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2019年08月06日

「ロスジェネにつながりはいらない」赤木智弘さんが語る唯一の救済策


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ロスジェネの当事者として発信を続けていた赤木智弘さん=神戸郁人撮影

ロスジェネの当事者として発信を続けていた赤木智弘さん=神戸郁人撮影

出典: 朝日新聞

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「ロスジェネに、つながりはいらない」。ロスジェネの代弁者として発信を続けてきた赤木智弘さんは、雇用対策や街コンなど、つながりのきっかけを作ろうとする政策の限界を指摘。そして、ロスジェネを救う手段は「お金を直接、分配すること」だけしかないと訴えます。「『丸山眞男』をひっぱたきたい 31歳フリーター。希望は、戦争。」で注目を浴びた赤木さんに、今、ロスジェネのためにできることをつづってもらいました。

中高年になったロスジェネ

ロスジェネが注目された時代から、すでに10年以上が経った。
10年が経ったということはどういうことか。

それは「ロスジェネ世代が10歳、歳を取った」ということを意味する。
冗談やちゃかしで言っているわけではない。

10年前、すでに30歳前後となり、若者とは言ってもギリギリだった人たちは、その10年後には40歳前後になった。
40歳は「初老」であり、ロスジェネ世代はすでに若者ではなく、中高年者にカテゴライズされる存在である。

中高年だから、当然体にガタが出てくる。
正社員としてスキルを育て、昇進した中高年であれば椅子に座ってゆったり仕事をすることもできるのだろうが、非正規労働者として現場で体を酷使して働いていた中高年は、これからもずっと体を酷使して働き続けるしかないのである。

ところが、世間の人たちは、いまだにロスジェネ世代を若者だと思っていたりする。下手すると、ロスジェネ世代自身も「自分はまだ若者」と思っていたりする。
まだ社会で大きな仕事をしていないロスジェネ世代にとって「まだ若者」と思い続けることが、自らへの慰めになっている点はあるにせよ、ロスジェネ世代を「若者」であると思ってしまうことこそ、ロスジェネ世代を地獄に突き落とすワナなのである。

<ロストジェネレーション>
バブル崩壊後の景気悪化で企業の新卒採用が減らされた1993年から2004年ごろに社会に出た世代。朝日新聞が07年1月に載せた連載「ロストジェネレーション」で名づけられ、氷河期世代とも呼ばれる。高卒、大卒などにより年齢に幅があるが、ほぼ現在の33歳から48歳にあたる。団塊ジュニア(第2次ベビーブーマー)を含み、人口規模は約2千万人。雇用労働者のうち非正規で働く人は3割近くに上るとみられる。


2008年12月31日に生まれた年越し派遣村=東京・日比谷公園

2008年12月31日に生まれた年越し派遣村=東京・日比谷公園

出典: 朝日新聞

人手不足は朗報ではない

ここ数年、大学生の新卒入社率が跳ね上がり、売り手市場であると言われている。このことを「同じ若者であるロスジェネ世代にとっても朗報」だと勘違いしている人が少なくない。

しかし、跳ね上がっているのは新卒学生の入社率でしかない。ロスジェネ世代に対する需要は無いし、あったとしても土木、介護などの、肉体労働が大半である。

最近はどこの企業でも「40代の中堅社員が足りない」と言われている。これはバブル崩壊後に、それだけ企業が人を取らなかったということの裏返しであり、企業の自業自得だという声は強い。

しかし、だからといって企業が今の40代に対して「ごめんなさい。今からでもウチに来てください」と頭を下げて、三顧の礼を持って遇してくれるはずもない。

企業が欲しがっているのは、正社員としての経験を積んだ40代の熟練者であって、フリーター上がりの40代の新人ではない。人が欲しいだけなら新卒学生を多く採用するだけのことだ。もちろんこれも「売り手市場」の理由の一つである。

すなわち、新卒学生が売り手市場であるとうことは、ロスジェネにとっては朗報でもなんでもなく、ただ就職の機会を、新卒の若者に奪われているだけという意味でしかない。

2019年3月1日の会社説明会には大勢の学生が集まり会場は混雑した=福岡市中央区のヤフオクドーム、長沢幹城撮影

2019年3月1日の会社説明会には大勢の学生が集まり会場は混雑した=福岡市中央区のヤフオクドーム、長沢幹城撮影

出典: 朝日新聞

月30万円の仕事を警戒する理由

「ロスジェネに就職の機会を」と主張する人達がいる。
ハッキリ言って、そんなことはすっかりやり尽くしているのである。
ロスジェネ世代向けの就職説明会を開いてみたり、雇用助成金を餌に、企業に採用してもらおうとしたり、スキルが必要だからと、職業訓練校に通えば給付金を与えることにしたりと、様々なことをやっているのである。

にもかかわらず、ロスジェネ世代を採用する企業は少ない。雇用助成金もほとんど使われていないと言われている。

この原因としては、そもそも企業が40代の新人を欲していないこと。そしてもう1つ重要なのが「ロスジェネ世代自身が、企業を信用していないこと」が挙げられる。

時給1000円弱で160時間働いてようやく15万円程度の給料をもらう40代のフリーターに、月30万円の仕事を紹介したら、フリーターはすぐにその仕事に飛びつくだろうか? いや、非常に警戒をするはずなのだ。

なぜなら、月160時間必死に働いてようやく15万円もらえるのだから、もし月30万円の仕事などに就いてしまえば、2倍近い苦しくひどい労働をさせられるのかと、警戒するのである。

「仕事は全く楽しくもなんとも無い、ただ苦しいだけのもの」

そうした環境に置かれ続けた人が、仕事を変えることによって生きていくことが楽になるなどと思わないのは、当然のことである。

ロスジェネに仕事の機会をというなら、ロスジェネにその年齢に見合った、安定的、かつ肉体的に厳しくない仕事の機会を作るしか無い。

しかし、本当に40代の新人がそのような仕事に就くことができるのだろうか?

ハローワークかごしまの階段の壁に貼られた、最低賃金を知らせるポスターが貼られていた=2019年4月3日、鹿児島市下荒田1丁目、加藤美帆撮影

ハローワークかごしまの階段の壁に貼られた、最低賃金を知らせるポスターが貼られていた=2019年4月3日、鹿児島市下荒田1丁目、加藤美帆撮影

出典: 朝日新聞

保守化する「若者ワナビー」

最近は「若者が保守化している」と言われる。

なぜ保守化しているかと言えば、ネットである種の人たちが言うような「サヨクがだらしないから」みたいな話ではなく、単に「若者が既得権益側に組み込まれたから」に過ぎない。

就職状況の良くなった若者は、ロスジェネ世代には考えられないほど楽に待遇の良い企業に入社した。この身分を手放したくない。会社にずっと身を置いて安定したい。そんな20代の正社員の若者が、寄らば大樹の陰とばかりに体制寄りとなるのは当然のことである。

ところが、そうした若者と仲間のつもりなのか、30代、40代の人達が保守化してしまうことがある。別に自身が正社員で安定した生活を送れているのであれば、そうした選択はありだが、非正規で苦労しているのに、保守化して、自分が若者と同じ感性を持っているかのように思い込む人がいる。

こうした人達は残念ながら幸福な若者に憧れる「若者ワナビー」でしかない。自らが苦労しているという現実を直視したくないから、余裕のある保守のふりをしている残念な存在である。

少なくともSNSでサヨクや在日や韓国や朝日新聞をたたいている分には、豊かな若者たちと同じ立場でいるかのように振る舞えるのである。

参院選投票日前日、安倍晋三首相が自民党候補の応援演説をした秋葉原駅前には多くの人が集まった=2019年7月20日、東京都千代田区、朝日新聞社ヘリから、迫和義撮影

参院選投票日前日、安倍晋三首相が自民党候補の応援演説をした秋葉原駅前には多くの人が集まった=2019年7月20日、東京都千代田区、朝日新聞社ヘリから、迫和義撮影

出典: 朝日新聞

結婚という馬鹿げた選択肢

では、未婚のロスジェネ世代を結婚をさせるというのはどうだろうか?

収入の多い人と結婚させれば、生活環境は良くなるはずだ。
しかし、わざわざロスジェネ世代と結婚したい人というのはいるのだろうか?
高収入でありながら、仕事に時間を費やしてしまった女性の中には、結婚を真剣に考えている人がいるかもしれない。

が、あまりに馬鹿げている。

高収入の女性は、低収入の男性と結婚するくらいなら、独身であることを選ぶだろう。貧乏なおっさんなど、正直お金をもらってでもいらないだろう。

ロスジェネ世代が女性であっても、厳しい現実に変わりはない。年齢というハードルは、男性以上に重くのしかかる。
故に、結婚という手法は考えられない。
無理やり結婚させる? どこかの宗教団体の合同婚か? ふざけすぎている。

長野市にある県婚活支援センター=2016年10月13日

長野市にある県婚活支援センター=2016年10月13日

出典: 朝日新聞

誰ともつながれない前提

ロスジェネ世代というのは、社会的にはすでに捨てられた世代である。
バブル崩壊後の不景気の影響を直に受け、その不利益だけをひたすらに投げつけられた。
そうして、時間が経ち、少し景気が良くなったと思ったら、空いた席はロスジェネ世代ではなく、若い新卒世代に与えられた。

いわば、ロスジェネ世代というのは社会の側から「つながり」を切られた世代なのである。
安倍政権はロスジェネ世代を「人生再設計第一世代」などと称しようとするが、その再設計の先は介護などの、肉体的に重労働かつ、多くの人が避けたい職業であることは目に見えている。

「つながり」というのは、自分が求め、かつ他者に求められるからこそ、成り立つのである。
もはやロスジェネ世代でフリーターなどの非正規のまま40歳になってしまった中高年をもはや会社は求めていない。そして、結婚していない男女も、40代の人間など、家族として迎え入れる気などないのである。

もはや、社会にも個人にも求められていない。
もはや、中高年自身も、つながりを作ろうとしていないし、つながりに期待をしていない。
もはや、ロスジェネ世代は社会とはつながれないし、つながれないという経験知を積み重ねて来たのである。

故に、ロスジェネ世代の救済は、誰ともつながれないことを前提にしなければならない。

44歳以下が対象の「広島わかものハローワーク」=2017年11月9日、広島市中区

44歳以下が対象の「広島わかものハローワーク」=2017年11月9日、広島市中区

出典: 朝日新聞

お金を渡せばいい

では、ロスジェネ世代をどのようにして救うか。
これは実に非常に簡単である。ロスジェネ世代にお金を渡せばいい。

お金と言うのは非常に便利なもので、たとえ彼女に手料理を作ってもらえなくても、お金を使えばお店で誰かが作った料理を食べられるのである。

どんなにモテモテなイケメンでも、どんな嫌われ者で気持ち悪いおっさんでも、150円のペットボトルは同じ150円を払えば買えるのだ。

お金というのは、つながりを持たない個人が他人と平等に権利を行使できる数少ない手段である。
今後、我々団塊ジュニア世代が50代、60代になったとしても、それは変わることがない。

また、政府は結局は我々に「つながり」を与えることはできない。就職のために助成金を支払ったり、街コンを支援したりと、つながるきっかけを作ることはできるが、決してその結果を保証しない。

つまるところ、国や行政が生存権の下に行う支援というのは、結局はお金を分配することでしか成り立たないのである。

「お金というのは、つながりを持たない個人が他人と平等に権利を行使できる数少ない手段」 ※画像はイメージです

「お金というのは、つながりを持たない個人が他人と平等に権利を行使できる数少ない手段」 ※画像はイメージです

出典:https://pixta.jp/

つながり失うことを恐れない

今の日本に本当に必要なのは、経営者でも労働者でもなく「消費者」である。
なぜなら今後、世界の労働の幾ばくかはAIに置き換えられていくからだ。

だが、AIには単純には労働者と置き換えられない、致命的な弱点がある。

AIは生産をすることはできても、電気以外のモノをほとんど消費しないからだ。

消費をしないAIに働いた分の給料を与えたところで、そのお金は二度と流通せず、闇に消えたのと同じことになる。お金を経営者が独り占めしたところで、経営者はAIによって失われた数百万、数千万の労働者の消費を代替できない。

AI時代になり、労働者がAIに置き換えられ、格差社会が進めば進むほど、生産は増えても消費は減ってしまい、経済活動は滞り、景気は悪化するだろう。

AI時代においては、生産性など気にせず、お金を使う消費者こそが必要なのだ。
ロスジェネ世代は、つながりなどなくても、優良な消費者でさえあればいい。

社会からつながりを切られた僕たちが生き残るには、つながりを再構築できるのようなワナに引っかかるのではなく、つながりを失うことを恐れず、その対価を要求し、お金によって自分の生活を支えることを要求すること。それこそが、僕たちが幸せになる近道なのである。


     ◇

赤木智弘(あかぎ・ともひろ)フリーライター。1975年栃木県生まれ。2007年に『論座』(朝日新聞社)に「『丸山眞男』をひっぱたきたい 31歳フリーター。希望は、戦争。」を執筆。話題を呼ぶ。以後、貧困問題を中心に、社会に蔓延する既得権益層に都合のいい考え方を批判している。最近ではテレビゲームの話題なども執筆中。著書に『若者を見殺しにする国 私を戦争に向かわせるものは何か』(朝日新聞出版)、共著として『下流中年 一億総貧困化の行方』(SB新書)など。

派遣村「最後の日」の光景、入村者たちのその後……
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吐く息が白くなるほど冷え込んだ朝、入村者は、炊き出しの汁物の食事で暖をとった=2009年1月4日、遠藤真梨撮影
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