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お金と仕事

さんからの取材リクエスト

どうしたら安心は得られるの?



26歳介護士ブロガー、月収100万円でも生活費8万3000円の理由

派遣の介護士として働く傍ら、ブログの月収が100万円を超える月もあるという深井竜次さん
派遣の介護士として働く傍ら、ブログの月収が100万円を超える月もあるという深井竜次さん

目次

正社員より身分が不安定といわれる「派遣」という働き方をあえて選び、職場での仕事を「取材」につなげている26歳の介護士ブロガーがいます。ブログの収入は100万円を超える月も。記者生活30年、「社会保障」の分野を20年近く取材してきた朝日新聞の浜田陽太郎編集委員(53)が、注目したのはモノ書きとしての「稼ぐ力」でした。

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53歳が注目する26歳ブロガー

文章を書いて稼ぐ。いつの時代も難しいものです。

私はもうかれこれ30年近く新聞社で記者をしてきました。でも組織の看板なく、自分の書くものの原稿料だけで暮らしていけるかというと自信がありません。はっきりいって不安です。

そんな迷える53歳のサラリーマン記者が注目しているブロガーがいます。26歳の介護士、深井竜次さんです。通称、たんたん。

島根の高齢者施設(老人保健施設)で月8回、午後5時から翌日の午前10時までの夜勤をこなして月給が15万円ほど。一方、ブログに貼った広告から得られる、いわゆるアフィリエイトの収入が月間でコンスタントに数十万円、100万円を超える月もあります。

深井さんは「車とかモノを買うことに喜びを見いだせない。欲しいものがないのは強み」といいます。趣味はカードゲームで、これは「一緒に遊べる仲のよい友だちさえいれば楽しめる」。
深井さんは「車とかモノを買うことに喜びを見いだせない。欲しいものがないのは強み」といいます。趣味はカードゲームで、これは「一緒に遊べる仲のよい友だちさえいれば楽しめる」。
【関連】深井さんが運営するサイト「介護士働き方コム」

「稼ぐ力」でかなわない

もちろん、新聞記者が、アフィリエイターと同じことをしたら「ステマ」として糾弾されるので同列には論じられません。それでも、モノ書きとしての「稼ぐ力」をヨーイドンで競ったら、深井さんにとてもかないそうにない。

深井さんの場合、ブログのマーケットが明確で、かつ伸びているのが大きいですね。高齢化社会なので、介護に携わる人は200万人近くいて、今後も増えていきます。

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2000年に介護保険がスタートしてから、介護職員の数は16年間で3.3倍に。現在は200万人近くいて、今後も増やし続ける必要がある
2000年に介護保険がスタートしてから、介護職員の数は16年間で3.3倍に。現在は200万人近くいて、今後も増やし続ける必要がある 出典: 厚生労働省のサイトから

月の生活費は8万3000円

もうひとつ、ブログを読んでいていつも感心するのは、深井さんの「節約する力」です。

月の出費はだいたいこんな感じだそうです。

・家賃:30000円(駐車場代込み)
・食費:15000円
・書籍:14000円
・車関係(保険・ガソリン):10000円
・通信費:5000円
・光熱水費:7000円
・コンタクト:2000円
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合計で約8万3000円程度だそうです。彼女と同棲しているので家賃などは折半。「家賃など大きな固定費を減らす」のがポイントとのこと。

節約は大変そうだし、お金が入るとつい使っちゃいそうですよね。でも、深井さんは節約して暮らす意義は大いにあるといいます。「少ないお金で生活できるのは大きなリスクヘッジになる」からです。

人間は生活レベルを落とすのはストレスが大きい。若いころは低い生活水準への耐性をつけ、どんなところでも生きていける自信をつけることがオススメなのだと。

書籍費は「投資」、1万4000円

地方で暮らすには車は必須だが、軽自動車で十分。「高い車は欲しくない」のが強み
地方で暮らすには車は必須だが、軽自動車で十分。「高い車は欲しくない」のが強み 出典: 深井さん提供

お金の使い方にもポリシーがあります。気づきましたか? 書籍費が1万4000円と高いことに。月に10冊は本を読むのだそうです。「消費と投資を区別してお金を使う」というのがポイントです。

【投資】書籍代、機材購入、セミナー費、教材の購入、先駆者に会いに行く等
【消費】飲み代、美容院、衣類、通信費、飲み物、移動代、車の購入等

深井さんが勉強したアフィリエイトや広告の参考書
深井さんが勉強したアフィリエイトや広告の参考書

53歳がグッときた26歳の生き方

いつもは介護現場での働き方についての記事をブログに書いている深井さんですが今月、自分の「生き方」を振り返った記事を書きました。

【真実】チャンスを掴むためには継続的な努力とレールから外れることです|介護士働き方コム

深井さんは保育の専門学校卒。4年前に無資格で介護に転身しましたが、月給は手取り15万円もいかず、「このままでは結婚して、子どもを育てるような生活は難しい。やばいと感じていた」と当時のことを話していました。その危機感から行動を起こしたのです。

そのなかで、53歳の私にもグッとくるポイントがありました。

フルタイムで働いても月給15万円では希望が持てなかった
フルタイムで働いても月給15万円では希望が持てなかった 出典:PIXTA

(1)レールを外れるリスクをとる

深井さんの場合は、あえて正社員より身分が不安定といわれる「派遣」という働き方を選び、住み慣れた地元を離れ、昨年から今年にかけて期間限定で東京に出ました。

自分のブログのターゲットを介護士に絞り込み、その働き方について「取材」をするためです。収入減を覚悟で介護職員として働く日数を減らし、ブログを書く時間を確保したのもリスクをとったということでしょう。

(2)ずらした努力を続ける

介護士として頑張って働いている人はたくさんいます。深井さんはフルタイムで働くのが苦手。

ならば「文章を書く」ことを頑張り、自分を差別化する道を選びました。

ブログはここ3年間、ほぼ毎日更新。以前はブログを書くのは大変で時間がかかっていたけれど、最近は慣れてきて速く楽になってきているそうです。

ブログからの収入は、2年前は月2万円だったのが、1年前に30万円になり、いまは100万円を超えることも珍しくなくなりました。


一つの仕事からしか収入がないと不安になる。だから副業
一つの仕事からしか収入がないと不安になる。だから副業 出典:PIXTA

(3)「完璧主義」は自信のなさのあらわれ

大げさにいえば「横っ面を張られた」感じになったのがこのメッセージです。

まずはどんどん行動してアウトプットしないと何も変わらない。カッコつけたりプライドが残っていて動けない人が多い。完璧主義というけど、それは単に自信のなさのあらわれ。ごちゃごちゃ言わずまずは世の中に出すべきだ

単に自信がない……。それって、(私を含めた)多くの中高年にあてはまるかも……。

「完璧主義」に陥って動けないのは自信のなさのあらわれ
「完璧主義」に陥って動けないのは自信のなさのあらわれ 出典:PIXTA

「働き方を開く」ということ

深井さんに初めて話を聞いたとき、印象に残った言葉があります。「働き方を開いた方がいい」というのです。どういう意味でしょうか?

たとえば介護の仕事だけで稼がないといけないと思うと、プレッシャーがかかります。であれば、何らかの副業を持った方がいい。他に少しでも稼ぐ方法があれば安心できる。

副業は「それに時間を割いても苦痛じゃない趣味の延長線がいい」とのこと。手芸でもマージャンでも絵画でも何でもいい。介護職なら趣味をお年寄りといっしょに楽しめば喜ばれて介護の質も上がります。

今は趣味で楽しむカードゲームも、いずれ仕事に役立つかも?
今は趣味で楽しむカードゲームも、いずれ仕事に役立つかも? 出典: 深井さん提供

みんなと同じ道は安心か?

もう一つ、「仕事を開く」ためにオススメなのはブログや書くことだそうです。

たとえアフィリエイトでマネタイズできなくても「こんなことやってるんだよ」と他人に見せることができて、自分個人のブランディングにつながるからです。

みんなと同じ道は安心かもしれないけれど、世間からの評価も期待も横並びになりやすい。それで本当の安心を得られますか? 煎じ詰めると、これが深井さんからの問いです。とても深いと思います。

ブログは毎日更新。ツイッターで読者の勘どころを探り、テーマを決める
ブログは毎日更新。ツイッターで読者の勘どころを探り、テーマを決める 出典:PIXTA

「老後2000万円不足」と不安症候群

今年6月に「老後の資金が2000万円不足する」という事例を出した金融庁の報告書が「炎上」しました。

しかし考えてみると、いくらお金があっても「本当の安心」とはちょっと違うのではないでしょうか。

これからの世の中、どんな大企業に勤めていても安泰ということはありません。じゃあ不安から脱するために、何をすればいいのか。

一人ひとりが自分の得意分野を考えて、周囲とはちょっと方向性をずらして努力をするというやり方は、本当に大事だと思います。

明るい未来を想い、手を動かす

節約生活で自炊は基本。得意料理はパエリア
節約生活で自炊は基本。得意料理はパエリア 出典: 深井さん提供

「稼げるかはわからなかったですけど、モチベーションをあげて明るい未来を想定して手を動かしました」と深井さんは書きました。

自分で汗をかきながら得た学びがあって、初めてこういう借り物ではない文章が書けるのだと思います。年代的には自分の息子ともいえる深井さんが書く記事に、私が多くを学ぶ理由です。

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