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この考え方、待っていた!投票が面倒くさくならないシンプルな方法

投票する人たち
投票する人たち

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告白します。私、投票しなかったことがあるんです。新聞などで取り上げられる投票率の低さ、そこには、かつての自分もいました。いったいなぜ投票しないのか? 取材をする中、一人の大学教員に巡り合いました。「先生、若者が投票に行かない理由って何ですか?」。そんな私の質問に返ってきた予想外の答え。「何も考えられなくても、結果が気になるようになればいい」。かつての自分に教えてあげたい「投票の盛り上がり方」を聞きました。(朝日新聞名古屋報道センター記者・西岡矩毅)

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投票しない若者は、私自身でした

取材のきっかけは2月の愛知県知事選でした。

投開票日に私は名古屋市内の小学校などで出口調査をしていました。来る人来る人、自分より年上であろう有権者ばかり。その中に、家族と一緒に来たジャージー姿の若者もいて、その姿に負い目を感じました。

投票しない若者の一人であった私自身、なんで投票しなかったのかというと、何を判断材料にして投票すべきか、わからなかったからです。

23歳になった今、思い返すと、そこには投票への不安がありました。

候補者の違いといっても、自分の持っている情報だけでは、正しい判断ができているのか。

政党が前面に出てくる国政選挙と違い、市議や町議といった地方議会の選挙では、候補者一人ひとりの政策の違いを知るのは難しいと感じます。

同世代の若者はどのように感じているのでしょうか。

投票に行かなかったことがあります
投票に行かなかったことがあります

「面倒くさい」「変わらないと思う」

名古屋市の繁華街を中心に3月下旬、18~25歳の30人に「統一地方選の投票に行きますか」と聞いてみました。

「行く」もしくは「行ってみたい」と答えたのは13人。4割を超えました。予想していたより多いです。

「投票に行かない」と答えた人の理由は次のようなものでした。

「面倒くさい」(19歳の専門学校生など)

「選挙の仕組みがわからない」(18歳の高校3年生など)

「住民票がない。もう少し楽に投票できる仕組みになればいい」(23歳のアパレル店員)

「今の政治に不満はあるけど、投票に行っても変わらないと思う」(23歳の会社員)

……といった声を聞きました。

若者に話を聞いた名古屋市中区の栄広場=名古屋市、西岡矩毅撮影
若者に話を聞いた名古屋市中区の栄広場=名古屋市、西岡矩毅撮影

カバンから取り出した「池上本」

一方、「行く」もしくは「行ってみたい」と答えた13人の中で、ある大学生の答えが印象に残りました。

公園で休んでいた、就職活動中の女子大学生は「政治のことは全然分からないけど、大学の授業で、若者が投票しないから年配の人向けの政策ばかりになると言われた」と、カバンから政治の仕組みについて書かれた池上彰さんの本を出してくれました。

そんなことを授業で取り上げる先生なら、若者の政治意識についてや、私の投票への迷いの答えを教えてくれるのではないか――。早速、学生さんに先生の名前を教えてもらい、訪ねてみました。

若者から話を聞いたガーデンふ頭交差点付近=名古屋市、西岡矩毅撮影
若者から話を聞いたガーデンふ頭交差点付近=名古屋市、西岡矩毅撮影

投票に行かない理由って何だと思いますか?

訪ねたのは南山大学(名古屋市)の副学長で、総合政策学部の星野昌裕教授(50)です。

西岡「街頭でのアンケートで学生さんに話を聞いたら、星野先生の授業が面白いと聞きました」

星野「200人くらいが受講する政治変動論の講義の学生ですかね。早速、政治について考えてくれているなんて、うれしいですね」

西岡「政治変動論?先生のご専門は?」

星野「国際政治や比較政治ですね」

西岡「日本の選挙じゃないんですね。それなのに、学生さんに選挙の話を?」

星野「中国の政治で民主主義について話します。学生にはなかなか難しいようで。まずは日本の民主主義について話します」

単刀直入に聞いてみました。

西岡「先生、若者が投票に行かない理由って何だと思いますか」

若者の投票行動について話を聞かせてくださった南山大学の星野昌裕教授=名古屋市昭和区山里町、西岡矩毅撮影
若者の投票行動について話を聞かせてくださった南山大学の星野昌裕教授=名古屋市昭和区山里町、西岡矩毅撮影

「立候補することです」

星野「プレーヤーになっていないことではないですかね。投票しても、どうなるかわからなかったら、面白くないですよね」

西岡「プレーヤーになるにはどうすればいいんでしょうか?」

星野「立候補することですね」

西岡「え!」

星野「しても大丈夫ですよ。選挙に出れば、いろいろ考えますし」

西岡「そうですけど…」

星野「友達が選挙に出てたら、投票に行きませんか」

西岡「確かに行きますけど……。もう少し、ハードルを低くしていただければ」

星野「投票して、その候補者が通ったか落ちたかを、ゲーム感覚で見られたら盛り上がりますよね」

西岡「ゲーム感覚というのは、点数を競うゲームで、クリアできたかどうか結果を待つ感じですね。それはわかります」

星野「何も考えられなくても投票することで、少なくとも結果が気になるようになります。結果が気になると、その人で良かったかどうか考えますよね。もし、その人じゃなかったと後悔したとすれば、次の選挙で別の人に投票しようと考えられます」

西岡「次の選挙のために投票すると考えてもいいんですね」

星野「それでもいいんですよ」

以前の投票では、自分の決断が正しくあるべきだと思い、正解を求めた結果「間違っちゃいけない」と投票できなかった時がありました。星野先生とのやりとりでわかったことは、正解はないということです。今ある情報で、投票し、スタートラインに立つ。それが次の選挙につながると気づきました。

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