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「世界のKitchenから」を生み出すキッチン マンションの一室を賃貸

「世界のKitchenから」の試作の場となっているのが、都内にあるマンションの一室です。

都内にあるマンションの一室で試作をするメンバーたち
都内にあるマンションの一室で試作をするメンバーたち 出典: 動画「キリン 世界のKitchenから 私たちのキッチン編」より

目次

 これまで30商品以上を展開してきた「世界のKitchenから」(セカキチ)シリーズ。夏の定番となった「ソルティライチ」をはじめ、いずれも海外の家庭料理を現地で取材してから作っています。その試作の場となっているのが、都内にあるマンションの一室です。セカキチが出来るまでを取材しました。

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キリン 世界のKitchenから 私たちのキッチン編 出典: YouTube

立ち上げ時のメンバーに聞きました


 セカキチ企画が立ち上がったのは2006年。食品をめぐる不祥事や事件が相次ぎ、メーカーに対する消費者の目が厳しくなっていた時期でした。

 そんな中で、若手女性社員のアイデアをもとに「つくり手の顔が見える『自家製』の商品」「女性の消費者心理から発想した商品」の2つをコンセプトに進められました。

 「トクホ商品が出て『健康のために多少高くても買う』という流れが出来つつあったなかで、おいしさの高付加価値があれば『嗜好』に対しても購入していただけるのではないかと考えました」

 そう話すのは、立ち上げ時のメンバーで、現在はキリンビバレッジのマーケティング部でブランドマネージャーを務める菅谷恵子さんです。

ブランドマネージャーを務める菅谷恵子さん(左から2人目)
ブランドマネージャーを務める菅谷恵子さん(左から2人目) 出典: キリンビバレッジ提供

世界の家庭を現地取材


 従来の商品開発は、細かく市場を分析し、商品カテゴリーの「どのポジションを狙うか」を決めることから始めますが、セカキチの場合は「こういうものを作りたい」「この素材を使いたい」からスタートしました。

 世界中の家庭や市場、農園などを現地取材して、そこから持ち帰ったレシピや素材を元にコンセプトを決め、キッチンで試作。そこから大量生産に合う原料やレシピ考え、ラインに落とし込む手法をとっています。

 世界を旅して、家庭を見て、土地のものを大切にする。そんな現地取材には、2人1組で行くことが多く、約1週間かけます。

 事前にコーディネートしてもらった上で10軒ほど家庭を回り、実際に料理を作ってもらいながら話を聞き、市場を巡って素材探し。

 「ただレシピを覚えるのではなく、そこにしかない素材、風土や歴史を知って感じることを大切にしています」と菅谷さん。

取材で家庭を訪れた時の様子 photo by Yoko Takahashi
取材で家庭を訪れた時の様子 photo by Yoko Takahashi 出典: キリンビバレッジ提供

世界のKitchenからのキッチン


 帰国後は「取材記」として、学んだレシピや現地での発見をまとめてメンバーに共有し、具体的な商品開発に着手します。

 そこで活用されているのが、東京都中野区の本社から車で10分ほどの距離にあるマンションの一室。

 かつては担当者個人の自宅キッチンで試作し、タッパーで会社に持ち寄っていましたが、2016年にマンションを賃貸契約。試作の方法を共有し、作りながらその場で意見交換ができるようになりました。

 「『世界のKitchenから』というブランド名には、世界のキッチンから学んできたことを私たちの手でお届けしたいという思いを込めています。スタート当初から会社に『キッチンを作ってほしい』と頼んでいて、10年目に実現しました」

都内にあるマンションの一室で試作をするメンバーたち
都内にあるマンションの一室で試作をするメンバーたち 出典: 動画「キリン 世界のKitchenから 私たちのキッチン編」より

ソルティライチが貢献


 通常とは異なる開発手法や、キッチン設置を可能にしているのは、ブランドの認知度と売り上げがあるからこそ。それを支えている商品が2011年7月に発売された「ソルティライチ」です。

 もとになっているのは、タイ北部にある都市チェンマイを取材して学んできた「ローイゲーオ」。旬の果物を塩につけて下ごしらえし、氷と自家製シロップで作る冷たいデザートです。

これが「ローイゲーオ」 photo by Yoko Takahashi
これが「ローイゲーオ」 photo by Yoko Takahashi 出典: キリンビバレッジ提供


 現地ではアロエやイチゴなどを使ったものを食べてきましたが、ライチはありませんでした。「学んできたレシピそのものではなく、そこから得たことを自分たちで深掘りして商品化しているんです」と菅谷さん。

 東日本大震災の直後で、節電による暑さ対策が取りざたされる中、それまでの「ものづくり」を打ち出したアピールから、「おいしく熱中症対策」に切り替えたところ人気に。

 今では夏の定番商品となり、2018年は販売本数が1億本を超えるなど、大ヒット商品となりました。

世界のKitchenを代表する商品「ソルティライチ」。左から2011年の発売当初、2017年、2018年のパッケージ
世界のKitchenを代表する商品「ソルティライチ」。左から2011年の発売当初、2017年、2018年のパッケージ 出典: キリンビバレッジ提供

リニューアルにもこだわり


 「リニューアルのためのリニューアルはしない」というのも、この商品の特徴です。

 通常、春秋に行われる店頭での商品入れ替えに合わせてリニューアルを実施しますが、最近のソルティライチには関しては2017年と2018年にパッケージをわずかにリニューアルしたのみ。2019年は何も変えていません。

 調査の結果、これまでの味を支持する意見が多かったことが理由だそうで、「こちらの都合でリニューアルしてはいけないし、味を変えなくても必要とされ続けることが大事です」。

 そんな世界のKitchenからシリーズの今後について、菅谷さんはこう話します。

 「おいしいだけでなく、飲んでいて料理の音や世界中のお母さんの姿が思い浮かぶ、そんな気分になっていただける商品を中野のキッチンからお届けしたいです」

 ◇ ◇ ◇

 商品開発のために訪れた国々の街の風景、家庭のキッチン、料理の写真などをまとめた写真集『世界のキッチンから ~商品開発と写真の関係~』(美術出版社)も出版されました。B5変型判で320ページ、税抜き2900円。

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