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すり減る靴底、情けない……「けり出し力」意識で歩き方革命
靴箱を見渡すと、かかとがすり減ったおしゃれなスニーカーに、輝きが薄れた革のパンプス……。お気に入りの靴なのに、きれいに履けない自分が情けない。靴選びから手入れ・修理、歩き方まで相談に乗ってもらえる靴の「コンシェルジュ」に教えてもらうことにしました。 (朝日新聞鳥取総局記者・斉藤智子)
訪ねたのは、鳥取県倉吉市で靴の修理・クリーニングと保管サービスを提供する「シュプリ」。
社長の岸田将志さん(33)は市内の靴店「シューズショップコマツ」の3代目です。健康管理の観点から正しく合った靴を販売する専門家「シューフィッター」や、全日本ノルディック・ウォーク連盟公認の指導者の資格を持ち、靴店はウォーキングイベントも主催しています。
記者が持ち込んだおしゃれスニーカーは、かかとの外側が大きくすり減っています。
接地面の薄い層は削れてなくなり、クッション性のある中間層まで斜めに削れた状態。靴を履くと足が外側に倒れてしまいます。
「傾いた靴を履き続けていると、足が外側によれてバランスが崩れるので体にも良くない」と岸田さん。
より削れているのは右足です。
「右の外側に重心がかかった歩き方をしていますね」。ぎくり。
スニーカーの靴底修理は、すり減った部分をゴムやウレタンなどの素材で継ぎ足したり埋めたりして平らにし、底を張り替えます。店によりますが、接地面の薄い層だけのソール(靴底)取り換えなら2千~3千円。オールソールなら1万円以上。ランニングシューズの底を張り替えながら大事に履き続けている人もいるといいます。
記者のスニーカーの場合は「修理できなくはないですが、かなり継ぎ足すことになってバランスがちょっとおかしくなる。おすすめはしないです」。
費用もかかるといい、思い入れとの費用対効果で修理をあきらめました。別のもう1足、薄い接地層だけが削れたスニーカーは修理してもらいました。
「時々靴底をチェックして、早め早めに気付いてあげると靴も長持ちします」と岸田さん。
革靴も見てもらいました。10年以上のつきあいのパンプスは、中敷きを2枚入れても緩めなので、処分することに。20年近く履いている1足は、傷んだゴム底をオールソール交換してきれいになりました。
できれば、お気に入りの靴がすり減りにくい、良い歩き方を身につけたい。
シューズショップコマツが主催するイベントでポールを使ったノルディックウォークを体験しました。歩幅が広がる、腕をしっかり振ることで肩甲骨の可動域が広がる、などの効果があるといい、日頃の歩き方に応用できそうです。
先生を務める社員の井勢天智さん(23)は全日本ノルディック・ウォーク連盟公認指導員の資格を持つ。幼い頃から親しんだレスリングやサッカーで動作時の重心を意識してきたといい、これまで靴底がすり減ると感じたことがないといいます。
「靴店に就職して初めて、靴底が減るというお客様の悩みに接した」とのこと。2年間履いているというスニーカーの底を見せてもらうと、全くすり減っていませんでした。
記者のすり減り過ぎスニーカーは、買って2年もたちません。
減り方を見てもらうと、「けり出す動作がしっかりできずに、擦っているのでは」との指摘。
「歩く時は、かかとから着地し、そのまま足裏全体を地面について、しっかりけり出す。重心が真ん中にあって、ちゃんとけり出せば、すり減ることはあまりないと思う。サイズも大事。合っていないと、靴の中で足が遊んでしまって、うまく重心移動ができない」と井勢さん。
「ももをポンッと上げるイメージでけり出して」とアドバイスしてもらいました。
「靴をきれいに履くぞ計画」の仕上げに、革靴の手入れを「シュプリ」で教わりました。
柔らかいブラシでほこりを落としただけでも、大分きれいになります。クリーナーで汚れを取り除いたら、栄養や色を補うクリーム。コシのある豚毛ブラシで磨き込むと、摩擦でクリームがしっかり入ってピカピカになりました。
取材以来、「けり出す!けり出す!けり出すーーー!」と意識して歩くようになったら、歩幅が広がって、歩く速度も増した実感があります。これから靴が長持ちしますように! 靴磨きも、教わったら同じ靴と思えないくらいピカピカになって感動です。一日の終わりは靴をチェックして自分を見直したいです。
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