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はやぶさ2、大成功支えた2つの秘訣 指揮官が力込めた初代との違い

はやぶさ2の着陸成功を喜ぶチーム=神奈川県相模原市のJAXA相模原キャンパス、池田良撮影
はやぶさ2の着陸成功を喜ぶチーム=神奈川県相模原市のJAXA相模原キャンパス、池田良撮影

目次

地球から2~3億キロと遠く離れた小惑星「リュウグウ」で、探査機「はやぶさ2」が人工クレーターを作ったり、曲芸のような飛行の後に岩のすき間に着陸したりと、史上初のミッションを次々と成功させています。誰も挑戦したことがないのに、なぜうまくいっているのか。ミッションの指揮官の言葉のなかに、成功すべくして成功した2つのポイントがありました。

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【動画】小惑星探査機「はやぶさ2」 リュウグウ再着陸の最大ミッションは? 出典: 朝日新聞デジタル

ねらいは、生命の起源のナゾを解け

相次ぐトラブルに負けずに地球に帰還して大きな話題となり、映画にもなった初代「はやぶさ」。その後継機が「はやぶさ2」です。はやぶさ2が着陸したのは、地球と火星の軌道付近を回る直径約900メートルの「リュウグウ」という小惑星です。

リュウグウには、46億年前の太陽系が生まれたころの水や有機物が、今も残されていると考えられています。地球の水はどこから来たのか、生命を構成する有機物はどこでできたのか。こうしたナゾを解くのが、はやぶさ2の仕事です。

ナゾの手がかりになるのが、リュウグウの砂や石。とくに放射線や太陽光で風化していない、リュウグウの地下の砂や石を採取して、分析のために地球に持って帰ろうとしています。

「はやぶさ2」(左)と小惑星「リュウグウ」の模型
「はやぶさ2」(左)と小惑星「リュウグウ」の模型

着陸は「大成功」

一番のヤマ場であるミッションの記者会見が、7月11日にありました。事前にリュウグウの表面に作っておいた人工クレーターの近くに着陸し、クレーターの周りに散らばっていた地下の砂や石を採取するのが目的です。

スタッフが見守る中、着陸は「大成功」。トラブルもなく、砂や石も採取できた可能性が高そうです。

「リハーサルじゃないかと思うぐらい完璧に動きました。完璧すぎるぐらい完璧に、(はやぶさ2は)チームの思いや意図をくみ取って動いてくれました」(久保田孝・JAXA研究総主幹)

「100点満点で言うと1千点です」(はやぶさ2計画責任者の津田雄一・プロジェクトマネージャ)といった言葉も次々飛び出すほどでした。

そんな会見で出た言葉のなかに、成功につながる二つの秘訣が込められていました。

はやぶさ2の着陸が成功し、喜ぶ運用チームのメンバーら=JAXA提供
はやぶさ2の着陸が成功し、喜ぶ運用チームのメンバーら=JAXA提供

成功につながった「自己批判力」

一つ目が、「自己批判力」。事前にありとあらゆる失敗を想定して、対策を考えることでした。着陸にあたり様々な条件でシミュレーションした回数は10万回。津田さんは次のように話します。

着陸を実施するにあたっては非常に慎重にいろんなことを進めてきましたが、自己批判能力って言うんですかね。会議のなかで、みんな本当に着陸したいのかって思うぐらい意地悪な状況、よくも思いつくなという想定で、「これだったらできません」というシミュレーションを出してくるんです。それがいかに起きないことかっていうのを証明して今まで着陸に備えてきました。
津田雄一JAXAプロジェクトマネジャー(手前)
津田雄一JAXAプロジェクトマネジャー(手前)

その最大の壁は、初代を帰還させた立役者で、JAXA宇宙科学研究所の国中均所長でした。

機体が損傷する可能性は、ゼロとは言えませんでした。過去に、X線天文衛星ひとみ(プログラムミスにより2カ月で運用断念)は日本の宇宙探査全体に、大きな影響を出しました。6月6日のはやぶさ2の運用会議の出席者は100人。私以外はみな着陸しようと主張し、私1人が、それに疑問を呈して確認を求める立場でした。失敗の責任は、はやぶさプロジェクトでは取れず、組織として責任を取るしかありません。最終的に、目標に到達できる見通しを確かめて、着陸を判断しました。

国中所長は、あえて悪役を演じたのでしょうが、はやぶさ2のチームはこうした壁を乗り越え、成功にこぎ着けました。

国中均さん
国中均さん

「背水の陣を敷かないこと」

もう一つは、「背水の陣を敷かないこと」でした。

今回の着陸、はやぶさ2にとっては2回目です。はやぶさ2は、2月に1回目の着陸に成功。このときも地表の砂や石を採取できたと考えられています。再び着陸しようとして機体が壊れたり、行方不明になったりするリスクを冒してまで2回目に挑戦すべきかどうかがポイントでした。

2月にあった1回目の着陸で、はやぶさ2は、曲芸のような「ピンポイントタッチダウン」という手法を成功させていました。

これは、自転しているリュウグウの上空で、事前に投下した目印の真上ではやぶさ2を静止させつつ、着陸地点の傾斜に合わせて機体を傾け、自然落下して着陸する……という複雑な動きです。

元々、ピンポイントタッチダウンは1回目の着陸では予定していませんでした。しかし、津田さんは2回目を見越した布石を打っていたのです。

これ(ピンポイントタッチダウン)をやっておけば、2回目の着陸にも心配ない状態がつくれると考えて実行しました。1回目の着陸を成功したあとに、みんなと議論すると「これならいけるよね」となりました。これが、うまくいったところだなと思います。

あえて難易度の高い着陸に1回目から挑戦し、成功してみせた。成功の手応えを得ておいたことが、2回目の挑戦につながったと言えます。

もし、1回目に難易度の高い着陸をしておかなければ、「リスクが高すぎるので2回目はやめよう」ということになっていたかもしれません。先を予測して、余裕のある状態を作っていたのです。

目指したのは「淡々と完璧に実行できる技術」

さて、はやぶさ2は今年11~12月にリュウグウを離れて地球への帰途につきます。2020年末には、初代はやぶさと同じようにオーストラリア上空にカプセルを投下する計画です。

最後に地球に帰還するまでがミッションです。とはいえ、ヤマ場を大きなトラブルなくクリアしたはやぶさ2。ここは初代はやぶさと大きな違いです。

津田さんはこう話しました。

きちんとできている技術というのはドラマにはならないんだと思います。初代はやぶさのメンバーのチャレンジ精神であったり、パイオニア精神が皆さんに認められて、最後は映画にもなったと。こういう状況は我々から見てもうらやましい状況ではあったんですが、「はやぶさ2」が目指したのはそういうところではなくて、淡々と完璧に、気合ではなくて実行できる技術でした。それが証明されたんだと思います。だからそういうところに、なんと言うか、感動していただけるようになればいいなというふうに、私個人は思います。
天の川の前を横切った初代「はやぶさ」と回収カプセル=日本時間2010年6月13日午後10時51分から星を自動追尾して3分間露光、豪州南部グレンダンボ近郊、東山正宜撮影
天の川の前を横切った初代「はやぶさ」と回収カプセル=日本時間2010年6月13日午後10時51分から星を自動追尾して3分間露光、豪州南部グレンダンボ近郊、東山正宜撮影

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