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「おなかに赤ちゃんがいるだけで…」中学生が妊婦やベビーカーを体験

7キロのジャケットを着てしゃがんでみると…

妊婦体験をする中学生たち=2025年10月、東京都内の中学校
妊婦体験をする中学生たち=2025年10月、東京都内の中学校

目次

ふだん赤ちゃんや育児に触れる機会が少ない中学生に向けて、東京都内の中学校で「赤ちゃんを知る授業」が開かれました。新生児の大きさの人形を抱っこしたり、妊婦ジャケットを着てみたり。なじみのない体験を通して、赤ちゃんを育てる人たちへ思いをはせました。

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赤ちゃんの人形を抱っこ

「街なかで妊婦さんを見たことがある人はいますか?」

10月中旬、東京都江東区の中学校。3年生の家庭科の授業で、「赤ちゃんを知る授業」が開かれました。講師を務めたスタッフが問いかけると、ほとんどの生徒が手を挙げました。

「お伝えしたいのは、みなさんも最初は赤ちゃんだったということです。赤ちゃんはお母さんのおなかの中で10カ月かけて成長します。最初の受精卵は0.2ミリほどの大きさです」

講師はそう話し、受精卵がおなかの中で少しずつ大きくなっていく様子をスライドで示しました。

説明を聞いた生徒たちは、出生時の平均体重である約3000gの人形を抱っこしましたが、持ち方がおぼつきません。周囲のスタッフに、赤ちゃんの頭を腕で支え、体を包み込むように抱っこする方法を教わっていました。

スタッフに教えられながら赤ちゃんの人形を抱く生徒
スタッフに教えられながら赤ちゃんの人形を抱く生徒

7キロの妊婦ジャケットに苦戦

「赤ちゃんを知る授業」は、ベビー用品大手・ピジョン(東京都中央区)が2021年から全国の中学校を中心に実施しています。2025年3月時点で、47都道府県の約500校、約4万1000人の生徒が受講したそうです。今回の授業では、ピジョンの担当者が講師を務め、3年生6クラス約200人が赤ちゃんの特徴や育児について学びました。

授業では、妊婦や育児を体験する時間もありました。

まず、代表の生徒5人が、胸やおなかに重りがついたジャケットを身に着け、妊婦体験をしました。妊婦ジャケットの重さは約7キロで、妊娠後期の妊婦を想定しています。

生徒たちからは「重い」という声が。しゃがんで靴ひもを結ぶ場面では、「よいしょ」「こわい」「無理」と苦戦する様子が見られました。

教室内の短い距離を歩くのも一苦労です。体験した女子生徒は「ふだんは注目していなかったけれど、おなかに赤ちゃんがいるだけで日常の動作が難しい。ちゃんと気遣おうと思いました」と話しました。

次に、別の生徒5人がベビーカーを押して教室を一周しました。途中、駅の改札を模した幅55cmの通路では「通りにくい」という声も上がりました。

ベビーカーを押した男子生徒は「シンプルなことだと思ったけど、実際にやってみると狭い通路では気を付けても横にぶつけてしまい、難しかった」と話しました。

その後、生成AIで作成した動画を見て両親の心境を学び、周囲の人がどのような行動をとると助けになるのかを考えました。

最後に、授業で学んだことをチームで「赤ちゃん川柳」にまとめました。「赤ちゃんの 仕草は気持ち 気づいてね」「席ゆずり みんなの顔に 笑顔咲く」など、赤ちゃんにやさしい地域社会にするための言葉を書き出していました。生徒たちの川柳は、地域の図書館やスーパー、駅などに掲示されるそうです。

授業を受けた女子生徒のひとりは、「5個下に弟がいて赤ちゃんのときも見ていたけど、知らないことがたくさんありました。赤ちゃんってこんなに重いんだなと思いました」と話していました。

代表の生徒が実際にベビーカーを押して教室を一周しました
代表の生徒が実際にベビーカーを押して教室を一周しました

やさしく微笑みかけるだけでも

授業を担当するピジョンのブランドデザイン部・半澤ふみ江さんは「日ごろ赤ちゃんと触れ合う機会が少ないであろう子どもたちに、赤ちゃんを身近に感じてもらい、街なかで赤ちゃん連れのご家族に出会ったときにやさしい行動をとってもらうことを目指しています」と話します。

昨年度に受講した生徒4873人を対象にしたアンケートでは、「日頃の生活で、赤ちゃんに会ったり、遊んだり、お世話をしたりする機会はありますか?」という質問に対し、23.7%が「遊んだことやお世話をしたことがない」と回答しました。「1年に1回以上接する」と答えた生徒は24.4%、「1ヵ月に1回以上接する」と答えた生徒は9.1%いました。

生徒のなかには、授業のあと「電車内で妊婦を見かけて席を譲った」と教師に伝えたケースもあったそうです。

半澤さんは「実際の行動が難しかったとしても、『やさしく微笑みかけるだけで十分だよ』と伝えています」と話します。実際、0~3歳の子どもがいる親1000人を対象にした調査では、「今後あったらうれしい配慮・手助け」について、45.1%が「赤ちゃんが泣いたときなどに微笑みかけたり、静かに見守ってくれる」ことと答えました。

「赤ちゃんを知る授業」は次年度以降も続けていくといいます。

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