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中国から飛来? 1千キロ旅した風船が伝えてしまった隣国の「変化」
9月24日、世界自然遺産の北海道知床半島に、中国の赤い風船が飛来し、海岸線で回収されました。透明なビニールの風船の中に小さめの赤い風船が入っている二重構造で「盛世華誕」「国慶節」など中国語が書かれていました。どうやら、中国の建国70年を祝う国慶節(建国記念日)のために飛ばされたと考えられています。中国版ツイッター微博では「#国慶節の風船が北海道に飛んでいた?」という言葉が話題に。海を越えた風船にロマンを感じる声、風船の性能を褒める投稿の中に、気になる声も……。「海の環境が心配」。風船騒動から、中国で芽生えはじめている環境意識ついて考えます。
中国では何かを祝う際、風船をよく使います。結婚式やお正月などでは赤い風船が飾られ、スポーツ大会や記念日など大きなセレモニーの際にはたくさんの風船が一斉に飛ばされます。
10月1日は中国の建国記念日で、特に今年は中国建国70年の節目の年のため、天安門の前での軍事パレードなど盛大な催しが開かれました。現地メディアの報道では、70万羽のハトに加え、7万個のカラフルな風船が飛ばされたと伝えられています。
今回、北海道まで「飛んだ」風船は、実際にセレモニーで飛ばされたものと少し違い、記念用の風船の一つのようです。
中国から北海道知床までの距離は1千キロ以上。報道によると、知床地元の気象台は「高度6千~9千メートルに吹いている偏西風(ジェット気流)に乗って飛んで来た可能性がある」と指摘しています。
そんな風船騒動は、中国のネットユーザーの注目を集めました。
「世界旅行が好きな風船だ!」
「風船も頑張ったね!」
「偏西風、高度6千から9千メートル、1千キロ飛べる、ちゃんと覚えましょう、試験に出そうな内容だ」
そして1千キロの距離を飛んで破れなかったことに「風船の質が良い!」というコメントも。
同時に、「環境汚染じゃないか」「たくさんが風船が海に落ちてしまったら、海の環境が心配……」「できる限り回収してください」など、自然環境を気にする声も目立ちました。
中国では長く、経済発展のためには多少環境を犠牲にしても仕方ない、という考えが根強くありました。一方で、最近では、環境への問題意識が高まっているのも事実です。
建国への祝賀から、環境汚染への心配まで、風船騒動に現れた反応からは、中国人の変化が見て取れます。
スウェーデン人の環境保護活動家のグレタ・トゥーンベリさん(16)は中国でも知名度が高く「環保小公主(環境保護の小さなプリンセス)」と呼ばれています。
経済がある程度発展し、中国でも環境を守り、自然豊かな場所に住みたいという願望が高くなっています。特に海外旅行をする中国人が急増したことは、これまで抽象的で身近ではなかった環境問題を近づける効果をもたらしています。
今年の7月からは、上海をはじめ中国の大都市で「ゴミ分類」が進められています。プラスチック類の海洋汚染問題への関心も高くなっています。
実は、風船騒動の発生源だと考えられる国慶節では今年、「エコ」が強調されていました。『人民日報』は、風船はすべて一定の高度に達したら自動的にわれて、海に落ちても無害なように分解されると報じました。
ちなみに70万羽のハトも北京の市民から借りたもので、飛ばした後、また市民に戻っていくとしており、閲兵式で飛行機から出たカラフルな煙も、環境には無害なものだと強調されました。
インターネットで瞬時に情報が伝わる現代社会ですが、1千キロの距離を何日もかけて旅をしてきた風船だからこそ伝わる情報もあるようです。
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