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#5 外交の舞台裏

G20、たこ焼きと原発事故の「意外な関係」外国人記者おもてなし

国際メディアセンター(IMC)内のダイニング脇の「ライブキッチン」では、たこ焼きの実演があり、多くの外国人記者が注目していた=6月28日、大阪市、鬼原民幸撮影
国際メディアセンター(IMC)内のダイニング脇の「ライブキッチン」では、たこ焼きの実演があり、多くの外国人記者が注目していた=6月28日、大阪市、鬼原民幸撮影 出典: 朝日新聞

目次

G20サミットで各国の記者から注目を集めたのが、国際メディアセンター(IMC)内にあるダイニングです。1日3食がバイキング形式で出され、ダイニングスペースの一画には、料理人たちが実演でたこ焼きやうどん、お好み焼きを出す「ライブキッチン」も用意されました。取材の合間に大勢の記者たちが押し寄せていました。実は、そこには原発事故を意識した日本政府のおもてなしに込めた狙いがありました。(朝日新聞政治部記者・鬼原民幸)

写メ殺到した「たこ焼き」ブース

G20サミットの会場周辺は厳重な警備が敷かれ、近くには飲食店が多くありません。そのため、ほとんどの記者は会場内のダイニングを利用することになります。

外務省はメニューに工夫を凝らしました。大前提となったのが「大阪名物」です。たこ焼きを作るブースでは、携帯電話で写真撮影する外国人記者がたくさんいました。

もう一つ気を使ったのは、様々な宗教を信仰している記者たちが来ていることだったそうです。イスラム教の戒律に沿った「ハラール」や、小麦粉を使わない「グルテンフリー」のほか、ベジタリアン向けの肉を使わない料理も用意しました。会期中は毎日メニューを変え、飽きさせないようにも配慮したそうです。

ダイニングで提供されていたメニューの一部。うどん(左)は、イスラム教の戒律に沿った「ハラール」に対応しているという=6月28日、大阪市、鬼原民幸撮影
ダイニングで提供されていたメニューの一部。うどん(左)は、イスラム教の戒律に沿った「ハラール」に対応しているという=6月28日、大阪市、鬼原民幸撮影 出典: 朝日新聞

外国人記者に気を配る理由

記者の食事にそこまで気を配るのにはわけがあります。G20サミットなどの国際会議では、ホスト国が記者用の食事を会場に用意するのが通例。今回日本政府がめざしたのが「日本食のアピール」でした。

東京電力福島第一原発事故以降、日本産食品の輸入を規制している国もあります。これまでに外務省は外国人記者をわざわざ招いて、日本食の安心・安全をアピールしてきました。それが、今回はG20サミットに合わせてたくさんの記者がやって来るのです。「こんなチャンスはないと思った」と担当者は振り返ります。

結果的に、日本が振る舞った食事はおおむね好評だったそうです。「記者たちが自国に帰って、日本食の素晴らしさを広めてくれたら」(担当者)。その思いが、日本式の「おもてなし」につながったようです。

ダイニングの入り口。着物姿の担当者が案内してくれる=6月28日、大阪市、鬼原民幸撮影
ダイニングの入り口。着物姿の担当者が案内してくれる=6月28日、大阪市、鬼原民幸撮影 出典: 朝日新聞

AI、VRもアピール

日本の技術力や、環境に配慮した文化の発信にも、日本政府は力を入れました。

ダイニングの脇には企業がブースを出し、人工知能(AI)の展示やVR(仮想現実)体験、宇宙技術などを紹介しました。あえてダイニングの手前に設けることで、「食べ物にたどり着くまでに必ず目に留まるよう工夫した」(外務省担当者)といいます。

企業のブースには英語が堪能な担当者を配置。VRゴーグルをつけ、車いすレースを体験する外国人記者の姿もありました。特に日本の伝統文化、お茶を振る舞うブースは人気で、順番待ちをする人や写真撮影をする人でにぎわっていました。担当者は「ブースを取材する外国人記者もたくさんいた。狙い通り」と満足げです。

ダイニングの手前に設けられた企業ブースでは、VR(仮想現実)体験をする外国人記者の姿も=6月28日、大阪市、鬼原民幸撮影
ダイニングの手前に設けられた企業ブースでは、VR(仮想現実)体験をする外国人記者の姿も=6月28日、大阪市、鬼原民幸撮影 出典: 朝日新聞

プラスチックを隠せ!

一方、環境への配慮も大きなテーマでした。G20の首脳宣言には、海洋プラスチックごみ対策として、2050年までに新たな汚染をゼロにすることをめざす「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が盛り込まれました。「まずは現場から」。会場では様々な工夫がなされました。

例えば、ペットボトル。ダイニングを含め、会場内ではペットボトル入りの飲み物は提供されません。代わりにあちこちにウォーターサーバーが設置され、紙コップやマイボトルで水分を補給しました。

外部から持ち込まれた場合のために用意したペットボトル用のごみ箱は、広大な会場にわずか二つしかなかったそうです。ダイニングや軽食をとるスペースでも、食器は基本的に再生紙でできたものでした。

簡単な工夫のように聞こえるかもしれませんが、外務省の担当者はかなり苦労したと言います。プラスチック製品を使わないということは、湿気や乾燥を嫌うメニューを提供できないということにつながります。例えば、プリンやケーキなどは衛生上もプラスチックケースが欠かせないそうで、早々にメニューリストから消えたそうです。

ペットボトルを使わずに済むよう、会場のあちこちにはウォーターサーバーが設置されていた=6月28日、大阪市、鬼原民幸撮影
ペットボトルを使わずに済むよう、会場のあちこちにはウォーターサーバーが設置されていた=6月28日、大阪市、鬼原民幸撮影

自動販売機に冷ややかな目

ただ、環境対策がG20の目玉になったことについて、一部の海外メディアからは厳しい指摘もありました。

米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は6月27日、海洋プラスチック問題を紹介。昨年、ロシアで開かれたサッカー・ワールドカップで、観客の日本人が試合終了後にスタンドのごみを拾ったエピソードを引き合いに、「日本人は丁寧なごみの分別で称賛されることが多い」と書きました。

一方でこの記事は、日本のスーパーにはプラスチック袋で個別包装された野菜が並び、街中にはペットボトルの飲料を売る自動販売機があふれていると指摘。「プラスチックの消費は日本文化に深く埋め込まれている」と問題視しました。

実際、G20の会期中にもこうした日本の問題を表すような出来事がありました。日本政府関係者によると、安倍首相や日本政府代表団が宿泊したホテルでは、毎朝、新聞がわざわざプラスチック袋に入れられて部屋のドアノブにかけられていたそうです。この関係者は「外国のホテルでは麻の袋に入れることがある。プラスチックの消費に対する日本の認識は遅れていると感じた」と言います。

今回のG20サミットは、どこまでプラスチックを使わずに国際会議を開けるか、という試みでもあったそうです。課題は残るものの、担当者は「やればできることがわかった」。来年の東京五輪・パラリンピックや、2025年の大阪万博などのビッグイベントで、今回の「成果」がより進化した形で表れることを期待したいと思います。

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