「ヘヴィメタ編み物」優勝!うしろシティ、ラジオの「ひと夏の奇跡」
今でも「意味わかんない」と振り返る企画から、800万円集まって、優勝できた「ラジオの力」。うしろシティの2人のインタビュー。
「うしろシティ」の金子さん(左)と阿諏訪さん=瀬戸口翼撮影
今年7月、フィンランドで初めて開催された「ヘヴィメタル編み物世界選手権」。ヘヴィメタに合わせて編み物をするという謎の大会である。世界中から挑戦者が集まる中で、「最初のチャンピオン」となったのは、日本の芸人「うしろシティ」の金子学さん率いる5人組の「GIGA BODY, METAL, from JAPAN」だった。大会の存在を知り、挑戦し、クラウドファンディングで渡航費を集め、優勝するまでの約3カ月間、ラジオでトークを繰り広げ、リスナーの期待を高めてきた。大団円で終わった「祭り」の後、2人は何を思うのか。うしろシティの金子学さん、阿諏訪泰義さんにインタビューした。
【PR】手話ってすごい!小学生のころの原体験から大学生で手話通訳士に合格
「ヘヴィメタル編み物世界選手権」で優勝した金子さん(着物姿)率いる「GIGA BODY, METAL, from JAPAN」のメンバー 出典: TBSラジオ提供
まずは経緯を説明していこう。
「ヘヴィメタル編み物世界選手権(Heavy Metal Knitting World Championships)」とは、へヴィメタルと編み物の文化が根付くフィンランドで、今年初めて開催された大会。ヘヴィメタルの音楽に乗って、「ニッター」と呼ばれる編み手のパフォーマンスが評価される。
アメリカやイギリス、イスラエルなどさまざまな国から選ばれたファイナリストが、7月にフィンランドで行われた決勝戦に参加。合言葉は「Rock it,Knit it」。
TBSラジオで番組「うしろシティ 星のギガボディ」を持つ、うしろシティの2人。今年4月、同じTBSラジオのアルコ&ピースの番組内で、フィンランドで行われる「ヘヴィメタル編み物世界選手権」が取り上げられ、「第1回はどんな雰囲気かわからないから」と金子さんを指名。金子さんがそれに乗っかりエントリーしてみると、あれよあれよという間に決勝進出が決まる。
一方、「ファナリストはフィンランドに無料で招待」と思い込んでいた2人だったが、渡航費/宿泊費は自費ということが発覚。急きょ阿諏訪さんが個人でクラウドファンディングを立ち上げた。100万円を想定したところ、まさかの800万円以上が集まる事態に。そして、無事渡航した金子さん率いる「GIGA BODY, METAL, from JAPAN」は、世界中から集まった猛者たちを破り、優勝をつかんだのであった……。
ーーヘヴィメタ編み物世界選手権、優勝おめでとうございます。
金子:ありがとうございます!
ーーまず金子さんから率直な感想をいただけないでしょうか。
金子:率直……率直な思いは、「面白かった」です。
ーーどんなことが面白かったんでしょうか。
金子:始まりから最後までですね。ラジオのノリで始まって、決勝が決まって、交通費自腹で困って、クラウドファンディングでリスナーに助けてもらって、800万以上集まって、意味のわかんない大会に行って。意味わかんない大会なのに、それをフィンランドの現地の人が見に来てて、意味わかんないのに盛り上がってて、優勝決まって、俺も意味わかんないのに感動して。
フィンランドに向かう金子さん(左から2番目)と「GIGA BODY, METAL, from JAPAN」のメンバー 出典: TBSラジオ提供
金子:そもそも、こんなに意味わかんないのに支援したリスナーがいっぱいいるっていう。それだけ意味わかんないっていう。だから、スタートから終わりまで全部面白かったですね。
ーー阿諏訪さんは同行せず、金子さんが挑戦する様子を見守っていました。どんな気持ちだったのでしょうか。
阿諏訪:どんな気持ち……(笑)
金子:ハラハラだよなあ?
阿諏訪:まず完全なドキュメンタリーなので、毎週状況が変わっていくんですよね、お金がどうこう、飛行機の手配がどうこうみたいなの。嘘じゃなくマジで起こってることなので、面白く見ていたんですけど。やっぱり大会のライブ配信を日本で見ていて、こっちは夜中なのに当然向こうは明るいっていう状況を見たときに、「マジで行ってる!」って思って(笑)。
ーーそこで実感したんですか。
阿諏訪:そうそう。変な話ですけど、その時にわかって。こんなに何もないところから、何かが生まれて、「あー面白いなあ」って実感しましたね。
金子:本当に「ノリ」で、世界のめっちゃ遠いところまで行っているし、「みんなが俺たちを行かせようとする」っていう状況がすごい面白かったですね。
「ヘヴィメタル編み物世界選手権」でパフォーマンスをする金子さん(着物姿)ら「GIGA BODY, METAL, from JAPAN」 出典: TBSラジオ提供
ーー金子さんが優勝したときにまず「やったぞリスナー!」と吠えていたのが印象的でした。覚えていらっしゃいますか。
金子:あんまり言った覚えがないんですよ。ライブ配信されてるっていうこと自体知らなかったので、ロシアとイギリスの国営放送が取材に来てるくらいで。だから日本語しゃべってても伝わんないだろうなとかは思ってたんですけど、あまり覚えてないんです。
ーー渡航する前もラジオで「優勝は前提」と話されていたので、叫ぶ言葉は考えていたのかと……。
金子:優勝前提で行ったんですけど、実際現地に行ってみたら「これ優勝とかじゃないな」って思って(笑)。「楽しかったからそれでいいんじゃないか」って思い始めてて、優勝決まったときは単純に感動したし、感極まって「うぉー!」ってなって、言おうとかは思ってなかったですね。
金子:でも、この旅はリスナーがいないと来れない旅だったので、それくらいしか逆に言うことがなかったというか。「優勝したぞ!」って言うほどヘヴィメタ編み物にかけてたわけじゃないので(笑)、どっちかっていうと「リスナーとここまできたぞ!」っていうことしか、単純にそれしかなかったんだと。
「ヘヴィメタル編み物世界選手権」で優勝した「GIGA BODY, METAL, from JAPAN」のメンバー(左からコーヒールンバ平岡さん、ゆんぼだんぷ藤原さん、金子さん、ゆんぼだんぷカシューさん、ヒコロヒーさん) 出典: TBSラジオ提供
ーーちなみに勝因は何だったと思いますか。
金子:う~ん、僕たちは大会の中でも、お客さんを巻き込んで、一番楽しんでいたので、そういうところだったんじゃないですかね。はじめは「日本人だから日本の文化を持っていけば、珍しいからウケるだろう」くらいに思っていたんですけど、蓋を開けてみたらいろんな国から参加していたし、みんなそれぞれの国のカラーを出していたので。単純に「楽しんでますよ」っていう気持ちが伝わったっていうのが一番良かったのかな。
ーーラジオでも会場の雰囲気が「営業の感じ」とおっしゃっていましたが、営業の経験が生きたのでは?
金子:特にあれですね、スベった営業の経験ですね(笑)。スベっても15分やんなきゃいけないとか、そういうときって面白くなくても、なんとか「楽しそう」みたいな空気にもっていこうとするんですよね。フィンランドでは言葉が通じないから、最初っからある程度通用しないぞっていうのがわかっていたので、心構えができていたのが大きかったのかな。そう思うと日本の営業の方がお客さん冷たいなって思いますね。向こうの人の方が全然優しい。
ーーもとはと言えば、アルコ&ピースさんのラジオで取り上げられて、金子さんが指名されたことが始まりでした。きっかけを作った2人に対しては、どう思っていますか。
金子:感謝とかは一切なくて。「ざまあ」ですかね。100%自分たちの功績。
阿諏訪:うん。
金子:今回に限らず。成功したら自分たちのもの。
阿諏訪:芸人たるものそういうもの。
金子:アルコ&ピースはパス出しただけのことを誇りに言うでしょうし。芸人ってそういうもんだと思います。
ーーなるほど。
金子:やっぱり、アルコ&ピースの2人だったら行かないんですよ。そういうのって多分、僕らの番組でもそういう話題になったら、俺たちは行かないもんな。誰かに行かせようとしちゃうと思うんですよね。誰かに1回パス渡した方が、きっと面白いんじゃないかって。たまたま今回は着地がうまくいったけど、こんなんばっかですよ。嫌なむちゃぶりもいっぱいあるので。
ーーでは、逆の立場だったらどういう人にパスを出しますか。
阿諏訪:誰だろうなあ。
金子:やっぱり、できそうな奴には振らないだろうなって今自分で思って、アルコ&ピースはできそうにない俺に振ったのかと思ったらすっごいムカついてきました。
ーーなんと言ってもすごいのがクラウドファンディングで800万円以上の大金を集めたということ。ここまで資金が集まると想像していましたか?
阿諏訪:全然思ってなかったです。クラウドファンディングって2〜3ヶ月やるイメージですけど、僕ら10日だったんで。「100万円ちょい超えてほしいな~」くらいでしたね。
ーークラウドファンディングのプロジェクトは阿諏訪さん個人が立ち上げたんですよね。
阿諏訪:完全に僕が家で、ひとりでやってました(笑)。開始する日の朝、僕が各所に「もう出しますよ」っていう連絡をして、10時半に開始して、11時半に100万超え、12時半に200万……。この辺からもう、とるもの手につかなくなって(笑)。その日でもう350万とかいっちゃって。
金子:もうその頃笑ってないもんな、誰も(笑)。
阿諏訪:「我々はどうなってしまうんだろう」と。
金子:「あ、やだ」ってなりましたね。話が大きすぎる。
阿諏訪:ラジオリスナーの習性として、「やめろよ!」ってこっちがめっちゃ嫌がっちゃうと、もっとくるんですよね。だから「ありがとうございました」みたいな(笑)。「もう終わりましたよ~」みたいな温度で言ったのに、どんどん増えるから(笑)。これは、何言っても止まらないだろうなって。
ーー「これはヤバい」って思ったタイミングはいつですか?
阿諏訪:1日目終わって350万円になったときですね。通知が来るんですよ、「この方が支援してくれました」っていう。それがもう3時間くらいで1000件超えて、メールが来るんですよ1000通。プライベートのメールアドレスに。
金子:誕生日みたいだな。
阿諏訪:誕生日なんて全然来ねえよ。……これはまた別の話だよ(笑)。
ーープロジェクトの立ち上げも、ラジオのスタッフとかにお願いするのではなく、阿諏訪さんがやったのは何か理由があったんですか?
阿諏訪:多分、(スタッフは)責任とりたくなかったから(笑)。
金子:でも会社とかいろんなものが動くのって、いろいろ会議とかしなくちゃいけないから、時間がなくって。
阿諏訪:ただでさえ10日しかなかったので。
ーー2人の突破力、スピード感だったんですね。
阿諏訪:だから、リスナーから僕に直で来てる仕事になりますね。
金子:闇っぽく言うなよ(笑)
(一同笑)
ーー800万円のお金の内訳はどうなっていますか
阿諏訪:「8,215,122円」ですね。これ僕絶対忘れない数字になりました。そこにもいろいろ問題ありまして……手数料とかいろいろ引かれて、僕の手元に入るのが620万くらい。そこから、渡航にかかった費用や支援してくださった方へのリターンのグッズの費用で、残りが今のところ200万円くらい。それが僕の個人の収入になるので、税金で半分以上持っていかれるはずです。僕の去年の収入で計算しただけでそんなもんになるんで、今年はまだいくらになるかわからないっていうのもあって…………ちょっとみなさん待っててくださいっていう(笑)。
ーーなるほど、バッファをとってるんですね。
阿諏訪:そうです。まず来年に税金でドン!ととられて、再来年もとられるんです。それでいくらになるかわからないので、とりあえず経費の分は払いますけど、余ったお金については「ちょっと待っててください」っていう状態にしています。もしかしたらマイナスになるかもしれない。
ーーマイナスになると……阿諏訪さんの自腹になるんですか?
金子:それは阿諏訪が悪いよ。そこも込みだろ。
阿諏訪:どうすんだマジで(笑)
金子:さすがにマイナスはないんじゃない?
ーー確定申告の季節に、また阿諏訪さんのそういう報告が聞けるのでは?
阿諏訪:でもその頃ってみんなもう忘れてるんすよ。「まだ阿諏訪その話してんの?」みたいな。絶対言われるもん。
金子:「やだな、こいつすぐカネの話すんだよね」みたいな。
阿諏訪:絶対言うわみんな。
金子:とりあえず早くくれよ俺の金。まだ自腹切ってるだけだから。
阿諏訪:だから風化させないように、支払いは後にしようかなと思ってるんですよね。
金子:なんで俺ずっとマイナス200万くらい自腹にしてないといけないんだよ(笑)。
ーー金額という数字でリスナーの存在を実感するのは、普段の感じ方と違うのではないでしょうか。
金子:おしゃれな洋服買ったり、女の子をデートに誘ったりとか、そういうのでお金を使えばいいのに。リスナーはモテないし、ねじ曲がっているから、こういうことにお金を使うんだと思います(笑)。そのパワーは逆にすごいよな。僕らのこの企画を「女の子をデートに誘ってる」のだとしたら、めっちゃ口説きにきてるわけですよ。だから、すごいよね。
阿諏訪:パワーがすごいですよね、やっぱ。
金子:この金額が「俺たちはこれだけ今面白がってるぞ!」っていうパワーメーターにしか見えない。圧倒されるよね。
ーーリスナーの盛り上がりが金額になっていると。
金子:でもこないだ、ちょうどフィンランドから帰ってきた頃、福岡に全国ツアーに行ったら、出待ちにラジオリスナーの男の子が2人いたんですよね。しかも、「直接おめでとうって言いたくて」みたいな。「ありがとう。ライブも来てくれたの?」って聞いたら、「ライブは乃木坂のコンサート見に行って、乃木坂は出待ちとかできないんで、出待ちだけこっち来ました」って(笑)。「この野郎」って(笑)。
阿諏訪:はっきり言ってたよね(笑)。
金子:もう愛しいですね。
阿諏訪:あとは「1万円課金しました」って言われるんですけど、課金って言うなよ(笑)。
金子:ゲームだと思ってるんですよね、本当に。
ーー「こんなにたくさんの人が!」っていう驚きより、「面白がられてるな」っていう気持ちの方が強いと。
阿諏訪:Twitterでも「祭りだ!」っていうコメントがあって、「あ、そういうことか」って。納得しました。「面白そうだから参加しなきゃ!」って。
金子:フィンランドで現地で盛り上がっている人とまったく一緒で、「なんでこんな意味わかんないことで、盛り上がれるの?」って思いますね。こっちとしては意味わかんないことをやることはできるけどね。見て盛り上がれるって、その人の楽しめるパワーの強さじゃない? すごいなって思いましたね。
ーー優勝後、周囲の反応はいかがだったでしょうか。印象的なものがあれば教えてください。
阿諏訪:僕ね、ラーメン食いに行ったらね、「おめでとうございます」って煮卵一個サービスしてもらいました(笑)。
金子:煮卵俺にくれよ。
阿諏訪:僕は、煮卵を、サービスしてもらいました!
金子:食うなよ。俺にくれよ。
ーーそれは行きつけのラーメン屋さんとか?
阿諏訪:いや、行きつけではないですね。たまたま入ったところで。多分店主がリスナーさんだったんですかね。何にも言わずに「おめでとうございます」だけ言われて。笑っちゃいましたよね(笑)。「あ、煮卵だ」って。
金子:いいなあ~。
ーー金子さんはそういった反応はなかったんでしょうか。
金子:僕は大会ではメイクしてたんで、あんまり気付かれないんですよ。でも、優勝して、ヘルシンキ空港から日本に帰ってきて、成田着く直前まで寝てたんですけど、起きたときに「待てよ?」「これ空港大丈夫か?」って。
阿諏訪:(笑)
金子:「なんか別の通路みたいなのあるよな?要人が通るような」「大丈夫か俺、日本代表が帰ってきたみたいになるんじゃないか」って。後輩に頼んで、「前歩いて、せめて」「あんまり怖い人とかいたら守ってね」とか言って。後輩も「わかりました!」みたいな。厳重体制で4人で固まって出てったんですけど、その塊のまま、京成線乗りました。4人の塊のまま(笑)。
(一同笑)
金子:ぐらいです、ハイ。落ち着いたもんです。
ーーそうだったんですね。
金子:本当に何も僕は恩恵を受けてないです。ただ、フィンランド関係の人は反応してくださってますね。家具屋さんとか、大使館とか。大使館の方とかは「ランチをしよう」みたいな話になってます。そこで煮卵食えれば(笑)。
阿諏訪:もしかしたら親善大使とかになれるんじゃない?
金子:無理だよもういるだろフィンランドの親善大使は。
ーー実際行ってみて、フィンランドはどんな国だったでしょうか。
金子:フィンランドの人は、日本人に似てるって思いました。僕ら劣等感が強いんで、「外国の男の人」のイメージって、なんか上から来られそうな気がするんですけど、実際フィンランドの人はシャイな人が多くて。みんななんか照れながら話しかけてくるんですよ。
ーー親近感が湧きますね
金子:冬が長くて夏が短いところとか、僕も新潟出身なんで、なんか近いものを感じてました。こんなに距離が離れている国なのに。本当にいい街だったんで、単純に旅行に行きたいなと思いました。
ーーそのときは阿諏訪さんも……
金子:いや、旅行なんで、楽しみたいんで。
阿諏訪:僕も別で行きたいです。
金子:相方なんで、友だちじゃないんで。
ーーあ……すいません。
(一同笑)
ーーTBSラジオの同じ枠のアルコ&ピースの平子さんのキャラ「瀬良社長」、ハライチの岩井さんの猫好き、アニメ好きのところなど、それぞれ持ち味がある中で、ラジオでも「金子さんはどうするの?」という話は出てきていました。「漫才/コントだけじゃなく、一芸を持たなければいけない」という状況を、金子さんはどう感じていましたか。
金子:そういう時代なんだな~としか思わないです。今年コンビ10周年ですけど、1年目と10年目では、お笑いも全部違うんですよね。番組のスタイル、ネタの尺、バラエティってやっていること、やれなくなったこともいっぱいあるじゃないですか。そう考えたら、どんどんネタじゃなくなって、特技になって、また別のものになったりすると思うんで、その時々によるんじゃないですかね。
ーーいじられることについてはどう感じていましたか?
金子:やっぱそんだけみんな何か持ってるんだなって単純に思いました。(特技などが)ない人がいじられるってことは、ある人の方が多いんだって。「なんか探した方がいいんじゃない?」って言われるんですけど、「探すものなんだろうか」っていうのもあるじゃないですか。その人の持った才能っちゃ才能だと思うんで、難しいなあとは思っていましたけど。(毛糸玉を持ちながら)余ってたらこんなプレゼントがきた感じですかね。
ーー金子さんが「プレゼント」を手にしたことで、阿諏訪さんに危機感はありますか?
阿諏訪:僕は料理とキャンプが今の段階であるので、更に何かあればなと思いますけど。
金子:「税金計算キャラ」っていう(笑)。
ーー今回の優勝で、コンビ間のパワーバランスの変化とかあるんでしょうか?
金子:……いや、みなさんが思うほどこれ(毛糸)強くないっす(笑)。
(一同笑)
金子:そんなに世の中に影響与えてないんです(笑)。すごく重要なファクターとして捉えられてますけど。すみません、本当に。僕もかましたいところもあるんですけど。正直ここまでいくと、そんなに強いものではない。それで何かが変わるわけではない。
阿諏訪:私も先ほどキャンプ、料理って並べてましたけど、これね、全然仕事につながらない(笑)。
(一同笑)
ーー実際、仕事のオファーはどうだったんでしょうか。
金子:いや、なんかいろいろ来たんですけど、今回日本っぽいことを海外でやったわけじゃないですか。でも、それを日本でやるとめっちゃすべるんですよ。ワイドショーで取り上げられて、「日本人の視点からしたら、つまんないよね」とか言うコメンテーターの方もいて。その通りだと思います。だから仕事にどうこうっていうことではないのかな。
ーーでは、今後も「ヘヴィメタ編み物」を続けていくっていうことはないのでしょうか。
金子:「ヘヴィメタ編み物を続けていく」っていうこと自体、もうよくわかんないので(笑)。
阿諏訪:そもそもないもんだからな。
ーー確かに……(笑)
阿諏訪:でも来年は出るんじゃないですか? ディフェンディングチャンピオンとして。
金子:まあたゆまぬ努力を続けていきたいなと思います。……それで通用します?(笑) 絶対通用しないですよ僕。
ーーこれだけ「意味わかんない」とおっしゃるものを、長い時間かけて大きなストーリーに展開できたのはどうしてだと思いますか。
金子:なんでなんだろう……。
阿諏訪:なんだろうな……。
金子:なんか、他の目的が全然なかったんですよね。「面白くなってきたぞ」っていう雰囲気だけ。例えばお金儲けしようとか、次の仕事につなげるぞとか、目立ちたいとか、女の子にモテたいとか、そういう欲求を出していたら、こんな感じにならなかったんだろうなって。「なんか面白そうだぞ」っていうふわっとしたものだけがずっと流れていたというか。
阿諏訪:ラジオってそもそも、内緒でコソコソ楽しんでるような閉鎖感というか。そういうのあるじゃないですか。「聴いてる人だけにしかわからない」っていうラジオの、すごい根本にある良さとか、仲間意識みたいなものと、今回の流れが合致したかなって感じがありますけどね。
ーー今回感じた「ラジオの力」、どんなものだったでしょうか
阿諏訪:いやあやっぱり楽しいなって思いますね。学生時代に聴いてたラジオとか、パーソナリティの人がすごい格式高い立派な表彰式とかの裏で、実はバカやってるのを、リスナーだけが知ってて。「やめろよお前!」みたいに思ってる、みたいな。全然遠い存在なのに、距離の近さみたいなのが、多少感じていただけたんじゃないかなって。俺たちを「バカだな」って思って楽しんでいただけたんじゃないかなと思ったら、学生時代に聴いてたラジオと変わらない感じがして、うれしいですね。
金子:テレビではこれが「ちょっとスベった祭り」扱いされていることも、そこで「ちゃんちゃん」になるというか(笑)。「これだけ俺たちが情熱を掲げたひと夏の奇跡が、テレビでスベっている!」っていうということもすべて含めてだと思います。
ーーずっと応援してきたリスナーの方に一言言うとしたら何でしょうか。
金子:「面白かったな」ということですよね。終わってからラジオのスタッフさんとか、阿諏訪とか、みんなで結果、最後まで終わって面白かったなって振り返ったんですけど、その場にみんながいてもいいぐらいですよね。みんなで面白かったなという話をしたい気持ちですね。
阿諏訪:「面白かったな」の「な」の部分がそういうことですよね。台本があって、こっちが楽しませているわけじゃないので、俺たちもリスナーと同じ感じでドキドキしながら見ていたんで、「面白かったねー」ですね。
ーー改めて、今回の大会を通して、リスナーに伝えたかったことはありますか。
金子:そうっすね、やっぱりあの……「音楽と毛糸は言葉を超える」。
(一同笑)
ーーありがとうございます。現地でも海外メディアにおっしゃっていましたね。
金子:日本のメディアじゃなかったんで、言うだけ言ってやろうと。そしたら日本でも使われて、めちゃハズい思いをしてます。
阿諏訪:これ言うと本気で言ってたみたいになるよね。
(一同笑)
金子:絶対俺が死んだ後、墓にイタズラで書かれるよ。絶対ヤダよ。
<うしろシティ>
金子学さん、阿諏訪泰義さんのお笑いコンビ。「平成24年度NHK新人演芸大賞」演芸部門大賞受賞。「キングオブコント2012 2013 2015」ファイナリスト。毎週水曜日24時からのTBSラジオ「うしろシティ星のギガボディ」を担当。