IT・科学
なぜ? マックアプリが「ヘルスケア」アプリユーザーに人気の理由
ヘルスケアやフィットネス関連のアプリのユーザーの3人の1人が、その努力に水を差すようなアプリを利用していることがわかりました。それは……「マクドナルド」です。3万人分を調査したアプリのデータからは、思わずうなづく人間味あふれるリアルが見えてきました。
アプリの実態調査は、電通デジタルとアプリデータの分析をするフラー(千葉県柏市)が実施しました。
Google Playの医療、健康&フィットネスカテゴリーのアプリのうち、「ダイエット」「体重管理」「フィットネス」という文言を含むアプリを 「ヘルスケア&フィットネスアプリ」と定義し、対象となる75タイトルを抽出。モニターユーザー約3万人分の2016年6月〜2018年7月の利用ログを両社で分析しました。
調査の結果、ヘルスケア&フィットネスアプリのユーザーの3人に1人が「マクドナルド」のアプリを月に1回以上利用していることが分かりました。
ヘルスケア&フィットネスアプリのユーザーが最もよく利用するフード系アプリはマクドナルドアプリで、利用率は35%に上りました。これは、スマホユーザー全体のマクドナルドアプリの平均利用率を5.1ポイント上回る数字でした。
マクドナルドアプリ以外で人気だったのは以下のものでした。
健康を気にしているユーザーの中では、料理に関するアプリが上位を占めた一方、外食系アプリも存在感を示しました。
調査では、2018年7月のスマホユーザー全体に占めるヘルスケア&フィットネスアプリの利用率は10%と低いものの、この2年で2倍に増えていることも分かりました。
それにしても、マクドナルドアプリはなぜ、ヘルスケア&フィットネスアプリユーザーの心を捉えているのでしょうか?
ファーストフードとダイエットは一見すると真逆のイメージです。そこで鍵になるのが「記録機能」です。
ちょうど1年前の2018年1月、身長177センチの私の体重は、わずか4カ月で7キロ増の95キロに達しようとしていました。通勤時間が減り歩く時間が少なくなったことが原因だと思います。
このままではいけないと思い、ダイエット記録アプリ「Noom」をダウンロードして課金し、食事制限と運動時間の管理を2018年1月から始めました。
Noomを使っていると、ダイエットをしているというよりも、ゲームをしている感覚になります。
食べたものを記録して、カロリーと栄養素を積み上げ、「今日はこれを食べたらオーバーしそうだから、代わりにあれを食べるか」などと考えながら、定められた範囲の中で自分が一番満足する食生活を実現するチャレンジを毎日するからです。
これは、ゲームの要素を取り入れてアプリなどのサービスの利用促進や課題解決につなげる「ゲーミフィケーション」と呼ばれるものです。
ゲーム感覚でカロリー制限をしていった結果、1〜6月の半年でで体重は82キロまで落ちました(現在はちょっと戻して86キロくらいをうろうろしています)。
自分自身がヘルスケア&フィットネスアプリのコアなユーザーとなって気づいたことがあります。ヘルスケア&フィットネスアプリを使っている人は健康志向が高いはずだから、マクドナルドアプリは使わない…のではなく、むしろその逆。健康志向が高いからこそ、積極的にマクドナルドアプリを使うのかもしれない、ということです。
Noomのようなダイエット記録アプリを使っていると、ファーストフードや外食そのものが悪なわけではなく、定められたカロリーや栄養素の範囲で食べたいものを食べれば問題ないということが分かってきます。
その日に食べたものをちゃんと管理できていれば、たとえハンバーガーを食べたとしても、運動やその他の食事で調整ができるのです。
マクドナルドアプリには、ダイエットで重要なカロリー情報や栄養素の情報はもちろんのこと、アレルギーや原材料の原産国に関するデータまでメニューごとに非常に細かな情報があります。
情報へのアクセスはメニューをクリックして、情報タブをクリックするだけ。本気でカロリーを記録したい人にとって重要な情報です。実際、注文前にアプリを開いてハンバーガーやチキンナゲットのカロリーを真剣に確かめるようになりました。
実は、こういったカロリーや栄養素をすぐに調べられることって、他のファストフード店のアプリとの大きな差別化につながっています。
今回の調査で利用率の上位にランクインした他の外食系アプリもカロリーなどをアプリ経由で確認できますが、マクドナルドアプリに比べて手間と時間がかかります。
例えば、すかいらーくアプリはメニューを選択してから12回、クリックが必要です。その間に、アプリで選択したメニューをブラウザでふたたび検索し直すという二度手間も発生しています。
スシローもアプリ内のメニューにはカロリーは載っています。ただ、原産国などは別のページに遷移する必要があります。
健康志向が高いヘルスケア&フィットネスユーザーの利便性を最も追求しているのは、実は最も対極にありそうなマクドナルドアプリだったようです。
ヘルスケア&フィットネスアプリのコアユーザーであればあるほど、真剣にアプリを使ってカロリーを調べ、がんばったご褒美として、ハンバーガーを美味しく食べる。調査結果とアプリの性能からは、そんなユーザーの生態が見えてきます。
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