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絶対ぶつからないボール? 8方向から16個が行き来、藝大卒展が話題

東京藝術大学の卒業・修了作品展に出展されているそんな作品が、ネット上で注目を集めています。

話題の作品「Movement act」
話題の作品「Movement act」 出典: 小野澤峻さん提供

目次

 8方向から打ち出される計16個のボール。それぞれ真ん中で交差しているのに、ぶつかることなく動き続ける――。東京藝術大学の卒業・修了作品展に出展されているそんな作品が、ネット上で注目を集めています。その仕組みについて制作した4年生に話を聞きました。

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こんな作品です



 東京都美術館に展示されている作品「Movement act」。

 「*」に横棒を1本加えた形をした木製の台の端々には、ボールを打ち出す「ソレノイド」という部品が8個取り付けられています。

 スイッチを入れるとソレノイドが音をたてて動き出し、ボールを置くと反対側に向かって打ち出されます。

 端まで到達すると、少し横にずれた後、再びソレノイドで元の方向へ打ち返されます。

 タイミングを見計らってどんどんボールを増やしていき、最終的には16個に。

 台の中央部分で交差しているにもかかわらず、ぶつかることな動き続けています。

 この様子を映した動画がツイッター投稿されると、「見てて気持ちいい」「スクランブル交差点の日本人みたい」といったコメントが寄せられています。

話題の作品「Movement act」(こちらはロングバージョンです) 出典: 小野澤峻さん提供

作者は先端芸術表現科4年生


 「卒展期間中の2月3日まで、作品の横に立って1日30回は動かしています」と話すのは作者の小野澤峻さん。美術学部先端芸術表現科の4年生です。

 小学生時代にお手玉を覚え、中学生でジャグリングに。高校はジャグリングができるサークルのある学校を選んだといいます。

 現在もイベントに出演したり、幼稚園や老人ホームで披露したり、といった活動を続けているそうです。

 「ジャグリングのパフォーマンスをどうやったら作品にすることができるのか? そう考えた時に、自分をそこから引き抜いてみようと思ったんです」


0.28秒ずつずれて動く


 大学3年生の夏ごろに着想して、4年生の6月ごろに4方向から6個を打ち出すものを制作。最初のうちは10秒ほどでぶつかってしまったといいます。

 出展した8方向から打ち出す作品では、ソレノイドが0.28秒ずつずれて動くように制御。

 ボールによって個体差があったり、使ううちに木製の台が削れたりといった要因が影響するため、やすりをかけるなどの調整が大変で、この部分に4カ月ほどかけたそうです。

 「ボールを置くタイミングも決まっていますし、実はそれほど難しいことはやっていないんです」


木製にこだわった理由


 台やボールを金属製にすれば手間が減り、より精度の高い動きにできますが、あえて木製にこだわったそうです。

 「人間のライブパフォーマンスと同じで失敗することもあって、見ている人もハラハラ・ドキドキする。その反応も含めて作品にしたいと思ったんです。マシンではなく、パフォーマーなんです」

 卒展の実演を見ていると、ごくまれにボールがぶつかることもありましたが、ほとんどは無事成功。見ている人たちは動画を撮ったり、拍手をしたりと盛り上がっていました。

作者の小野澤峻さん
作者の小野澤峻さん

今後の活動は


 大学ではイベントの企画・運営などに取り組み、「パフォーマーや作家を社会とつなぐ活動」を続けてきたという小野澤さん。

 俯瞰(ふかん)した立場で活動するためにも、まずは作家と名乗れるだけの作品を残そうと「Movement act」を制作したといいます。

 「Movement actは作家としての集大成です。今後はどちらの活動も続けていきたいと思います」

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