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2019年10月23日

「今日もお客様はゼロでした」ネガティブな人限定バーに行ってみた


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「ネガティブカフェ&バー モリオウチ」の店内

「ネガティブカフェ&バー モリオウチ」の店内

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《今日はやっぱりお客様0でした》。そんなちょっとネガティブなツイートから注目されたのは、下北沢にある「ネガティブカフェ&バー モリオウチ」(東京都世田谷区)です。「ネガティブな人のために作った」というお店は、森の中のロッジのような居心地の良さと、パンチが効きすぎているメニューを揃えた、「ありそうでなかった」空間でした。店長の男性に、「ネガティブ」のコンセプトに込めた思いを聞きました。

「ネガティブ」な投稿が話題に

話題となったのは17日、「ネガティブカフェ&バー モリオウチ」(@NEGATIVECAFEBAR)のTwitterアカウントが、お客さんがいない店内の写真とともにつぶやいた投稿です。

出典:「ネガティブカフェ&バー モリオウチ」のツイート

ネガティブ全開(?)の内容の一方、添えられたお店の写真に注目が集まりました。木のあたたかみを感じる隠れ家風の内装で、窓から差し込む光が美しく、投稿には「何これ最高やん…」「アリエッティーとかに出会いそうな空間」と反響が集まっています。

加えて、「ネガティブカフェ&バー」というユニークなコンセプトにも「ネガティブカフェって斬新なスタイル」「普段の根暗な感じでいていいなら最高」などのコメントが。投稿は3.4万回以上リツイートされ、7.6万件以上「いいね」が押されています。

電話でも「すみません……」

ネガティブカフェ&バーとは一体どんな場所なのでしょうか。拡散しているツイートを受けて、早速取材を申し込みました。

電話で店長の男性と取材日程の調整をしたのですが、度々「すみません……」が出てくる控えめな店長。声だけで、そこはかとないネガティブさが伝わってきます。

「ネガティブカフェ&バー モリオウチ」の入り口

「ネガティブカフェ&バー モリオウチ」の入り口

下北沢駅から徒歩数分。ギャラリーなども入るビルの2階にあるのが、「ネガティブカフェ&バー モリオウチ」です。入り口のドアには「ネガティブな人限定」「NEGATIVE PEOPLE ONLY」の貼り紙が。ドアを開けると、店内には木材のいい香りが漂っていました。

出迎えてくれたのが、店長の岡田巧さん。ツイートした本人です。「内装だけは自信を持っています」というだけあって、店長自ら1カ月半かけて設置した内装はツイートの写真の通り、コンパクトながらも居心地の良い空間に仕上がっています。

隠れ家的な雰囲気

隠れ家的な雰囲気

攻めすぎカクテル「山傘千絵美46歳」

そんな雰囲気の中、異彩を放っているのが、パンチが効いているオリジナルカクテルの数々です。初めて見る人は驚いてしまうかもしれないので、心して読んでいただきたい。

・23年間、スーパーでピザポテトを潰し続けた主婦、山傘千絵美46歳。その虚飾の半生。
・あの夏失った「あの感情」に僕はまだ名前をつけられずにいる。
・「あなたは優しい人ね…。でも悪い人…。」そう呟いた後、香澄は束ねた髪を右人差指でほどいた。
・お父さん…この番組見てたら連絡下さい。私も幸子も怒ってません。
・あの日、君は、ジャミラだった。
・ゴリゴリの塩顔ゴリラ

個性的なカクテルの数々

個性的なカクテルの数々

これらが、カクテルの名前です。いずれも590~690円。「えっ、山傘千絵美って誰ですか」と聞くと、ブランド物に身を包みつつも、心に闇を抱えた「山傘千絵美」の生き様について岡田さんが教えてくれます。補足ですが架空の人物の話です。

23年間、スーパーでピザポテトを潰し続けた主婦、山傘千絵美46歳。その虚飾の半生。

23年間、スーパーでピザポテトを潰し続けた主婦、山傘千絵美46歳。その虚飾の半生。

上記は一部で、他にも個性的なオリジナルカクテルがずらり。「テーマを優先しすぎて味がおろそかになっているところは否めない」と笑いますが、一口いただいた「山傘千絵美」はトロピカル系の甘さが広がりおいしかったです。その甘さが、彼女の「虚飾」を物語っているようでした。もう一度補足しますが架空の人物の話です。

「23年間、スーパーでピザポテトを潰し続けた主婦、山傘千絵美46歳。その虚飾の半生。」を頼んでみた。甘さの中に強めのアルコールをほのかに感じる。

「23年間、スーパーでピザポテトを潰し続けた主婦、山傘千絵美46歳。その虚飾の半生。」を頼んでみた。甘さの中に強めのアルコールをほのかに感じる。

カフェとしても営業しているため、ノンアルコールドリンクもあります。「タピオカミルクティーは売れないけど、ブームに乗っかりたくて出している」というのが、「カオピタミルクティー」。タピオカじゃありません、「カオピタ」です。グラスに好きな顔をピタッと描いてくれるのが、このドリンクの特徴です。

タピオカじゃありません、「カオピタ」です。

タピオカじゃありません、「カオピタ」です。

「少々ネタに走りすぎでは……?」という不安もよぎりますが、「深刻な感じで待ち受けるよりも、ふざけたネタっぽいお店の方が、ネガティブな人にとっても入りやすいのかなって思ってやっています」。なるほど、ここには気配りがありました。

イケイケとは「真逆」に振り切る

岡田さんは、2012年から下北沢で洋服とアクセサリーのお店を経営していました。そして今年8月に「モリオウチ」を開店しましたが、構想自体は更に以前からあったもの。「10年以上前から、ネガティブな人のためのバーを作りたいと考えていました」と岡田さんは語ります。

でも、どうして「ネガティブ」に着目したのでしょう。

「僕自身がギラギラした感じのバーがあまり好きじゃないんです。大声で話したり、わーっと盛り上がったりっていうのが苦手で。もちろんそういうお店ばかりではないんですけど、イケイケのバーとは『真逆』のことをやりたいと思ったんです」

店長の岡田さん。顔出しはNGとのこと。

店長の岡田さん。顔出しはNGとのこと。

一方、「ネガティブ」はその言葉の通り「負」の意味で捉えられがちです。しかし、岡田さんは「ネガティブが悪いことじゃないと思うんですよね」。お店を経営してきた経験からも、ネガティブ思考が仕事に活かされてきたそうです。

「例えばお店で、お客さんに積極的に話しかけて5千円売り上げたとしても、それを見て帰ったお客さんが本当は1万円分買ってくれていたかもしれない。『自分だったら嫌だな』に敏感だから、何かをするにしてもメリットとデメリットをすごく考えるんですよね」

岡田さんが考えるネガティブとは、「他人のことさえも、自分のことのように深刻に考える人」。「そう考えると優しい人。僕も人として、ネガティブ思考の人が好きなんです」と話します。

「むしろポジティブを押しつけられることに、生きづらさがあるんじゃないでしょうか」

個室には水槽があるスペースも。小さな熱帯魚をみながらくつろぐことができる。

個室には水槽があるスペースも。小さな熱帯魚をみながらくつろぐことができる。

「女性限定」に込めた思い

Twitterで話題になった「モリオウチ」ですが、基本的に女性限定のお店です。ツイートが拡散される中で、その部分に批判が集まる場面もありました。今では女性と同伴であれば男性も利用できる日を設けていますが、岡田さんの中には「女性限定」を守りたい思いもありました。

「バーで男性が、女性のお客さんに対して、仕事の武勇伝を語ったり、下ネタを話したりするのをよく見かけました。そして愛想笑いして、辟易する女性たちも。年齢や容姿でイジるやりとりとか、見ていて僕すごく嫌なんです」

森小屋のような個室

森小屋のような個室

もちろんすべてのバーやすべての男性がひとくくりにそうだと言っているわけではありません。「しかし、女性限定ということで安心できる人がいるのは確かです。そういう人のためにお店をつくりたいという気持ちがありました」

そこには女性の地位やとりまく環境を憂い、「他人のことさえも、自分のことのように深刻に考える」岡田さんの姿がありました。「僕だって無意識に傷つけてきたかもしれない。『女性は大変だね』とかで片付けて、『自分は男だから大丈夫』って思って終わりたくないんですよね」

今回話題になったことで、「ネガティブな男性」のニーズも感じたという岡田さん。「曜日によっては男性も利用してもらえるようにして、いつか男性限定のお店もやりたいですね」

どこまでもネガティブファースト

開店から2カ月。売上が0円の日も珍しくはなく、初期投資を回収するにも時間がかかるそう。しばらく売上がないことを見越して用意していた貯蓄を、崩しながら営業しています。実際のところ、更に店員を雇う余裕はないようです。

しかし、「売上だけを求めるのであれば、この形態で営業していない」という岡田さん。お客さんの半数以上は、女性の1人客。個室も1人で使ってもらうので、「コスパ」という言葉を使ってしまうとあまりよくはありません。

それでも大事にしたいのは、安心できる環境。そして、「ネガティブな人が少しでも居場所だと感じてもらえたら」という、どこまでもネガティブファーストな思いです。

カクテルをつくる岡田さん

カクテルをつくる岡田さん

「ネガティブカフェ&バー モリオウチ」(東京都世田谷区北沢2-32-8  2F)は通常13時〜23時営業。不定休のため、営業状況は店舗のTwitter(@NEGATIVECAFEBAR)をご確認ください。

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