話題
DeNA守護神「遠ーい」と語る練習場、移動に人柄 ハマの番長は…
2月はプロ野球の春季キャンプが、各地で行われています。沖縄県宜野湾市でキャンプを張る横浜DeNAベイスターズは、今年からブルペンとサブグラウンドが遠くなりました。守護神も「遠ーい」とつぶやくほど。そこで移動に採り入れられたのが、レンタサイクルです。あえてママチャリの選手や「ハマの番長」は唯一、自前の自転車を使うなど、移動にも選手・コーチの人柄がにじんでいました。(朝日新聞スポーツ部記者・井上翔太)
これまではメイン球場の右中間後方に、ブルペンとサブグラウンドはありました。しかし現在は、新しい室内練習場の建設工事が行われています。
宜野湾市によると、完成予定は今年10月。その後、様々な検査を経て、実際に使われ始めるそうです。
では、新しいブルペンとサブグラウンドはどこに?
答えは、投手陣がランニングなどをする芝生「多目的広場」のさらに向こう側です。メイン球場のネット裏から、直線距離で約300メートル、歩くと4分ほどはかかります。
私が下見などでキャンプ地を訪ねた1月30日、ツイッターでこれを紹介しました。すると抑えの山崎康晃投手から返信が…。実際に移動したとみられる動画が、「ブルペン遠ーいですね」というコメントとともに、届いたのです。
ブルペン遠ーいですね💦 pic.twitter.com/CZw55HQ6k5
— 山﨑 康晃 (@19Yasuaki) 2019年1月30日
そこで、練習中の移動手段に選手が使っているのが、球団が用意した「レンタサイクル」です。
ただ、すべての選手に1台ずつ割り当てられているわけではありません。選手向けのスポーツバイクが10台ほどの他、球団職員用のママチャリも10台弱。1軍キャンプに参加している投手は19人。ブルペンで投球練習をするときは、3人の捕手もやってきます。
計22人が「余っていれば自転車を使う」という運用。時として、自転車が足りなくなる場合があります。
東洋大から昨秋のドラフト1位で入団した上茶谷大河投手は、ブルペンで投げ終わった後、自転車が余っていたのに、芝生を歩いていました。新人だから、気を使っているのか「先輩のために残しているの?」と聞くと、首を縦に動かしました。
その後、再びブルペンに向かう時に聞いてみると「荷物があるので、乗ると危ないと思って」。確かに、このときはシャドーピッチングのため、グラブとスパイク、タオルを持参。両手がふさがっていました。
ただ、スポーツバイクには、かごが付いていないのに、上手に乗りこなす投手もいました。上茶谷投手と同学年の5年目、飯塚悟史投手です。
その手法は、両方のスパイクをハンドルに履かせるように装着させるというもの。どんな状況でも臨機応変に対応する力は、プロでのキャリアの長さたるゆえん?
他にはグラブとスパイクを片手で持ちながら、ハンドルを握る投手も。手が大きいプロ野球選手ならではの操作法です。
戸柱恭孝選手は、スポーツバイクに乗らず、あえてママチャリを使っていました。
マスクなど、投手以上に荷物が多い捕手は、前かごがあった方が安心のようです。ただ、行きも帰りもプロテクターとレガースの防具は着けっぱなし。その姿は、何ともシュール。
カメラを向けると「お、朝日新聞さん、いいの撮れましたか? 使ってくださいよ」と明るく話しかけられました。使ってますよ~。
使い方は、人それぞれ。
雨が多かったキャンプ前半、国吉佑樹投手は自転車で移動していたところ、泥はねで背中が汚れてしまったそうです。そのため雨のときや、水たまりがあるときは、歩いて移動していました。
話を聞きながら並んで歩いていると、自分用の1台を室内練習場のそばにあるテントに隠していた三嶋一輝投手が、追い越していきました。その背中には、はねた泥がいくつも付着していました。
整ったリーゼントから「ハマの番長」と呼ばれ、今季から投手コーチに就任した三浦大輔投手コーチだけが唯一、自前の自転車を使用。黄緑色の1台は、他のスポーツバイクと並ぶと目立ちます。
取材する立場としては、そのとき三浦コーチがどこにいるのかの目印になって、大変ありがたい存在です。
ちなみにブルペンの近くに止まっていた自転車が黄緑色だけだったとき、山崎康晃投手が乗ろうとしていました。
これは、もちろん冗談。笑みを浮かべながら、とことこと歩いて引き上げていきました。
1/9枚