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絶対ぶつからないボール? 8方向から16個が行き来、藝大卒展が話題
東京藝術大学の卒業・修了作品展に出展されているそんな作品が、ネット上で注目を集めています。
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東京藝術大学の卒業・修了作品展に出展されているそんな作品が、ネット上で注目を集めています。
8方向から打ち出される計16個のボール。それぞれ真ん中で交差しているのに、ぶつかることなく動き続ける――。東京藝術大学の卒業・修了作品展に出展されているそんな作品が、ネット上で注目を集めています。その仕組みについて制作した4年生に話を聞きました。
明後日から東京藝大卒業作品展が始まります!
— Shun Onozawa (@jugbounce) 2019年1月26日
僕の展示会場はロビー階の第3展示室です。
毎日作品横にいる予定なので、近くに来た際にはぜひ足を運んでみてください!
第67回 美術学部/大学院美術研究科 卒業・修了作品展
1月28日(月)〜2月3日(日)9:30〜17:30まで
※最終日は9:30〜12:00まで pic.twitter.com/2SKOq40XWZ
東京都美術館に展示されている作品「Movement act」。
「*」に横棒を1本加えた形をした木製の台の端々には、ボールを打ち出す「ソレノイド」という部品が8個取り付けられています。
スイッチを入れるとソレノイドが音をたてて動き出し、ボールを置くと反対側に向かって打ち出されます。
端まで到達すると、少し横にずれた後、再びソレノイドで元の方向へ打ち返されます。
タイミングを見計らってどんどんボールを増やしていき、最終的には16個に。
台の中央部分で交差しているにもかかわらず、ぶつかることな動き続けています。
この様子を映した動画がツイッター投稿されると、「見てて気持ちいい」「スクランブル交差点の日本人みたい」といったコメントが寄せられています。
「卒展期間中の2月3日まで、作品の横に立って1日30回は動かしています」と話すのは作者の小野澤峻さん。美術学部先端芸術表現科の4年生です。
小学生時代にお手玉を覚え、中学生でジャグリングに。高校はジャグリングができるサークルのある学校を選んだといいます。
現在もイベントに出演したり、幼稚園や老人ホームで披露したり、といった活動を続けているそうです。
「ジャグリングのパフォーマンスをどうやったら作品にすることができるのか? そう考えた時に、自分をそこから引き抜いてみようと思ったんです」
初めてちゃんと動いた時のもの。この時は木球を使っていて、レールもボールも少ない#藝大卒制 #movementact #先端芸術 pic.twitter.com/HHS9ds4J59
— Shun Onozawa (@jugbounce) 2019年1月30日
大学3年生の夏ごろに着想して、4年生の6月ごろに4方向から6個を打ち出すものを制作。最初のうちは10秒ほどでぶつかってしまったといいます。
出展した8方向から打ち出す作品では、ソレノイドが0.28秒ずつずれて動くように制御。
ボールによって個体差があったり、使ううちに木製の台が削れたりといった要因が影響するため、やすりをかけるなどの調整が大変で、この部分に4カ月ほどかけたそうです。
「ボールを置くタイミングも決まっていますし、実はそれほど難しいことはやっていないんです」
去年7月に展示した卒業制作の原型となったタイプ。ボール数もレール数も今の半分です。これはこれで好きです。
— Shun Onozawa (@jugbounce) 2019年1月30日
#藝大卒制#Movementact#先端芸術 pic.twitter.com/LscXnWxYwa
台やボールを金属製にすれば手間が減り、より精度の高い動きにできますが、あえて木製にこだわったそうです。
「人間のライブパフォーマンスと同じで失敗することもあって、見ている人もハラハラ・ドキドキする。その反応も含めて作品にしたいと思ったんです。マシンではなく、パフォーマーなんです」
卒展の実演を見ていると、ごくまれにボールがぶつかることもありましたが、ほとんどは無事成功。見ている人たちは動画を撮ったり、拍手をしたりと盛り上がっていました。
大学ではイベントの企画・運営などに取り組み、「パフォーマーや作家を社会とつなぐ活動」を続けてきたという小野澤さん。
俯瞰(ふかん)した立場で活動するためにも、まずは作家と名乗れるだけの作品を残そうと「Movement act」を制作したといいます。
「Movement actは作家としての集大成です。今後はどちらの活動も続けていきたいと思います」