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2019年07月19日

上野千鶴子さんは言った「社会変革っていうのは、建前の変化」


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上野千鶴子・東大名誉教授=瀬戸口翼撮影

上野千鶴子・東大名誉教授=瀬戸口翼撮影

出典: 朝日新聞

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1958年の市制施行から、一度も女性市議が誕生したことがなかった鹿児島県垂水市。今年4月の市議選(定数14)に向けて取材に入ったのは昨年12月でした。雄大な桜島を望む垂水市は人口約1万5千人。農水産業が盛んでカンパチやブリが特産品です。ブランド豚もあります。鹿児島市中心部から車とフェリーで約1時間かけて何度も通ったそのまち。参院選投開票を前に、現地で目の当たりにした「壁」について考えます。(朝日新聞記者・野崎智也)

【動画】「女よ選挙に出よう」。上野千鶴子さんが語る女性議員の現状=瀬戸口翼撮影

まるで、隠れキリシタン

まず驚いたのは市役所の課長以上の役職に、女性が就いたことがないという事実です(4月1日付で初めての女性課長が誕生)。市議会をのぞくと、議員席は男性、ひな壇も男性。「男だらけの議場」でした。傍聴に来ていた女性が「頭が痛くなる」と漏らしたのが、印象的でした。

この現状をどう思っているのか、市役所の女性職員数人に取材を申し込みましたが、「周りに何を言われるかわからない」と次々と断られました。「若い女性職員の声を聞いてほしい」と前向きだった人もいましたが、翌日断られました。まるで、隠れキリシタン。女性が「男社会」にもの申すことが、タブー視されている現実に直面しました。

自治会の活動を取り仕切るのも男性です。ある男性は「男が先頭に立たないといかん。女では決められるものも決められん」と断言しました。意思決定の場に女性がいないことに、違和感はまったくないようでした。

ある陣営の事務所を訪ねたときのことでした。裏の炊事場にいた高齢の女性に話しかけると、返ってきたのは「今は選挙のことを分かる人はおらん。女しかおらんもんな」の言葉。もやもやした気持ちで立ち去ったのを覚えています。

議員側(手前側)、市役所側ともに女性が一人もいなかった市議会本会議場=2019年2月26日、鹿児島県垂水市、野崎智也撮影

議員側(手前側)、市役所側ともに女性が一人もいなかった市議会本会議場=2019年2月26日、鹿児島県垂水市、野崎智也撮影

出典: 朝日新聞

これって、薩摩隼人だから?

候補者男女均等法が施行されて初めての統一地方選。朝日新聞を始め、たくさんのメディアが垂水で初めての女性市議が誕生するかどうかに注目し、取り上げました。ツイッター上では「いつの時代の話?」「田舎の現実」「腐ってるぜ!鹿児島」といった批判も噴出していました。

でも、これって、薩摩隼人(さつまはやと)だから? 九州男児だから? と違和感を覚えました。垂水や鹿児島、九州に限ったことではないでしょう。東京医科大の入試で女子受験生が不利に扱われたのがいい例です。「女性活躍」を掲げる安倍内閣の閣僚だって、たった1人です。

かくいう朝日新聞社も、5月10日時点の女性管理職の比率は9.7%どまり。人数の少ない地方総局で女性が若手1人になり、「相談できる相手がいない」という嘆き節も聞かれます。候補者均等法施行後の選挙をどう報じていくのか――。関心のある記者を集めた社内会議は女性が3分の2近くを占めました。普段は見られない男女比率で、新鮮な光景でした。

女性の政治進出を考えるシンポジウムでは、鹿児島県垂水市議選の立候補予定者が紹介された=2019年2月3日、鹿児島県垂水市、野崎智也撮影

女性の政治進出を考えるシンポジウムでは、鹿児島県垂水市議選の立候補予定者が紹介された=2019年2月3日、鹿児島県垂水市、野崎智也撮影

出典: 朝日新聞

「セクハラだって、男の下心までは変えられない」

今回、取材を担当した27歳の独身男性である私の潜在意識の中にも、男性優位の考えがあるのではないか、とハッとすることがありました。結婚を考えるときに、パートナーに仕事を辞めてもらう、という選択肢はあっても、自分が辞めるなんてことは本気で考えたことがありませんでした。自分の名字を変えることも。

日本の女性学のパイオニア、上野千鶴子さんは言いました。「候補者均等法も表立って反対できないんだから、全会派一致で決めるしかなかった。そのくらいの変化は起きた。セクハラだって、男の下心までは変えられない。だけれども、表に出せばアウト。社会変革っていうのは、建前の変化だと思う」と。

女性の政界進出が進み、女性が生きやすい社会になれば、自然と男の潜在意識も変わるのかもしれません。前提となる建前を、かたちを決めるのが選挙なのだと思います。

垂水市議選には女性2人が挑み、1人が当選しました。「2人当選」という私の予想は外れ、「壁」の高さを改めて実感しました。7月21日は参院選の投開票日。その行方もしっかり見ていきたいと思います。


記者が選挙ポスターになったら……仕込まれた「裏技」
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選挙ポスター撮られてみたら……。甲斐江里子記者が実際に出馬するならこれにしようと決めたポスターのデザイン。元気さ、力強さを表現
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