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#41 #withyouインタビュー
ゆうたろうさん、マスクなしで外出できなかった過去「いいね」救いに
中学1年生の後半から、不登校だったゆうたろうさん。当時の思いと、救いになった言葉とは。
「学校に行かなきゃいけないっていう気持ちがわからなくなった」。モデルや俳優として活躍するゆうたろうさん(21)は中学1年生の後半から、家で過ごすようになりました。今はメイクやファッションなど、自分の「好き」を発信していますが、「マスクがないと外出できなかった」という過去を明かします。「ここにいていいんだって思える環境をずっと探していた」という当時の思いと、救われた言葉を聞きました。
<ゆうたろう>
1998年生まれの21歳。広島県出身。中学時代に不登校を経験。中学卒業後、大阪で古着ショップ「サントニブンノイチ」の店員として人気を集める。2016年にモデルデビュー。近年は俳優としても活躍し、映画「かぐや様は告らせたい」(公開中)、「殺さない彼と死なない彼女」(2019年11月公開)に出演。
不登校になった当初、周囲は「何かあったの?」「体調が悪い?」と心配したそうです。それでも、「理由はなくて、なんか行けなくなっちゃった」と、言葉にできない当時の心境を明かしました。
「強いて言えば」と振り返るのは、学校の中での「男子のノリ」。常に3~4人のグループで行動する中で、「ノリに合わせなかったらハブられる」「このグループじゃなきゃ自分は強くいられない」という考えでしんどくなったといいます。
「それで、『学校に行っても得るものがない』って思ったんでしょうね」
先生からの「行事くらいは来てほしい」という連絡から、学校に行くのは1年に2~3回のペース。体育祭や合唱コンクールを見学したそうです。
不登校になってから中学校の卒業まで、多くの時間は家の中で過ごしました。閉じこもる生活で、心の癒やしになったのは音楽だったといいます。
「『RADWIMPS』が好きで、新譜が出たら買いに行って、ひとりで布団にくるまってイヤフォンで聴いて、歌詞を読むのが幸せでした。(作詞作曲・ボーカルの)野田洋次郎さんって、人の痛みがわかるというか、寄り添ってくれるんですよね」
身近にあったのは、読書家の父が集めた本。暗い内容の小説の世界に浸り、「セリフの一言ですごく救われることもありました」。
「音楽や本とか、『生きていないもの』に支えられた」と表現するゆうたろうさん。それは、人間関係で知らず知らずのうちにすり減っていた経験があるからこそ。「敵も味方もないものに、どこかすがりたかったんだと思う」と振り返ります。
「マスクしないと外に出られない、家族がいないと外に出られない」。中学生の頃、そんな状況だったゆうたろうさんをあたたかく見守ったのは、家族でした。
姉2人、妹1人の4人きょうだい。土日、家族と行く買い物が唯一の外出であり、楽しみだったと話します。
特にありがたかったのは、「引きこもっていた時も、お母さんは何も言わなかったんです」。
今でも忘れられない母の言葉があります。
「ゆうたろうはゆうたろうだから。あなたの人生だから」
その言葉で気持ちが楽になったというゆうたろうさん。「『ここにいていいんだ』って思える環境をずっと探していたけど、根っこの根っこは家族だと思うんです。今でも行き詰まったり、考え事ができたりしたときは、家族に会いに行きます」
少しずつ少しずつ、自分の居場所を獲得していったゆうたろうさん。SNSもそのひとつだといい、番組の終盤には、10代の子どもたちに向けて「発信者になって」と呼びかけました。
「もともと僕は服やメイクがすごく好きだったけど、周りにどう思われるか不安だった。でもSNSを始めて、最初はどうでもいいツイートだったけど、『今日の服』とか投稿できるようになって、『いいね』が増えたときに、すごく認められた感じがしたんです」
「自分は間違ってなかった」と思わせてくれたのが、誰かもわからない見ず知らずの人の、ひとつの「いいね」でした。小さな発信の積み重ねが、自己肯定感に繫がりました。
今ではゆうたろうさんのSNSには、10代のフォロワーなどから相談も集まります。その内容は多岐にわたり、「今は悩んでいる子が本当に多い」とかみしめます。自身の経験からも、「誰かに共有することで、気持ちがやわらいだり、発散できたりする」と語ります。
「送る先は僕でもいい。発信して、自分の中でとどめることはしないでほしい」
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