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「大家好」と挨拶した安倍総理 中国SNSでのイメージチェンジは…

中国語であいさつした安倍首相
中国語であいさつした安倍首相

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10月1日にあった中国建国70周年を祝う建国記念日では、盛大なパレードなどが披露されました。一方、現地のSNSユーザーの間では、日本から届いた「中国語のあいさつ」が話題になっていました。「大家好(ダージャーハオ)」から始まるあいさつの主は安倍晋三首相。ネットユーザーからは厳しい声が飛ぶかと思いきや、意外な反応も……。建国記念日に起きた安倍首相のあいさつを巡る反応から、経済大国となった中国人の変化について考えます。

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中国建国70周年を迎え、赤い花火で彩られた式典会場=2019年10月1日午後8時9分、北京、仙波理撮影
中国建国70周年を迎え、赤い花火で彩られた式典会場=2019年10月1日午後8時9分、北京、仙波理撮影 出典: 朝日新聞社

あいさつの内容 中国語の発音

9月27日、中国版ツイッター微博にある「人民日報」のアカウントが、「安倍晋三首相が新中国建国70周年に祝賀し、中国語で『こんにちは』と話した」というタイトルで、あいさつのビデオを中国語字幕付きで公開しました。

投稿は6000回以上転送され、1万5千近くのコメント、35万を超える「いいね」が集まりました。さらに、「#安倍晋三用中文向大家問好(安倍晋三氏が中国語であいさつした)」が微博の中で話題になり、そのトピックを閲覧した数は2.1億を超えました。

話題になったビデオのあいさつは、中国語からスタートしました。

「大家好(ダージャーハオ)。皆さんこんばんは。安倍晋三です。中華人民共和国が建国70周年を迎えられたことに対し、日本国政府および日本国民を代表し、心から祝意を表します」

そして、今年は日本が平成から令和という新たな時代を迎えたことを紹介し、両国にとって記念すべき年だと強調しました。

来年春に中国の習近平国家主席が国賓として日本に訪問することになり、日中両国の新しい関係作りに前向きな姿勢を示した安倍総理。あいさつの最後は、日中関係の更なる発展を祈り、中国語の「謝謝」(シェシェ)で締めくくりました。

ちなみに安倍首相の発音ですが、「大家好」の「四声」にやや力を入れすぎた部分もありましたが、十分、意味は通じるレベルで、きれいな発音でした。

中国の習近平国家主席(右)と握手する安倍晋三首相=2019年6月27日午後7時34分、大阪市北区、代表撮影
中国の習近平国家主席(右)と握手する安倍晋三首相=2019年6月27日午後7時34分、大阪市北区、代表撮影 出典: 朝日新聞社

ネットユーザーの意見

安倍首相のあいさつには、過去の日中関係の記憶から、やはり批判的な声が寄せられる一方、これまであまり見られなかった反応も見られました。

批判的な声としては、歴史問題など過去の両国の関係を踏まえたものが目立ちました。

「あなたさえ問題を起こさなければ、中日関係がよくなれるよ」

「パフォーマンスにすぎない。裏には何かを企んでいるだろう」

「安倍総理は歴史問題を認めるべきだ」

「日本人があまり好きでない。警戒しないといけない」

赤くライトアップされた東京タワー=2019年2月4日、東京都港区
赤くライトアップされた東京タワー=2019年2月4日、東京都港区 出典: 朝日新聞社

そんな中、新鮮に映ったのが、あいさつを冷静に受け止める声もあったことです。

「友好は敵対よりずっとましだ」

「過去の歴史は忘れがたいが、両国の関係を理性的に処理しないといけない」

「今年春節の時に、安倍総理は中国語で新年あいさつをしてくれました。東京タワーも赤に染まりました。友好的な態度を示してくれました。一国のリーダーが私たちの言葉で祝福をしたことへの感謝は必要です。国と国との関係には『利益』が重要視されますが、私は平和を望みます」

「日本の政治家は好きでないが、日本文化は好きです。日本に旅行に行った際、多くのお年寄りと会い、やさしく接してくれました。私は日中の友好関係に楽観的です。」

また、日本で「爆買い」などと呼ばれる中国人観光客の存在が大きくなっていることを踏まえた、こんな投稿も……。

「安倍総理のメッセージの通訳は以下の通りです:中国のみなさん、すぐ国慶節の休日なので、日本に遊びにきてください。そしてたくさんショッピングしてください」

両手に家電製品を持ち、大阪・ミナミを観光する中国人たち。炊飯器は「爆買い」の象徴だった=2017年1月、大阪市中央区
両手に家電製品を持ち、大阪・ミナミを観光する中国人たち。炊飯器は「爆買い」の象徴だった=2017年1月、大阪市中央区 出典: 朝日新聞社

ネット上で見られる安倍総理のイメージ変化

安倍首相をはじめ、靖国神社を参拝したことがある日本の政治家に対するイメージは、中国ではよくないのが現実です。

また、安倍首相の祖父である岸信介元首相は中国と対立する意見を持つ政治家の代表的な人物として知られています。安倍首相のあいさつへの反応の中にも、「(安倍総理の)母方の祖父はA級戦犯で、新中国に敵視した政治人物でした」という投稿がありました。

17日に、安倍首相は靖国神社の秋季例大祭に奉納した件で、中国と韓国で波紋を呼び、中国の微博では「歴史を直視しなければ、日中の間の『正常化』が永遠に難しい」との投稿がありました。

一方、2016年に中国で開催されたG20で、安倍首相が自分の泊まったホテルの部屋に「感謝」という直筆のメッセージを残したエピソードがネットに話題になるなど、「イメージチェンジ」の兆しも生まれていました。

安倍首相のあいさつへの感想には「安倍総理は『能屈能伸』(失意の時には堪え忍び、得意の時に大いに腕前を振るう)、国のために姿勢を低くすることができます。日中の間のあの歴史がなければ、敬服する人間だと思う」といった、肯定的な声もありました。安倍首相を評価する反応から伝わってきたのは、例えそれが経済的な目的であったとしても、自国のために、友好的なビデオメッセージを送ることは、国民のために献身的に動く態度として、尊敬に値するという空気感です。

柔道大会の観戦中に談笑するプーチン大統領(左)と安倍晋三首相=2019年9月5日、ロシア・ウラジオストク、佐藤達弥撮影
柔道大会の観戦中に談笑するプーチン大統領(左)と安倍晋三首相=2019年9月5日、ロシア・ウラジオストク、佐藤達弥撮影 出典: 朝日新聞社

真の日中友好のために・・・

現在中国は経済が発展し、海外へ行く人も増え、国民の間に一定の自信がついてきています。

日中関係はアメリカや北朝鮮を巡る情勢に影響を受けながらも、連携し協力することが両国の利益になるという認識は、共有されはじめています。

安倍首相の中国語のメッセージに対するSNSの受け止めからは、中国人の中に芽生えた自信と、経済をはじめ建設的な関係を築くことのメリットを率直に認める姿勢が伝わってきます。

ネットでは、日中や日韓関係めぐり偏った過激な意見が飛び交いがちです。その一方で、たとえ一国の首相であっても「顔の見える」コミュニケーションが成り立てば、前向きな議論を生み出す可能性が広がるのかもしれません。

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