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Wikipediaそのまま載せちゃった 謎の看板「727」全面広告の狙いとは
新幹線に乗っていて車窓から「727」と書かれた看板を見たことはありませんか?
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新幹線に乗っていて車窓から「727」と書かれた看板を見たことはありませんか?
新幹線に乗っていて車窓から「727」と書かれた看板を見たことはありませんか? あの看板の会社が先日、ちょっと変わった新聞広告を出しました。インターネット百科事典「Wikipedia(ウィキペディア)」に記載された自社の説明画面を、そのままキャプチャーして載せたのです。いったいどんな狙いがあったのか? そもそもどんな会社なのか? 担当者に話を聞きました。
「727」の看板を出しているのは、大阪市にある化粧品会社「セブンツーセブン」です。
主力は女性用化粧品、ヘアケア用品、美顔器など。全国約7000店の美容室で専売品として売られています。
気になる社名は、創業者の誕生日が7月27日だったことに由来しているそうで、1945年7月27日創立、本社と本社工場の電話番号も下4ケタが0727と、随所で「727」にこだわっています。
社名が書かれた看板を立て始めたのは1979年。ライバル会社と同じ媒体では埋もれてしまうと考えて、田畑や空き地に「野立て看板」を立てたそうです。
現在の設置場所は新幹線沿線に特化。東海道・山陽・上越・東北の各新幹線の沿線にあります。
理由について、企画室の磯島裕介さんはこう話します。
「利用者数の多さです。東海道新幹線だけで、1日の利用者は約43万人と言われています。男性が圧倒的に多いイメージですが約3割は女性です。男性にも女性にも効果的だと考えています」
看板の数については「よく謎の看板と言われるので、数も謎の方が面白いのではないかということで公表していません」とのこと。
一度立てたらおしまいというわけではなく、定期的に新幹線に乗って目視でのチェックも行っているそうです。
そんな「セブンツーセブン」の新聞広告が今月7日、朝日新聞大阪本社版に掲載されました。
Wikipediaに記載された自社の説明画面をキャプチャーしたもので、会社概要や沿革、看板のことなどが書かれており、読めば会社のだいたいのことがわかります。
キャプチャー画像の下の方には、こんなキャッチコピーがあります。
「なんの会社かわかりにくいという声にお応えし、弊社Wikipediaをいったんそのまま掲載します」
この広告がネットメディアなどで取り上げられると、「そのままの発想はなかった」「広告としては大成功ですね」といったコメントが寄せられました。
この広告を手がけたのは、電通関西支社ソリューション・デザイン局の花田礼さんです。
727看板のファンで、化粧品会社ということも知っていたという花田さん。
会社の同期と話していて「ああ、あれパチンコ屋だっけ?」と返されたのをきっかけに、その同期とアイデアを作ってセブンツーセブンに自主提案したそうです。
Wikipediaをそのまま載せるというアイデアや、実現させるまでの苦労について、花田さんに話を聞きました。
――なぜWikipediaを載せることになったのでしょうか
端的に言いますと、一般の方々がよく知らない会社を知る最善の方法は、広告でも自社サイトなどでもなく、Wikipediaだと思ったからです。
727さんは「看板は知っているもののそれが何かは知らない」という人が多い稀(まれ)な会社なので、取り組むべき課題はシンプルに「何の会社かを伝える」に絞り込みました。
アイデアについては、今回「既視感の横展開」という手法を使いました。
見慣れているものをモチーフにしてズラすことで、「フリとボケ」で言うところの「フリ」に時間をかけなくていいのでアウトプットがシンプルで伝わりやすくなります。
ここで言う「フリ」は、誰もが知っているWikipediaフォーマットと、何より727さんが長年築いてきた「謎の看板」に当たります。
――掲載されているのはWikipediaそのままで修正などはしていないでしょうか
一部、事実と異なる情報が含まれており、さすがにそれを企業公認の情報として発信するわけにはいかなかったので、その点に限り編集させていただきました。
その際、事前にWikipediaさん側と連絡を取らせていただき「企業に有利な情報を自ら加えるなどしたものを広告利用するのはNGだが、誤情報の訂正のみであればOK」と確認いただいた上で、一つ一つチェックしていただきながら進めていきました。
――広告に使うにあたって、権利問題はクリアしているのでしょうか
Wikipediaの権利まわりは思った以上に複雑で、その点は慎重に進めました。Wikipediaさん側や弊社法務担当とも丁寧に確認し、権利関係をクリアにしていきました。
――広告を制作する上で苦労した点は
当初、単にWikipediaのスクショとコピーを置くだけではビジュアル的なインパクトを出しづらかったのですが、アートディレクター・大原漢太郎の尽力によって、怪しさを含んだ絶妙な気配を生み出せたのが、目をひく上で大きかったと思います。
また、Wikipediaさん側(WIKIMEDIAFOUNDATION)は日本に確認窓口がないようで、全てアメリカとのやりとり、かつ、先方もこのようにWikipediaのスクリーンショットをそのまま広告利用したことは無かったようで、交渉に数カ月かかりました。
――ネット上で話題になったことについては
ネット上で話題を作るために、その真逆のオールドメディアである新聞と組み合わせることの可能性を、より強く感じました。新聞広告は個人的にいま一番熱いメディアです。
今回のような企画をご理解いただき、一緒に面白がって作ってくださった727の担当者の方々が一番すごいと思います。大きな看板に数字だけ書いて掲出し続けている会社は、ダテではないと感じました。
広告が注目を集めたことについて、セブンツーセブンの磯島さんはこう話します。
「まだ営業や取引サロンからの反応は聞けておりませんが、掲載された新聞を持って年始のあいさつに来られた業者様も複数おられました。今回の新聞広告だけで当社のことを理解いただいたとは思っておりません。今後は広告という枠にとらわれずに企業認知のための活動を行っていく予定です」
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