連載
#1 #父親のモヤモヤ
「仕事優先」は男らしさの刷り込み? 「父親のモヤモヤ」語ってみた
今日は「父の日」です。記者(38)は、同い年で共働きの妻、保育園に通う娘(3)と3人暮らし。父親として、家事や育児の分担をしていますが、仕事とのやりくりで「モヤモヤ」することもあります。その正体について、「男らしさ」を研究する専門家と考えました。
話を聞いたのは、「『男らしさ』の現象学試論」などの論文がある国学院大学准教授(哲学)の小手川正二郎さん(36)。論文では、仕事優先といった「男らしさ」の呪縛や、男性優位の社会で「父親」が生きづらさを訴えることにひそむ「自己欺瞞(ぎまん)」について触れています。「自分のモヤモヤを聞いてほしい」と小手川さんを訪ねました。
男らしさは、時代や地域によってさまざまです。「仕事をしてお金を稼ぐこと」のほか、「妻に威張り散らす」ことを男らしさと捉える人もいます。
ただ、男らしさには社会的に優劣があって、社会学者のコンネルは、先進国ではホワイトカラー、既婚者などは「覇権的な男らしさ」と位置づけられ、ブルーカラーやニート、独身者などは、対照的に「従属的な男らしさ」とされると指摘しています。
長く働けることが「使える」とされる。働き手自身もそう思い、評価を落とすのではないかと気にしてしまいがちです。ただ、妻から見れば、家事や育児を平等に分担するのは当然のことです。そこで、職場と家庭とで板挟みになって葛藤してしまうのだと思います。
仕事と家庭とのバランスに葛藤を抱え、子育ての主体と見られず疎外感を覚える――。共働き世帯が増え、家事や育児を分かち合うようになり、「父親」もまた、このようにモヤモヤすることがあります。
一方、「ワンオペ育児」に「上から目線」と、家事や育児の大部分を担い、パートナーとのやりとりに不快感を覚えるのは、多くの場合「母親」です。父親のモヤモヤにぴんとこず、いら立つ人もいるでしょう。「父親がモヤモヤ?」と。
父親のモヤモヤは、多くの母親がこれまで直面した困難の追体験かもしれません。あるいは、父親に特有の事情があるかもしれません。いずれにしても、モヤモヤの裏には、往々にして、性別役割や働き方などの問題がひそんでいます。
それらを語り、変えようとすることは、誰にとっても生きやすい社会づくりにつながるはずです。語ることに躊躇しながらでも、#父親のモヤモヤ について考えていきたいと思います。
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