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地元

地元自慢は「派手な成人式」だけ?北九州の女子高生が考えた活性化策

派手な衣装で会場に来た新成人たち=2018年1月7日、北九州市小倉北区、金子淳撮影
派手な衣装で会場に来た新成人たち=2018年1月7日、北九州市小倉北区、金子淳撮影 出典: 朝日新聞

目次

高校の友達との話で出てくるのは「スタバ」や「ダイソー」など、新しいものを次々に生み出していく大企業の商品ばかり。こんな話題で盛り上がる度、暗い気持ちになります。かつては人口100万人を超えていた北九州市ですが、今はシャッター通りになった商店街が少なくありません。もし大学を出て就活する時、故郷での就職を考えるだろうか。派手な成人式と今はもう無いスペースワールド……それだけがこの街の魅力なの? 「そこそこの都会」に住む女子高生の私が「地元で就職したくなるか」という視点で、地方を見つめ直してみました。(高校生記者・梶木瞳)

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「チェーン店は繁盛、地元の商店街は……」

私は現在、高校3年生。お嬢様芸人の、たかまつななさんが運営する「笑下村塾(https://www.shoukasonjuku.com/)」の高校生記者として活動しています。

北九州市は、かつて人口100万人を超えていた九州一の都市でした。でも、2019年8月現在の人口は約94万人で、企業の数も年々、減っています。

私の周りの友達の多くは地元での就職を望んでおらず、海外との関わりが強い企業に就職したいと思っている人が少なくありません。

正直、同世代として、外資系の企業や、大手企業で働くことを望む気持ちは理解できます。今では、九州一番の都市になった福岡市へも新幹線で15分ほどで着くこともあり、北九州市の活気は年々失われているのが実情です。

中小企業庁が2019年3月に発表した「平成30年度商店街実態調査」では、商店街振興組合などに加盟する商店街の中で、空き店舗数が「増えた」と答えたのは31.9%にのぼり、「減った」と答えた11.4%よりも多くなっています。

今や商店街の衰退は全国でも珍しくありませんが、政令指定都市として「そこそこの都会」だった北九州市だからこそ、活気が失われていく変化を住んでいる人間に強く印象付けているのかもしれません。

同じく中小企業庁が発表した報告書によると、商店街の抱える問題は主なものだけで「経営者の高齢化による後継問題」や「集客力が高い・話題性のある店舗/業種が少ない又はない」など様々です。それらの多くが地域が抱える問題と密接にかかわっている状況が見えきます。
 
 

「たしかに、スタバの新商品は映える」

商店街にあった昔ながらの商店に変わって進出してきたのが、スタバやダイソーなど大企業のお店です。

たしかに、スタバの新商品はおいしいだけでなくインスタ映えするし、学校で使うポーチや文房具など可愛くて安く買えるダイソーは高校生のお財布に優しいです。しかも、次々に新商品が生まれるため飽きることなく定期的に通いたくなります。

北九州市だけでスタバの数は7店舗、ダイソーは36店舗にのぼります。さらに、利用者数の多い小倉駅周辺だけでスタバは3店舗もあります(2019年7月18日現在)。
小倉駅をよく利用する私にとって交通の便のいい場所にスタバやダイソーがあることはとても魅力的です。

と同時に、気がつけば、私の街には地元に根付いたお店がほとんどなくなっていることに気づかされます。

ここ数年、スタバやダイソーに限らずコンビニエンスストアや大手スーパーが次々と出店する一方で、地元に根付いたお店が多かった商店街にはほとんど人がおらず、店のシャッターは下りて「売り物件」と書かれた貼り紙を貼ったお店が並んでいる状況です。

2018年5月、隣の県である佐賀県発のあるニュースが話題を集めました。

佐賀県東部にある上峰町にある「イオン上峰店」の閉店が発表されたのです。周辺にはイオンがあるから移り住んだ人が多い団地があることも伝えられました。人口規模の違う自治体での話ですが、寂れていく商店街と、自分たちが通う全国チェーン店の存在感を考えると、とても人ごとには思えませんでした。

ビジネスとして競争の結果だからしょうがないのでしょうか? 地元で生まれ育った人間として、スタバに通いながらも、衰退の一途をたどる地元の商店街が活気を取り戻すことができないか、考えるようになりました。

関連記事:「イオンがあるから転居も」そのイオンが閉鎖へ(2018年5月23日朝日新聞デジタル)
閉店を迎え、見守る客に向かって頭を下げる従業員たち=2019年2月28日午後8時25分、佐賀県上峰町のイオン上峰店
閉店を迎え、見守る客に向かって頭を下げる従業員たち=2019年2月28日午後8時25分、佐賀県上峰町のイオン上峰店 出典: 朝日新聞

「ソーシャルビジネスで商店街を活性化」

「地域に根付いた商店街の活気が戻るにはどうすればいいか?」。私は友達と一緒に、学校の授業でビジネスプランに取り組み、その中で「ソーシャルビジネス」という案が出てきました。

「ソーシャルビジネス」とは、貧困、環境などの社会問題の解決するための取り組みを、持続可能な事業として取り組むこと。簡単にいうと企業とボランティア団体などのメリットを合わせ持ったビジネスを指します。ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏が中心的に世界に広めていったビジネスとしても知られています。

表参道にも店舗があるベン&ジェリーズは、アイスクリームの販売を通じて地球環境保護を訴える活動に取り組んでいます。

私たちが注目したのは、北九州市が全国でも珍しい環境未来都市に指定されていることです。福岡市と比べて影が薄い存在であることは否定できない北九州市。数少ない「個性」「キャラ」として、環境というジャンルは活用できると思いました。

商店街の中でゴミを出さないことを前提とした「zero waste」の商店街にする。全国チェーン店と違い、包装や什器などで自分たちなりの工夫ができる商店街の強みを生かせるのではないかと考えました。

環境へのこだわりと同時に、「ソーシャルビジネス」の店舗を数ケ月ごとに交代させることも必要だと考えました。商店街での聞き取り調査で、多くのお店が時代の変化についていけない難しさを感じていたことが分かったからです。

北九州市の環境政策をPRするゆるキャラ「ていたん」
北九州市の環境政策をPRするゆるキャラ「ていたん」 出典: 朝日新聞

「なぜ私は地元を活性化させたいのか」

商店街の再生を調べる中で、あらためて、なぜ私は地元を活性化させたいのか考えました。

かつて日本には大規模小売店舗法という法律がありました。1974年に施行されたこの法律は、開店日、売り場面積、閉店時刻、年間休業実数を周辺地域の商業の事情を考慮し調整するために設けられました。この法律によって商店街の多くは大型スーパーに客を奪われる心配がほとんどありませんした。

しかし、1990年の日米構造協議でアメリカはこの法律を強く批判し、2000年に廃止されました。そして、規制緩和の結果生まれた2000年施行の大規模小売店舗立地法によって、大型スーパーの進出が相次ぎ、商店街の衰退を招いたと言われています。

確かに、地方の商店街は、新商品が少なく、若者が行きたいと思えるスポットにはなりにくい現実があります。

しかし、商店街を単なる買い物の場所だけではないと考えると、その大切さが見えてきます。

全国的な問題になっている高齢者の交通事故、ひきこもりや孤独死などコミュニティーからの断絶。もちろん商店街だけですべてが解決できるわけではありませんが、日本が直面している問題を解く糸口の土台として、時代をかけて築いてきたコミュニティーとしての商店街の生かし方はあるのではないでしょうか。

これから大学に進学するとして、就職を考えた時、私自身、「そこそこの都会」である現在の北九州市を就職の第一希望に選ぶのかは微妙です。そんな私だから、「就職」という視点で地元を見つめ直すことは、地方の魅力を引き出すきっかけになると考えています。

そのためにも、スタバやダイソーに頼らない街づくりについてこれからも考えていきたいと思っています。

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