close

閉

これフカボリしてほしい

リクエストする

閉

2019年04月17日

受けた相談1000件以上 野球「イップス研究家」が語る人生最悪の試合


  • 4161

慶応高校時代の谷口智哉さん(左から2番目)はイップスに苦しんだ

慶応高校時代の谷口智哉さん(左から2番目)はイップスに苦しんだ

最新ニュースを受け取る

 「イップス」という言葉をご存じでしょうか。スポーツなどで「今まで何の気なしにできていたことが、何らかの重圧などで、思い通りにできなくなる」状態を指します。野球では、特にキャッチボールで起きることが多いです。

 当時はつらくても、現在は乗り越えた経験を生かし、「LINE」などでは計千件以上も相談に乗っている谷口智哉さん(24)にイップス体験談を聞きました。(朝日新聞スポーツ部記者・井上翔太)

「飛んでくるな…」

 神奈川の名門・慶応高校野球部だった谷口さんが、イップスに陥った決定的な「事件」は、高校2年の秋でした。

 神奈川県大会の3回戦。控えの外野手だった谷口さんは、七回の守備からレフトの位置に入りました。

 このときすでに「常に重圧があって、野球をつまらなく感じていた時期」。投げる感覚に「あれっ?」と思うことが多かったようです。守備位置について感じたのは、後ろ向きな思いでした。

 「飛んでくるな……」

 なぜか、そういうときに限って、打球が飛んでくるもの。1死一塁から、相手がフライを打ち上げて、びっくりしたそうです。

 後方への飛球だと思って、背走。しかし振り返ると、思ったほど飛んできていませんでした。
 
 「やばい!」
 
 慌てて前進して、頭から飛び込みましたが、間に合わず、打球は後ろを転々。内野手への返球も暴投となり、ピンチを広げてしまいました。

慶応高校時代の谷口さん。代走からの出場も多かった

慶応高校時代の谷口さん。代走からの出場も多かった

出典: 谷口さん提供

「サイン見逃したんじゃ…」

 守備が終わり、ベンチに戻ると「準備しとけよ」「切り替えろ」と発破をかけられた谷口さん。すると打席で信頼を取り戻すチャンスが、やってきました。

 1死一塁、サインは「送りバント」。
 チーム内での谷口さんの立場からすると、「成功させて当たり前」と思われる作戦です。

 1球目、ファウル。
 2球目、ファウル。

 追い込まれ、サインが「打て」に変わりました。
 3球目。変化球にバットを合わせ、レフト前ヒット!
 
 一、二塁にチャンスを広げましたが、一塁ベース上の谷口さんは「まだ体が浮いている」と頭が真っ白。
 ぼーっとした感覚だったそうです。ここにまた落とし穴がありました……。

 「ん、サインを見逃したんじゃないか……?」

 走者は塁上にいるとき、ベンチから出されるサインを確認します。まだ緊張がほぐれていない谷口さんは、ベンチを見ていなかったことに、焦りを感じてしまったようです。

 でも、少し冷静に考えると分かりますが、リードしている展開の1死一、二塁で、作戦が繰り出されることは、まずありません。
 ただ、このときの谷口さんに、そこまでの余裕もありませんでした。

慶応高校時代のチームメートと

慶応高校時代のチームメートと

出典: 谷口さん提供

監督の表情は「マジか、こいつ…」

 「事なきを得るために、二塁ランナーを見ようと思ったんです」

 当時、慶応高校は、投手の投球と同時に、スタートを切るようなリードを取ることが徹底されていました。二塁ランナーを見ていた谷口さんは、その動きが「三塁に走った!」と見えてしまい、自身は慌てて、二塁に向かって全力疾走しました。

 結果は、言わずもがなです。

 投球後、捕手から一塁に送球され、谷口さんは一、二塁間に挟まれました。
 その間に、二塁走者が三塁を狙いましたが、タッチアウト。

 二塁ベースに到達した谷口さんは、ベンチで「マジか、こいつ」というような監督の表情を、今でも覚えているそうです。試合には勝ちましたが、自信は地に落ちました。

イップスは才能である

今では自身の体験をもとに、乗り越えるヒントを伝える

今では自身の体験をもとに、乗り越えるヒントを伝える

 「本番で結果が出せない」「メンタルが弱い」

 半ば自暴自棄に近い状態となり、練習でもキャッチボールが、思うように投げられなくなりました。
 野球部を引退するときは、他のチームを偵察する役割。

 「何のために野球をやっているのか。全く実力を発揮できていない」

 大学で野球を続けると決意し、わらにもすがる思いで、イップスのケアをする専門家のもとを訪ねました。
 
 そこで気付かされたのが「イップスは才能である」ということ。

 「野球を真剣にやっていない選手は、そもそもイップスにならない。これを乗り越えたら、一つ上のステージに行ける」

 固定観念をすべて捨て、自分の体に合った投げ方、ボールの握り方、目の使い方を「ネットに向かって投げながら、研究していきました」。結実したのは慶大4年のとき。合宿で行われたノックで、センターから三塁に理想通りの強い送球を連発。コントロールも抜群だったそうです。

 「覚醒です。大学で試合には出られなかったけど、イップスを振り払った達成感はありましたね」

投げ方を助言する谷口さん(左)

投げ方を助言する谷口さん(左)

出典: 谷口さん提供

内定辞退してまで

イップスに悩む球児は多い。谷口さん自ら直接話を聞くことも

イップスに悩む球児は多い。谷口さん自ら直接話を聞くことも

出典: 谷口さん提供

 自身の経験を踏まえながら、今でもイップスに苦しむ人たちに寄り添いたい――。

 就職が決まっていた企業の内定を辞退して、2017年からツイッター、LINE、YouTubeなどで発信を続けています。

 悩んでいる選手には実際に会い、彼らの経歴や「どんな選手になりたいか」などの聞き取りを行うことも。

 「気持ちの持ち方で、活躍する可能性を逃している選手も多いのでは……」

 そんな思いが、今の谷口さんを突き動かしています。

「トモヤ@イップス研究家」としてチャンネルを開設している谷口智哉さんのyoutube動画

野球少女からの「ギャップ」が話題、女子大生モデルの竹本さん
前へ
野球少女だった中学時代と、読者モデルの今の「ビフォアフ」が話題になった竹本萌瑛子さん
次へ
1/7
前へ
次へ


コメント

あわせて読みたい

小2で英検2級!インドの子と学ぶインターナショナルスクールの現実
小2で英検2級!インドの子と学ぶインターナショナルスクールの現実
「コンプレックスを個性に」10代の悩みに登山家の野口健さんの答え
「コンプレックスを個性に」10代の悩みに登山家の野口健さんの答え
NEW
「天引き後の給料」を2文字で表現 創作漢字が話題の書道家に聞いた
「天引き後の給料」を2文字で表現 創作漢字が話題の書道家に聞いた
国賊・売国奴……ネットで暴れる権威 自尊心...
国賊・売国奴……ネットで暴れる権威 自尊心...
「Nikonようかん」通販終了へ 1973年発売の逸品、その歴史を聞いた
「Nikonようかん」通販終了へ 1973年発売の逸品、その歴史を聞いた
「9月1日」樹木希林さんが語りかけたこと 娘が明かした病室での涙
「9月1日」樹木希林さんが語りかけたこと 娘が明かした病室での涙
手術を40回以上繰り返した顔 恋に臆病だっ...
手術を40回以上繰り返した顔 恋に臆病だっ...
カバがスイカ食べるだけ… 何度も見てしまう動画「誰も損しません」
カバがスイカ食べるだけ… 何度も見てしまう動画「誰も損しません」
大阪駅地下通路に映画「ライオン・キング」巨大モザイクアート出現!
大阪駅地下通路に映画「ライオン・キング」巨大モザイクアート出現!
PR
「ロスジェネにつながりはいらない」赤木智...
「ロスジェネにつながりはいらない」赤木智...
東京2020オリンピック 聖火ランナー募集
東京2020オリンピック 聖火ランナー募集
PR
寝相が悪すぎるオオウナギ! 底でひっくり返ったまま…水族館に聞く
寝相が悪すぎるオオウナギ! 底でひっくり返ったまま…水族館に聞く

人気

もっと見る