ネットの話題
傘を後ろに振る、主語がデカい… 「絶滅してほしい生物図鑑」が話題
「絶滅してほしい生物図鑑」が、ツイッター上で注目を集めています。
ネットの話題
「絶滅してほしい生物図鑑」が、ツイッター上で注目を集めています。
傘を後ろに振る「カサウシロフルス」。失敗をした人に寄ってたかって石を投げる「イシナ原人」――。そんな生き物を集めた「絶滅してほしい生物図鑑」が、ツイッター上で注目を集めています。作者は「あたりまえポエム」や「54字の物語」で知られる企画作家です。彼の発想の源について話を聞きました。
絶滅してほしい生物図鑑 pic.twitter.com/yAO8y93WOs
— 氏くん (@ujiqn) 2019年5月23日
先月23日から24日にかけて、「絶滅してほしい生物図鑑」というタイトルでツイッター投稿された計6種類のイラスト。
それぞれ以下のように名前と特徴が記されています。
【シュゴデカウルス】 「男という生き物は……」「女はみんな……」など、話の主語がでかすぎる恐竜
【カサウシロフルス】 傘を横向きに持って、前後に振って歩く翼竜。とても危険
【ステルスバナー】 普段は隠れているが、指の気配を感じると突然ふわっと現れる広告類生物
【イシナ原人】 燃えているものを見つけると遠くから石を投げつける旧人類
【マナーキビシ杉】 奇妙なルールに支配されている針葉樹群。若い個体が古い個体より成長できない。
【ウッカリ湿原】 足を踏み入れると、つい不適切な発言が漏れてしまう。マニュアルがあっても攻略できない
これらのイラストに対して、「うまい」「ステルスバナーすごい分かります」「インスタ蠅も追加しよう」といったコメントが寄せられ、最初の投稿はリツイートが4万、いいねは15万を超えています。
作者は企画作家で株式会社「考え中」の代表・氏田雄介さん。広告や書籍やゲームなどのコンテンツの企画・制作を手がけています。
ごく当たり前のことを詩的な文体でつづった著書「あたりまえポエム 君の前で息を止めると呼吸ができなくなってしまうよ」(講談社)や、1話が54文字の超短編集「意味がわかるとゾクゾクする超短編小説 54字の物語」(PHP研究所)などでも知られています。
どのような経緯で「絶滅してほしい生物図鑑」を発案したのか? ユニークな発想の源には何があるのか? 氏田さんに話を聞きました。
😇💬#54字の物語https://t.co/KDNNvvHmus#ツッコミかるた #動画アップしてみた#大統領トランプ #しりとりスピードhttps://t.co/mJkr2fUXUp#あたりまえポエムhttps://t.co/vGESi5NEhD#株式会社考え中https://t.co/wl7pLcIYhz#チョコレイト参戦https://t.co/VZMq4m2Rn9 pic.twitter.com/kOqaK98Dlb
— 氏くん (@ujiqn) 2019年3月31日
――「絶滅してほしい生物図鑑」を描こうと思ったきっかけは
愛されるキャラクターを作りたいと思っていて、常日頃から試行錯誤をしていました。
SNS上では、「怒り」や「不満」は良くも悪くも共感を得やすいという感覚があったので、ネガティブなものをテーマにキャラクターをつくってみようと思い立ち、iPadで描いてみたのがきっかけです。
平成から令和に変わる時代の節目だったこともあり、「こんな考え方や慣習は平成に置いていきたかったな……」と考えることが最近多くなりました。そこで、そんな「過去のもの」にしたい考え方や慣習を「古代生物」に喩えてみました。
現代の一休さん pic.twitter.com/1VdNAJ4tw5
— 氏くん (@ujiqn) 2019年5月12日
【シュゴデカウルス】 「男(女)は~」「日本人は~」のように主語が大きすぎるせいで、議論の本質を見失ったり、多くの人を傷つけてしまったりしている場面をよく見かけます。それを、頭の大きな石頭恐竜にしました。
【カサウシロフルス】 普段から危ないなーと思っていたので。長い翼に見立てて、翼竜にしました。
【ステルスバナー】 システムの抜け穴をかいくぐった全く本質的ではない仕組みだと思います。カンブリア紀の海を泳ぐ生物に見立ててみました。
【イシナ原人】 失言をしたり、ちょっとした失敗をしてしまった人を寄ってたかって叩く光景を、毎日のように見かけます。人格否定をしているような人を見ると、とても悲しい気持ちになります。旧人類という設定にしました。
【マナーキビシ杉】 実情に即していないビジネスマナーは多くの機会を奪っていると思います。これは、成長できずに絶滅した古代の杉にしてみました。
【ウッカリ湿原】 最近「失言マニュアル」が話題になっていたので。考え方を変えない限り、失言を防ぐのは難しいと思っているので、回避不能な魔の領域っぽく描いてみました。
――お気に入りは
「カサウシロフルス」です。このイラストを見た人が、今後傘を持ち歩く時に今までよりも周りに気を遣うようになったらいいなと思っています。
――描く上で心がけた点は
「罪を憎んで人を憎まず」という言葉がありますが、あくまで無くなってほしい考え方や行為について描くことに徹して、誰かを傷つけたりおとしめたりしないように気をつけました。
――このイラストを通じて伝えたかったメッセージは
「罪を憎んで人を憎まず、むしろちょっと愛する」ということです。嫌なことがあったり、怒りたくなったり、ネガティブな感情が芽生えたらそのまま外に出さずに、一度頭の中でキャラクターにしてみるとちょっと可愛く思えるのかなと思います。
名言っぽいことを言うヒツジ pic.twitter.com/cJYGE3Swov
— 氏くん (@ujiqn) 2019年5月16日
――続編の予定は
世の中にあまり不満もないのですが、もし続編を望んでいただけるのであれば続けたいです。もっと世の中を良くするポップなキャラクターにしたいですね。
――「あたりまえポエム」や「54字の物語」など、氏田さんのユニークな発想の源には何があるのでしょうか
強いて言うなら、「違和感」と「ネガティブ」です。
例えば、「あたりまえポエム」は、中高生に人気と言われる歌詞やポエムを読んだときの、「これは文体の雰囲気に惑わされてるだけじゃないか?」という違和感から発想しました。
「54字の物語」は、テキスト作品をつくりたいけど長い文章を書く自信はない。Instagramに写真を上げたいけど写真映えする生活を送っていない。という2つの後ろ向きな気持ちがきっかけとなり、「SNS式短編小説」として生まれました。
元陸上部の校長先生 pic.twitter.com/gfFAkCUp9T
— 氏くん (@ujiqn) 2019年5月12日
――「絶滅してほしい生物図鑑」に多くの反響が寄せられていることについては
皆さんの中にある負の感情を引き出してしまったのは、少し複雑な気持ちですが、「このキャラクターはかわいいから絶滅してほしくない」とか、「心が軽くなった」といったコメントをいただけたのは良かったです。
心の中に沈んでいたモヤモヤをキャラクターにぶつけることで、少しだけでも心が晴れたなら嬉しいです。
◇ ◇ ◇
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