MENU CLOSE

エンタメ

ジェームス・ブラウンを怒らせ、オアシスを待たせた サマソニの20年

サマソニでのハプニングをめぐり説教をしたというジェームス・ブラウン=ロイター
サマソニでのハプニングをめぐり説教をしたというジェームス・ブラウン=ロイター

目次

大御所のジェームス・ブラウンを怒らせ、気分屋のオアシスを待たせた……。今年20周年を迎える夏の都市型ロックフェス「サマーソニック」(8月16~18日に東京・大阪会場で同時開催)では、様々なハプニングがありました。主催するクリエイティブマンプロダクションの代表取締役、清水直樹さん(54)は、そんなアーティストの素顔に向き合ってきた一人です。ビヨンセの神々しさ、フレディ・マーキュリーとのシンクロ。サマソニ伝説のステージについて聞きました。(朝日新聞文化くらし報道部記者・坂本真子)

【PR】「あの時、学校でR-1飲んでたね」

「最初からB'zにオファーした」

「サマーソニック2019」は、10周年以来10年ぶりに3日間にわたって開催されます。16日の東京会場、18日の大阪会場のヘッドライナーはB'zが務めます。サマソニで日本人がヘッドライナーを務めるのは初めてです。

「20周年に向けて何か新しいことをやろうと1年前から考えていて、洋楽のフェスとしてかたくなに、ヘッドライナーは洋楽、というのを守ってきましたが、時代も考えて、20周年を機に挑戦しようと。じゃあ誰だろうと考え、実績を考えたときに、B'zしかいない。最初からB'zにオファーして、快諾していただきました」

今回、洋楽のヘッドライナーは、RED HOT CHILI PEPPERS(16日に大阪会場、17日に東京会場)、THE CHAINSMOKERS(17日に大阪会場、18日に東京会場)が務めます。海外のミュージシャンのブッキングは、1~2年前から準備を始めるそうです。

「いま、世界中で夏フェスがあって、必ず週末に行われるので、ヘッドライナー級のアーティストは取り合いなんです。1~2年前からみんながオファーして、どこが勝ち取るか、というものなので、大変しんどいですね。2年ぐらい前から交渉しつつ、その通りにいかないことが多いので、すぐにまた切り替えて次に、という、その繰り返しです」

今年は、伝説的な野外フェス、ウッドストックも50周年。米国で準備が進められていましたが、当初は、サマソニと全く同じ日程で発表されていました。

「ただ、サマソニよりも後で企画されたらしく、開催を発表したのが今年1月だったんですね。僕らは1年以上前から動いていたので、今回は後れを取らず、いいアーティストを前もってブッキングできた。それが非常に大きな勝因だと思います」

ウッドストックは結局、中止になりました。

「いくらウッドストックというビッグネームで動いても、フェスは最低でも1年以上かけて、ブッキングも場所もしっかり押さえていかないと成功しない。これは非常にいい例だと思います」

クリエイティブマンプロダクションの代表取締役、清水直樹さんは「ヘッドライナー級のアーティストは取り合いなんです。1~2年前からみんながオファーして、どこが勝ち取るか、というものなので、大変しんどいですね」と話す=西田裕樹撮影
クリエイティブマンプロダクションの代表取締役、清水直樹さんは「ヘッドライナー級のアーティストは取り合いなんです。1~2年前からみんながオファーして、どこが勝ち取るか、というものなので、大変しんどいですね」と話す=西田裕樹撮影 出典: 朝日新聞

「キャンプは苦手」から都市型フェス

日本の野外ロックフェスは、1997年に始まったフジロックフェスティバルが先駆けとなり、1999年にライジングサンロックフェスティバル、2000年にロックインジャパンフェスティバルとサマソニが誕生しました。

中でもサマソニは、洋楽が中心で、都心から日帰りで気軽に参加できる都市型フェス、という点で他のフェスとは一線を画すものでした。

「フジロックは、主催のスマッシュの日高さんがキャンプフェスを好きで、それを夢見て作ったフェス。僕はキャンプとかは苦手で、どちらかというと、行って帰ってきて、という誰でも簡単に行けるフェスが好き。海外でもそういうフェスにばかり行ったんですね。自分でやるのも、そういうフェスが性に合っていると思ったので。ただ、地の利がよくて行きやすい場所を考えたら、東京だけでなく大阪でもあった方が皆が参加しやすいだろうということで、日本で初めて東西の同時開催で、翌日アーティストを入れ替える、という形にトライしたんです」

東京・大阪会場で入れ替える「巡回型」は、出演者にとっても魅力的な話だったようです。

「海外からわざわざ日本に来たら、1ショーだけで帰りたくないわけですよ。2ショーをやる方が効率がいい。僕らも、ステージをいくつも作ったら、1日で終わるより、できるだけ長くやる方がいいじゃないですか。それに気がついて、20年も続けられたので、僕は理にかなっていると思っていますね」

2000年、第1回のサマソニは、富士急ハイランドコニファーフォレスト(東京)と、WTCオープンエアスタジアム(大阪)で2日間、開催されました。

ヘッドライナーはグリーン・デイとジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン。ミューズやコールドプレイといった勢いのある若手バンドも出演しました。ただ、反省点も多かったそうです。

「渋滞があると都心から3~4時間かかって、都市型と言えるのか、という疑問が生まれたのと、キャパが2万人でいっぱいなんですよ。次に3万、4万と見据えて考えたら、他の場所を考えなければいけない。1年目が終わってから関東近郊で探して、思いついたのが、千葉のマリンスタジアムと幕張メッセを同時に借りて、両方を行き来するスタイルです。それまでは誰もやっていなかったので、翌年の2001年から実現させました。それが定着したんです」

上空から見た幕張メッセ=1989年10月9日
上空から見た幕張メッセ=1989年10月9日 出典: 朝日新聞

ジェームス・ブラウンに説教くらう

1年目には、大御所のジェームス・ブラウン(JB)が出演しましたが、ちょっとしたトラブルもあったとか。

「ペットボトルをお客さんが投げたのがぶつかって、まずJBが怒って、15分ぐらい説教して、1回帰っちゃったんですね。何とか戻ってきて、演奏し始めたけど、彼のセットは1時間だったはずが、終わらない。マネジャーに『止めてくれ』と頼んでも止められない。結局2時間やったんです。会場の終演時間が決まっていたので、ヘッドライナーのジョン・スペンサーに残されたのは、30~40分。でも彼にとってJBはヒーローだったので、『まぁいい、それでもやる』と言ってくれて。とにかくセットを10分ぐらいで仕上げてパッと出て、なんとか40分はできたのかな。2日目は大阪だったので、同じことを2回やらせないように、絶対にもうこれ以上は、というところで切れ、と大阪のスタッフに言って。実際に、ブチッと切りましたね。さすがに音が鳴らないと、JBも渋々下がって行ったんです」

2001年以降、東京会場は千葉のマリンスタジアムと幕張メッセに定着。幕張メッセの中に複数のステージを作ったほか、04年には外のビーチにもステージを作るなど、規模を拡大していきました。

20年の間には、さまざまなミュージシャンが出演し、それぞれにドラマがあったそうです。

例えば、2005年のヘッドライナーだったオアシス。

「ステージがなかなか始まらなかったんですね。ノエルとリアムという仲の悪い兄弟がいるので、皆は『また兄弟がけんかしたか』とソワソワしていたんですけど、実は裏では僕ら、電源車が壊れちゃって、次の電源車を手配して待っていたんです」

フェスでは、照明やPAに使う電気の容量が多く、通常の電源だけでは足りないため、電源車が必要になるそうです。

「開演が遅れて、20分、30分待たせたかな。あの兄弟なんで、いつ怒って『もうやらない』って言うかが怖くて、彼らをなだめつつ、冷や冷やしました。お客さんは、バンドがもめているんじゃないかと冷や冷やして。ただ、待った分、すごくいいライブで、みんなの大合唱が起きた。感動したシーンですね」

オアシスの2人=ロイター
オアシスの2人=ロイター

「ビヨンセの神々しさ」

10周年の2009年は、初めて3日間開催し、ヘッドライナーにビヨンセが登場しました。

「スタジアムにビヨンセが出てきたときの、神々しさ。圧倒される存在感は、今までで一番大きかったですね」

2014年には、クイーン+アダム・ランバートが出演。ステージの背景にフレディ・マーキュリーの映像が出て、アダム・ランバートと2人でシンクロした場面では、涙が出たそうです。

フェスは、さまざまなミュージシャンが一堂に会するので、音楽ファンにとっては、一粒で何度もおいしい、お得感があります。それまで関心のなかったミュージシャンのライブを見てファンになることもあるでしょう。出演する側にとっても、フェスは、新しいファンを獲得する好機です。

サマソニは、出演者の半数以上が洋楽。海外のミュージシャンにとっては単独ライブよりリスクが少ないので、参加しやすいと言われます。一方、ファンにすれば、単独ではなかなか来日しない海外の大物や新人のライブを生で見ることができる場。ずっと会いたかった憧れのミュージシャンが目の前で演奏するのですから、盛り上がらないわけがありません。

また、屋外の場合、天候や時間帯によって、ライブの雰囲気は大きく変わります。炎天下、土砂降り、涼しい夕方、星空の下……。「雨の○○」「嵐の◇◇」など、土砂降りのライブは「伝説」として語り継がれることも。

さらに、フェスは午前中から夜まで、長い時間を同じ場所で過ごすので、観客の間に一体感も生まれやすくなります。

いま、この環境で共に音楽を楽しんでいる、という一体感と、レアなライブを見られることへの期待。そうした観客の高揚感がミュージシャン側にも伝わり、「伝説」と言われるライブが生まれるのかもしれません。

今年のサマソニでは、どんな感動を味わえるのでしょうか。

関連記事

PICKUP PR

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます