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ヨッピー&ハヤカワ五味”ケンカ”を語る 理不尽からどう身を守る?

ハラスメントとか無理難題な発注とか、仕事で理不尽に直面すると、心が消耗しますよね。あなたはどう身を守っていますか。フリーライターのヨッピーさんと起業家のハヤカワ五味さんが「すり減らない働き方」をテーマに対談しました。「身を守るポイント」は三つ。

対談したヨッピーさん(左)とハヤカワ五味さん
対談したヨッピーさん(左)とハヤカワ五味さん

目次

 ハラスメントとか無理難題な発注とか、仕事で理不尽に直面すると、心が消耗しますよね。あなたはどう身を守っていますか。フリーライターのヨッピーさんと起業家のハヤカワ五味さんが「すり減らない働き方」をテーマに対談しました。個性的なキャリアを歩んできた2人から出てきた「身を守るポイント」は三つ。逃げる、たたかう、うまく伝える。

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 おふたりの対談は10月、朝日地球会議2019のなかで実現しました。

朝日地球会議2019での対談の様子=北村玲奈撮影
朝日地球会議2019での対談の様子=北村玲奈撮影 出典: 朝日新聞

 ヨッピー 「僕自身は、そんなにひどい扱いは受けていないんですよ。好き放題にやってるのと、身体も大きいし見た目が怖いって言われるんで。あとツイッターで荒ぶったことも言っているから。チンピラみたいな扱いです(笑)」

 ハヤカワ 「私もそうですよ。ふたりともインターネットチンピラみたいなもんですね」

 冒頭から、頼もしすぎる発言です。

北村玲奈撮影
北村玲奈撮影 出典: 朝日新聞

 世の中には、いろんな理不尽があふれています。

 ヨッピーさんは、会社員時代には「部長が見る資料を雑に作るな」と怒られて、不毛な作業をさせられたそうです。ハヤカワさんも「そんなにひどくない」と言いながら、男性から年収マウンティングを受けたり、ホテルのバーに誘われて逃げたり。現在進行形でいろいろとあるそうです。

 そんなお二人に身を守る方法を聞くと、三つのポイントが出てきました。
 逃げる、たたかう、うまく伝える。

 それぞれ極意を聞きました。

1.逃げる

 ふたりがそろって、最初に挙げたのが「逃げる」でした。
 ハヤカワさんいわく「逃げ方を身につけたら無敵」だそうです。
 
 ヨッピー 「僕は逃げ足の速さでは業界内でも定評があるんですよ。その速さと精度」

 ハヤカワ 「精度は大事!」

 ヨッピー 「僕が断った仕事が後輩に回るんですよ。あとで知って『あの仕事受けたん? 俺、絶対やばいと思って逃げたんよ』って言うと『あーさすがです。いま泥沼です』って言われますね」

 やばいと感じるポイントって、なんでしょう?

北村玲奈撮影
北村玲奈撮影 出典: 朝日新聞

 ヨッピー 「例えば、エライ人しか出てこない、やりとりする社員が伝書鳩で『上の人がこういってます』としか言わないとか。あとは言う事がコロコロ変わったり。こないだは、当初4人でやる企画で、もう人も用意していたのに、直前になって『やっぱ3人でお願いします』と言われて。『いやもう人集めてるのにそんなことはできません』と。信頼関係ですね」

 ハヤカワ 「途中で仕事の条件が変わりまくるのは逃げますね。たとえば講演会の依頼がきたとして、あとからプロモーション動画を撮ってとか、事前に取材を受けてとか、後出しでどんどん作業が増えていくのはやばい」

 それって、ギャラは変わらないんでしょうか。

 ハヤカワ 「変わらないですね。こういうやばい案件は、目先の利益より『これはもう受けないほうがいい』が勝つ瞬間があります。下手したらその先1カ月くらいダメージが残るので、自分のHPと得られる利益を比較します」

 おふたりの、逃げる時の断り方を教えてください。

 ヨッピー 「僕は『気が向かないからやめます』って、そのまま言います」

 ハヤカワ 「私は、こことここが問題だと思うのでやめますと理由をお伝えします。だいたいあまりに内容が悪くて、向こうも非をわかってますね。だから私が悪いとはなりにくいです」

2.たたかう

 冒頭に”インターネットチンピラ”という言葉も飛び出しましたが、二人は理不尽に対して戦うイメージがあります。

 ヨッピー 「ぼくは得意分野ですね。武闘派です」

 先日実際にヨッピーさんが関わった事例を話してくれました。

 ヨッピー 「フリーで働く知り合いが、ある企業と商品開発を手がけたんですよ。半年間くらいずっとやっていて、あと1週間でリリースという段階で、急にクビを言い渡されて。知り合いが僕に泣きついてきたんで、弁護士を連れてその会社に一緒に乗り込みました」

 おおお、討ち入り……。

 ヨッピー 「向こうの弁護士は最初『受けて立ちますよ。なんなら裁判しますか』という感じだったんですが、『じゃあ俺が全部ネットに書く』って言ったら『ちょっと待ってください』と全面的に折れて、お金も全部ちゃんと払ってもらいました」

 さすがの一言です。
 たたかう時のコツってあるんでしょうか。

北村玲奈撮影
北村玲奈撮影 出典: 朝日新聞

 ヨッピー 「日頃から行儀良くすること。仮に僕に泣きついた知り合いが毎日会社で酒を飲んで暴れていたら、世に問うたところで『それはお前が悪い』となる。日頃から目の前のことをちゃんとやって、胸を張れる働き方を普段からしていれば、今の時代はたたかう手段はたくさんあるんですよ」

 さらに高等戦術として、「におわす」というのもあるとか。

 ヨッピー 「あります、あります。友だちのクリエイターが発注元にむちゃな作業をどんどん乗せられて、それでも締め切りまでに絶対にやれと言われて困っていまして。僕がツイッターで『やったー。思う存分殴れる相手ができたぞー』って企業名を出さずにつぶやくんですよ。で、友だちは友だちで発注元に『ヨッピーさんに相談しています』って言う。で、その相手が僕の投稿を見たんでしょうね。その後友だちは泥沼から抜けられたそうです」

 絶妙な連携……。

 ヨッピー 「会社員でも同じことができますよ。みなさんとにかく証拠を集めてほしい。ボイスレコーダーね。証拠さえあれば、戦い方はいくらでもある。『こんなひどい事がありました』って僕に投げてくれてもいいし」

 ハヤカワ 「録音している時って、なぜかこちらも強気に出られるんですよね。『よし、言え』って。だから逆にハラスメントが起きづらい」

 ハヤカワさんは「『いつでも刺してやるぞ』というスタンスでけんせいする」ことをすすめます。

 ハヤカワ 「悲しいことに、加害者ってこちらを選んでいるんですよ。いじめもそうだし、痴漢もそう。私は人生において1~2回しか痴漢にあったことがない。でもうちのスタッフには毎日痴漢にあった子がいる。向こうは、こちらが騒ぎそうだなというのを見ている。逆に言うと『いつでも刺してやるぞ』スタンスを常日頃からとっておけば、やばいことは減ります。ふるいにかけられた本当にやばい人しかこなくなる(笑)」

 とはいえ、たたかうってリスクも大きいです。なかなか踏み出せない人も多いのでは。

 ヨッピー 「そう、リスクはありますよ。僕はたたかうのがうまいんじゃなくて、勝てる戦(いくさ)を選択しているんですよ。いっぱいいろんな話を聞いていますけど、こちらにも非があるという場合はケンカしませんし」

 ハヤカワ 「そう、明らかに0対10であっちが悪いという時じゃないとたたかわないです。じゃないと『あれ? 自分が悪かった?』って自爆することもあるので」

3.うまく伝える

 身を守るための最後のポイントは、意外なものでした。
 「うまく伝える」。どういうことでしょう。

 ハヤカワ 「仕事だけじゃなくて友情とかパートナーもそうなんですけど、人間ってしゃべらないと伝わらないんです。察することは無理」

 「なんでわかってくれないんだ!」は無理だと。

 ハヤカワ 「だって言ってないですから。言っていないのに察してくれる環境って超ぜいたくなんですよ。私はそういう環境じゃなかったので、しっかり伝えます」

 意見を言うことが怖いという人もいますよね。練習も大事でしょうか。

北村玲奈撮影
北村玲奈撮影 出典: 朝日新聞

 ハヤカワ 「しゃべるのが苦手という人もいるんですけど、苦手ならテキストで書けばいいですから」

 ヨッピー 「主張するのが大事っていう。フリーランスで活躍し続けている女性の共通点として、だいたいみんな気が強いんです。逆に言うと、そうじゃないと生き残れないんですよね。いろんなすけべなおじさんから誘いが来て消耗するだろうし、ハラスメントもあるだろうし」

 気が強くなくても、生き残れるようにならないものでしょうか。

 ヨッピー 「本当はそうあるべきですよね。僕の奥さんは、もともと気が強い人じゃなかったですよ。大事なのは成功体験です。たとえば奥さんが取引先とのやりとりで消耗すると、僕が指示を出すんです。こう書いて送れと。そうすると、相手はけっこう簡単に折れたりする。それが成功体験になって、奥さんもちゃんと相手と戦うようになってきて」

 ハヤカワ 「自分は間違っていない、言い返しても大丈夫なんだって思うんでしょうね。『自分のほうも悪かった』と考えて引いてしまうのって、それ以上考えなくてもすむから意外と楽なんですよ。思考停止しないことも大事」

 ヨッピーさんは「いまの若い世代は恵まれているから大丈夫」と励まします。

 ヨッピー 「SNSがあるからですよ。なんかあったら『ツイッターに書いてやるからな』って、相手と差し違える道具をもっている。昔は会社でひどい扱いをうけても、新聞社なんかに取り上げて貰うのを待つしかなかった。いまは自分で相手をボコボコにする手段がありますから」

 ハヤカワ 「たしかに昔と違って、平等に140字が与えられていますからね」

 ヨッピー 「例えば部長が怒鳴り散らすなら、それを録音しておいてツイッターに流せば、どんなにフォロワーが少なくても拡散しますよ。もし拡散しなかったら僕に言ってくれたらリツイートします! 戦う道具はあるので、あとは気合だけですね。『この理不尽を許して良いのか、こいつを野放しにして良いのか』という気持ち」

 ハヤカワ 「自分より偉い人がすべて正しいと思考停止しないことですね。何が正しいのかを常に考えることは大事。『それっておかしいんじゃない?』と言ってくれる友だちも重要です。ブラック企業を抜けられないとか、DVから抜けられないのは、『相手の方が正しい』という思考に入ってしまい、自分で気付けないというのもあります」

北村玲奈撮影
北村玲奈撮影 出典: 朝日新聞

 ヨッピー 「DV男性って、情報を遮断するんですよね。逆に言うと、外とつながりさえすれば大丈夫。今はその手段がたくさんある」

 ヨッピーさんの言葉で印象的だったのが、「ネットでは弱い人ほど強い」です。

 ヨッピー 「本当にそうですよ。ネットでは大企業とか権力者に対する反発が強いので、弱者と強者がケンカをすると、だいだいみんな弱者の味方をするんですよ。弱いから戦えないんじゃなくて、逆。弱いから好き放題たたかえるんですよ。そういう気持ちを持って生きていくといいんじゃないでしょうか」

【もうひとつの対談記事はこちらから】
ヨッピー&ハヤカワ五味 会社員かつフリーランス!自由に働くコツ
会社に縛られずに働くために、ふたりが大事にする「選択肢」とは

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