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2019年08月14日

サマソニ、20年続けられた理由 音楽少年だった社長の「50%ルール」


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「サマーソニック」生みの親、クリエイティブマンプロダクションの代表取締役、清水直樹さん=西田裕樹撮影

「サマーソニック」生みの親、クリエイティブマンプロダクションの代表取締役、清水直樹さん=西田裕樹撮影

出典: 朝日新聞

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夏の都市型ロックフェス「サマーソニック」は今年20周年を迎え、8月16~18日に東京・大阪会場で同時開催されます。海外のミュージシャンのブッキングに力を尽くしてきたのが、主催するクリエイティブマンプロダクションの代表取締役、清水直樹さん(54)です。サマソニ史上に残る「レディオヘッド」伝説のステージ。20年間、守っている「50%ルール」。音楽少年だった清水さんがサマソニを生み出すまでの「秘話」を聞きました。(朝日新聞文化くらし報道部記者・坂本真子)

DuranDuran・カルチャークラブ・U2……

清水さんは静岡県焼津市の出身。小学生の頃から洋楽が好きで、カーペンターズやビートルズを聴いて育ったそうです。

「姉がベイ・シティ・ローラーズのファンでよく聴いていたので、自然に覚えました。中学ぐらいから自分でもいろいろ聴くようになって、お金をためて年に何回かレコードを買いました。高校生になると地元に貸しレコード屋ができたので、好きなだけ選べて、借りて、ダビングして。とにかくうれしかったですね」

その頃は1980年代のニューウェーヴ全盛期。DuranDuranやカルチャークラブ、U2、パンク系のクラッシュ、ジャム、スペシャルズなども聴いていました。

高校卒業後、音楽関係の仕事をめざして上京します。

「東京に出るしかないな、と思って、何も決めずに出てきました。音楽関係の学校に行ったり、英語の勉強をしたりして、3年ぐらい過ごした後、そろそろ何かやらないとまずいなと思って、いろいろ探したんです」

あるとき、酒を飲んで明け方に帰宅すると、郵便ポストにはがきが入っているのを見つけました。

「毎回見ないわけですよ。たまたま見たら『面接に来てください』とあって、いつだ?今日じゃん!」

慌てて駆けつけると、最後にぎりぎりで間に合い、個別に面接を受けられたそうです。

「面接担当者が『君は面白いけど、音楽業界を何も知らないからコンサート業界のプロモーターの仕事から始めてみたら?』と。それまで僕はコンサートというジャンルに何も目を向けていなかったんですけど、そういう世界から入るのがいいのかな、と思って、仕事を探したんです」

「高校生になると地元に貸しレコード屋ができて、好きなだけ選べて、借りて、ダビングして。とにかくうれしかったですね」=西田裕樹撮影

「高校生になると地元に貸しレコード屋ができて、好きなだけ選べて、借りて、ダビングして。とにかくうれしかったですね」=西田裕樹撮影

出典: 朝日新聞

「チケット売る以外はあなたがやる」

最初に入った会社では、いきなり舞台監督や宣伝を任されました。

「『チケット売る以外はあなたがやる』と言われて、プロモーションも舞台も何も知らないのに全部やらなきゃいけない。1月ぐらいに入って、3月には結構有名なジャズミュージシャンのクルセイダーズが来ることになっていたんで、とにかく、よくわからないながらもやりましたね。会社の人より、外のスタッフの人たちが同情してくれるわけですよ。『普通、お前、舞台監督なんて入ってきて何も知らないやつがやらねーぜ』と、いろいろサポートしてくれて、何とかこなした、という。クビにならずにどうにかやれたんで、今の僕があるのかな」

宣伝も、とにかく体当たりでこなしたそうです。

「新聞社や出版社、ラジオの制作会社にも電話して『記事にしてください』と頼んで、チラシも書いて、中野サンプラザや簡易保険ホールでチラシをまきました。立て看もやりましたね。ポスターを段ボールに貼って、ひもをつけて電柱にくくりつけて。今だったらかなり違法ですけど、やらされて、1回捕まって警察で始末書を書きました」

「小さな会社だったので、年に2~3本のライブのプロモーションをみっちりやったんです。仕事を隅々まで覚えて、すごく良かったなぁ。いろいろ考える時間もあったし、学ぶ時間もあったので、その2年は大きかったですね。ただ、自分がやりたいジャンルではなかったので、他の会社を紹介してもらったりして、3カ所ぐらいでプロモーターとして働きました」

約4年間の〝修業〟を経て、1990年、25歳でクリエイティブマンプロダクションの設立に参加します。そして32歳で社長に就任しました。

「7~8年たって、英国人の社長が『コンサートのプロモーターはリスクがあるし、もうやりたくない。お前がやれ。やらないなら会社をたたむ』と言い出したんです。全リスクを負う社長なんてできない、と思ったんですけど、7~8人の社員をどうしようかと考えて、後先考えずに、とりあえずやろうか、と。やらざるを得ない状況で引き受けたんです」

経営は決して順風満帆ではなく、多額の負債を背負った時期もあったそうです。そんな中でも、グリーンデイやレディオヘッドといった海外のミュージシャンたちの来日公演を担当していたことが、励みになりました。

「一緒に仕事をしてくれている彼らが絶対に大きくなる。何年か先は絶対にプラスにできると信じていて、何となく自信はあった。だから続けられたんです」

2004年のグリーンデイの3人=ロイター

2004年のグリーンデイの3人=ロイター

セットリストにも入ってなかった「Creep」

レディオヘッドは1992年にメジャーデビューした英国のロックバンドで、1993年、ファーストアルバム「Pablo Honey」からのシングル「Creep」が、世界的な大ヒットになりました。

「最初に『Creep』を聴いて、ミュージックビデオを見たとき、これは何か違うぞ、と思ったんです。ブリットポップの中では圧倒的に暗いけど、ザクッザクッと切り裂くギターの音からの高揚感は、一気にライブ会場に引き込まれたようなインパクトがありました。すごく衝撃的で、このバンドを呼ばなきゃ、と。あの1曲で決めたんですよ」

レディオヘッドはアルバムを出すたびに来日公演を行いました。ただ、「Creep」があまりに売れたためか、1997年ごろから、この曲をライブで演奏することをやめました。

2000年夏、清水さんは東京・大阪会場で同時開催する都市型フェス「サマーソニック」をスタートさせます。

「サマソニに来てもらいたい、サマソニはレディオヘッドをヘッドライナーにするために始めたんだ、ということで、ようやく彼らが来てくれたのが2003年です」

そして、2日めの東京会場で最後に登場したレディオヘッドは、アンコールで、彼らとしても数年ぶりに「Creep」を演奏したのです。

「僕らが頼んだわけでもなく、セットリストにも入ってなかったし、誰もやるとは思っていなかった。なのに、あの前奏が聞こえた瞬間、歓喜です。もう、ほんと、割れんばかりの歓声と、オーディエンスの半分ぐらいは感動して泣いていましたから。僕も感動しましたね……。(涙が)ボロッという状態で。なぜ演奏したんだろうと考えたりもしたんですけど、僕らはずっと一緒にやってきて、バンドとのつながりをすごく感じていたことと、あのときのマリンスタジアムの空気が、本当にとてもいい空間になっていたので、自然と、今まで封印していたものをここでやるぞ、と。初めて日本に来てからちょうど10年ぐらいで、いろんな思いを込めてやってくれたんじゃないのかな。僕は一生忘れないと思います」

レディオヘッドはサマソニで伝説のステージを披露してくれたという=2004年、ロイター

レディオヘッドはサマソニで伝説のステージを披露してくれたという=2004年、ロイター

「50%ルール」の理由

サマソニに出演する海外のミュージシャンは、今も清水さんが曲を聴いて選んでいるそうです。海外のフェスやコンベンションに参加したり、YouTubeなどで映像を見たり。実際の出演順を想定して、オファーするそうです。

「このステージはこの順番で、と頭の中で作っていくんです。海外のアーティストは格というものを気にするんですね。こいつより俺は上だろう、とか。ただ、その通りにはできないので、オーガナイザーである我々がしっかりとした気持ちで、『この順番じゃないとできない』と。僕が順番を決めてオファーをして、OKをもらったアーティストに出演してもらいます。向こうは『ステージのキャパシティーは? 俺たちは何時に始まるんだ? 前後は誰だ?』と、いろんなことを聞いてくるので、こちらが情報を出して判断してもらう。そういう交渉です」

サマソニは、今も出演者の半数以上を海外のミュージシャンが占めています。20年前に始めた当時は、8割近くが洋楽でした。

「僕は洋楽が好きで、この世界に入ってきた。プロモーターとしても洋楽中心で始まっているので、そこはこだわります。やっていくうちに日本のアーティストから『出たい』とリクエストがあったり、オーディエンスも『日本のアーティストと一緒に見たい』と、どんどん広がってきましたけど、絶対に50%で押さえたい。会社としての考え方、プライドもあるし、他のフェスと変わらなくなってしまうので。そこだけは守っていかないといけないと思います」

清水さんは今も、音楽を聴くことが大好きだった少年時代の気持ちを忘れていないと言います。

「昔ほどくまなくは聴けなくなりましたけど、個人的に聴くとしたら、一番多感なときに好きだったニール・ヤングとか、ブルース・スプリングスティーン。ルーツで言ったら、ビートルズやストーンズ。そして、ニューウェーブがとにかく好きで。ジャムとかスペシャルズも特別ですね。ジャムのポール・ウェラーを呼んだときは、ちょっと童心にかえりました。ワクワクして、写真を撮って、高校時代の自分に戻りますよね。どんな大物を呼んでいるときよりも、すごく喜びを感じる、幸せな時間ですね」

「自分の人生の中で音楽は、小学生のときからずっとそばにあったもので、何をやりたいか迷ったときも、音楽の仕事に就きたいという目標になってくれたし、実際にそれが仕事として続いている。裏切らないで、絶えず一緒にいてくれた、今の自分を作ってくれたのが音楽なので、その音楽に対して恩返しをしていきたいと日ごろから考えています。普段なかなか日本で見られない、海外のアーティストのライブを日本で見られるようにすること、紹介することは、一つの恩返しだと思ってやっています」

「僕は洋楽が好きで、この世界に入ってきた。プロモーターとしても洋楽中心で始まっているので、そこはこだわります」=西田裕樹撮影

「僕は洋楽が好きで、この世界に入ってきた。プロモーターとしても洋楽中心で始まっているので、そこはこだわります」=西田裕樹撮影

出典: 朝日新聞

20年続けられた理由

来年は五輪のため、サマソニはありません。

「東京会場はマリンスタジアムとメッセの両方が使えてのサマーソニック。でも、その日程が取れなかったんですよ。取れたとしても、その時期に全アーティスト分のホテルを取れるのか、警備を含めて人員を確保できるのか。その辺りで危険があるので、思い切って1年休もうと判断しました。音楽好きには寂しい夏になるでしょうけど、その分、2年かけて準備するので、2021年には、みんなが『待ってました!』となるようなブッキングを考えたいと思っています」

日本の大規模な野外ロックフェスは、1997年に始まったフジロックフェスティバルが先駆けとなり、1999年にライジングサンロックフェスティバル、2000年にロックインジャパンフェスティバルとサマソニが誕生しました。

この中でサマソニとフジロックは、洋楽がメイン、というスタイルを貫いてきました。特にサマソニは、東京・大阪会場で出演者を入れ替える「巡回型」が特徴で、この方式はミュージシャン側にとっても魅力的だったようです。毎年、海外の大物たちが次々に出演し、その顔触れの豪華さも観客を引きつけてきました。

さらにサマソニは、都心から日帰りで気軽に参加できる都市型フェス、という点で、他のフェスとは一線を画すものでした。

この20年は同時に、音楽の聴き方が、CDからダウンロード、ストリーミングへと変化した時代と重なります。

CDが売れなくなったことで、ミュージシャン側はライブに力を入れるようになりました。チケット代だけでなく、グッズの売り上げも大切な収入源に。ライブの観客を増やすために、フェスは有効な手段として注目されるようになったのです。

ファンの側も、フェスでさまざまなミュージシャンの演奏を見て、気に入ると単独ライブに行く、というスタイルが定着しました。

いま、毎週末のように全国各地でフェスが行われています。ただ、確実に集客し、毎年成功させることは、簡単ではありません。

サマソニも苦しい年があったそうですが、魅力的な出演者をそろえることで翌年は盛り返しました。

そのために清水さんは今も自ら曲を聴き、海外から呼ぶミュージシャンを選んで交渉しています。出演が決まった洋楽のヘッドライナーと共演したい、という理由から、日本の人気ミュージシャンが出演を熱望する例もあるとか。

今も音楽ファンであり続ける清水さんの熱意が、サマソニが20年続く原動力になっているのだと、改めて感じました。

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