連載
#22 #父親のモヤモヤ
男性の家事・育児、7割が「語りづらい」 そう思う事情を考えてみた
「パパ友がいない」――。仕事と子育ての両立に悩み、葛藤する父親から、こんな言葉を聞くことがあります。周囲に同じ境遇の父親がおらず、孤独を感じるというのです。そうした様子を描いた記事が、Yahoo!ニュースで掲載されました。あわせて実施された「男性が家事・育児を語りやすい世の中になっていると思う?」と題した意識調査では、「思わない」という声が7割近くを占めました。背景には何があるのでしょうか。(朝日新聞記者、高橋健次郎)
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意識調査は、9月21日から10月1日まで実施され、1万2899票の投票がありました。質問は、「思う」と「思わない」の2択です。「思う」は33%(4257票)、「思わない」は67%(8642票)という結果でした。父親が家事や育児について語ることに、まだまだ抵抗のある社会と見られています。
もちろん、昔に比べれば、語りやすい環境にはなっているでしょう。そうした実感を込めたコメントもありました。
「昭和の時代に比べれば、全然話しやすい時代ですよ。同年代ではSNSでイクメンですよって表明している記事が多いですから」
「以前に比較すると、かなり男の家事、育児が当たり前になってきていると思う」
しかし、多数を占めたのは、「男性が家事・育児を語りやすい世の中になっていると思わない」という意見でした。
なぜ、こう感じるのでしょうか。
特に、当事者である父親目線で考えてみます。一つに「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」という考えが色濃く残っていることも影響していそうです。例えば、職場の上司が「男は仕事」という強い意識を持っている場合、語りづらさを感じるでしょう。
では、ほかの理由はないのでしょうか。コメント欄にヒントがありました。
「語るだけなら、ひと昔前よりは全然話題にしていると思う。実行を伴っているかどうかは、また別の話」「『語りやすくはなっているが、実際家事・育児に積極的にかかわっていない』と言えるでしょう」――。
こうした指摘はもっともです。
総務省の社会生活基本調査によると、6歳未満の子どもがいる共働き世帯の育児時間(1日平均)は、16年時点で夫は47分。10年で18分増えましたが、一方の妻は16年時点で167分です。夫は妻の3分の1にも満たないのが現状です。家事時間も含めると、格差は拡大します。
全体でみれば、父親の家事や育児への関わりが進んでいません。ここから考えると、女性に比べ、男性の方が家庭への関わりに濃淡があると言えます。
父親が家事や育児について語りづらい背景には、さまざまな理由があるのでしょう。ただ、この関わりの濃淡が、語りづらい要因の一つとなっているのかもしれません。
例えば、共働き世帯で、仕事に大きな制限をかけて家庭に関わっている父親と、妻が専業主婦の家庭で、稼ぐことへの期待が大きいことに加えて家事や育児への関わりを求められている父親とでは、モヤモヤの質が異なるでしょう。葛藤の中身が異なっているとわかれば、そもそも語ろうという意識が起きないことも考えられます。語りたい相手とは、往々にして、同じ思いを共有できる人だからです。こうした時に、「語りづらい」と感じることもあるでしょう。
夫婦で家事や育児にどう関わるかは、家庭の実情によってケース・バイ・ケースです。正解はありません。ただ、共働き世帯が増えていることもあって、父親の家事や育児への関わりが、より濃密になっていく傾向は続きそうです。そうした時に、より同じ境遇の人が増えてくれば、体験やモヤモヤもより共有しやすく、語りやすくなっていくのかもしれません。
記事に関する感想をお寄せください。母親を子育ての主体とみなす「母性神話」というキーワードでも、モヤモヤや体験を募ります。こうした「母性神話」は根強く残っていますが、「出産と母乳での授乳以外は父親もできる」といった考え方も、少しずつ広まってきました。みなさんはどう思いますか?
いずれも連絡先を明記のうえ、メール(seikatsu@asahi.com)、ファクス(03・5540・7354)、または郵便(〒104・8011=住所不要)で、朝日新聞文化くらし報道部「父親のモヤモヤ」係へお寄せください。
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