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失われたら座礁……関門海峡「海猿」だけじゃない海を守る精鋭たち

導灯のメンテナンスをする人々=7月25日、北九州市門司区、山田菜の花撮影
導灯のメンテナンスをする人々=7月25日、北九州市門司区、山田菜の花撮影 出典: 朝日新聞

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海難救助のため、ヘリから海中へ飛び込む。そんな派手な救助はしないけれど、海の安全には欠かせない海上保安官がいます。関門海峡で、ブイなどの航路標識を整備したり、気象データを取ったり。地道な作業を重ねる人々を追いました。(朝日新聞下関支局記者・山田菜の花)

【動画】関門航路に設置されたブイや導灯の点検を行う人たち=山田菜の花撮影

支柱にしがみつき点検

ゆあーん、ゆよーん。関門海峡に浮かぶ真っ赤なブイが、波に大きく揺れる。そこへヘルメット姿の門司海上保安部(北九州市)の職員2人が船から飛び乗った。手すりはない。海面から高さ7メートルほどのブイの支柱にしがみつき、1人ははしごを上り、もう1人はマンホールのようなふたを開け底部に潜っていった。

船が通る海の道「関門航路」の両端を示す、ブイの定期点検。上部には夜間点滅するためのLEDライトやソーラーパネルといった機器があり、底部にはバッテリーなどが搭載されている。およそ15分後、船に戻った2人は「異常ありませんでした」と日焼けした顔をほころばせた。

関門航路には、東の部埼(へさき)灯台と西の六連島(むつれしま)灯台との間に、ブイが33基設置されている。失われれば船が航路を外れて浅瀬に座礁してしまうので、台風や船の衝突で破損していないか、こまめなチェックが欠かせない。海底に鎖でつないだ重りを沈めて固定しているが、関門海峡は潮流が最速20キロ前後と速く、鎖が摩耗しやすいので4年に1度は交換するという。

関門海峡のブイを点検する門司海上保安部の職員ら=8月7日、関門海峡、山田菜の花撮影
関門海峡のブイを点検する門司海上保安部の職員ら=8月7日、関門海峡、山田菜の花撮影 出典: 朝日新聞

進化めざましいブイ

門司海保がメンテナンスを担う航路標識は地上にもある。港の位置などを示す灯台、2基1組の明かりで安全なルートを船に教える導灯といったものも含めると、全部で180カ所ほどに上る。全国71ある海上保安部の中で最多だ。

次長の前忍さん(52)は「LEDの登場で、かなり省力化できるようになりました」と話す。かつて明かりに使っていた電球は耐用時間が9千時間。年に1回は交換しなければならなかった。「LEDなら4万時間。4、5年は持ちます」

特にブイの進化はめざましい。関門航路では、位置を示すGPS機能の時計を活用して、すべてのブイが3秒に1回、一斉に光るよう設計されている。

灯台のメンテナンスをする門司海上保安部の職員ら=8月7日、山口県下関市、山田菜の花撮影
灯台のメンテナンスをする門司海上保安部の職員ら=8月7日、山口県下関市、山田菜の花撮影 出典: 朝日新聞

地道な作業で安全守る精鋭たち

風向や風速、波の高さが測れる装置の搭載も進んでいる。小野正虎さん(41)は海上保安庁の技術キャリアとして、この開発に関わった。「陸上で観測したデータと実際の海の状況は異なることがある。航行する船に少しでも役立つ情報提供ができればと思いました」

関門航路では2014年から、S字に蛇行する東西の入り口2基に設置している。関門海峡は複雑な地形と潮流の速さから、大型船は必ず水先人を乗せて航行しなければならない。

水先人は沖合で小型船から縄ばしごなどで大型船に乗り込むが、このときに重要なのが風向と風速のデータだ。高さ十数メートルを上り下りすることもあり、風にあおられて落下すると命に関わる。風のデータがあれば、風下を選んで上り下りできる。「水先人から助かっていると言われるとうれしい」

導灯の黄色い光は夜間でもよく見える。2基1組の明かりが縦一直線に見えるルートを通れば、関門海峡を安全に航行できる=9月24日、山口県下関市、山田菜の花撮影
導灯の黄色い光は夜間でもよく見える。2基1組の明かりが縦一直線に見えるルートを通れば、関門海峡を安全に航行できる=9月24日、山口県下関市、山田菜の花撮影

今春、第7管区海上保安本部の関門海峡海上交通センターに着任した。航行する船の動きを見守る部署だ。「現場を知ってもっと役立つ仕組みやシステムを提案できるようにしたい」

海上保安官といえば、漫画「海猿」のように、海難救助を担う潜水士を真っ先にイメージする人も多いかもしれない。でもそんな大事故に至らないよう、地道な作業を通じて海の安全を守る人たちもいるのだ。

     ◇

<関門海峡>本州側の山口県下関市と九州側の北九州市門司区を隔てる海域。船が通る海の道「関門航路」が東西約50キロに渡って整備されている。S字に屈曲しており、最も狭い「早鞆瀬戸」は航路幅約500メートルで、潮流は最速時速20キロ前後にもなる難所。東アジアなどと国内の主要港湾を結び、漁船を含めると1日に約1千隻が航行する。

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