いておく」「(スマホが操作できない)スクリーンタイムを親に設定されている、と最初に言っておく」という実践的なアドバイスも出てきました。
最終的な解決方法について「通知をオフにした自分の時間を大切にする」「それでもし仲間外れにしてくるようなら、その人は本当の友だちではないと割り切ることも必要」とした上で、「あなたの気持ちを分かってくれる人が他にもいるはずだよ」とまとめました。
次は「先生に個性を持つように言われるけれど、自分の個性がわからない。友だちから性格に裏表があると言われる」という悩み。
メンバーからは「私もわからないです」といった共感の声が出た一方、「あまり考えたことがない」「個性を意識しないで生きている人はたくさんいると思う」という意見も出ました。
解決策として挙げられたのは「気にしすぎない」「まだ人生の個性のあるなしを決めるのは早い」、そして、「そもそも世の中に同じ人間はいない」などなど。
相談者へのメッセージとして「10代のうちにたくさん悩んで見つけていけばいいと思います。自分の好きな趣味を見つけたり、自分を見つめ直す時間をとったりしてみては?」と励ましました。
共感が集まったのは「どうすれば友だちができる?」という悩み。
「中1の途中ぼっちだった」「わかる」などの声が集まりました。
解決方法としては「グループに入っていない子を見つける」「グループに入っている子でも1人の時を見つけて声をかける」といったものから、「周りの人の持ち物を見て共通点を探す」「図書館司書とか大人を仲間につける」「クラス単位の行事で何かの係になる」など、現場感あふれるアドバイスが出てきました。
最終的に「1人でいることをピンチと思わず、まわりを見て、分析し、自分と共通点を見つける大きなチャンスとして受け止めてほしい」というメッセージに行き着きました。
「進路の考えが親とちがう」という深刻な悩みについて話し合ったグループ。メンバーから出てきたのは「まず自分の考えていることを自分の中で整理できているかな?」「行きたい進路についてきちんと調べていないのでは?」といった、自身を見つめ直すことをすすめる意見でした。
そして「自分の人生は自分で決めるべき」とした上で、「まず話し合ってみる」「話し合うことを怖がらない」といったアドバイスに行き着きました。
もし、当事者だったら学校に行きづらくなりそうな「グループから外されてる?」という悩みについても話し合われました。
結論として出てきたのは「世界は広いよ」というメッセージ。
同じ思いをしたというメンバーも含めて、今の状況だけに縛られないよう、視野を広げることをすすめる声が相次ぎました。
グループとして出てきたのは「バイキング方式」と呼ぶ考えの整理方法です。
「今の状況を書き出す」
「1人で行動する」
「信頼できる人を見つける」
「勇気を出して直接伝える」
「そのグループに固執しない」
以上のような、いくつかの選択肢を自分の中で用意して、できることから選んでみるという提案になりました。
高校生たちの意見からは、具体的な場面を想定した当事者世代ならではの強さを感じました。
一方で、提示された悩みに対して「自分は経験がない」と答えるメンバーが多かったのも事実です。そんな率直な反応は、悩んでいる10代のことを考える時に、その子の周りにいる多くの子どもたちの存在も頭に入れないといけないという、当たり前のようで忘れがちな視点の大事さを気付かせてくれました。
スマホが普及しSNSによるやり取りが当たり前になった時代、教室での生活は教師や外部の大人たちが生徒だった時代とは様変わりしています。
「スクリーンタイムを親に設定されている」といった、友だち関係にひびが入らないレベルの具体的なアドバイスは当事者ならではの感覚でした。
「9月1日問題」は、10月も11月も1年中、ずっと続いています。自分たちの経験の範囲かもしれませんが、当事者世代の「地続き感」のあるメッセージを、教師や専門家やメディアが受け止めてあげる。そして、色んな悩みの場面にいかせる答えに変換してあげることが、求められているのかもしれません。
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