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バブル時代は車が景品!? 慶応の三田祭、歴史たどったらスゴかった

89年の三田祭パンフレットに掲載された福引のお知らせ。賞品には18金の指輪などもある
89年の三田祭パンフレットに掲載された福引のお知らせ。賞品には18金の指輪などもある

目次

慶応義塾大学の学園祭「三田祭」が11月22~25日に開催されます。毎年約20万人が訪れるという都内有数の学園祭は今年で60回目という節目。その学園祭を運営する実行委員会が60年を振り返る「60年史」を制作していると聞きました。過去の学園祭の歴史をたどりながら、どんな時代の流れが見えたのでしょうか? パンフレットなどの資料を通して見えてきたものを委員たちに語ってもらいました。

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昨年の三田祭の様子=三田祭実行委員会提供
昨年の三田祭の様子=三田祭実行委員会提供

ネット世代がまとめる「三田祭60年史」

今回、語ってもらったのは、第60回の三田祭実行委員長の馬場永希也さん(法学部政治学科・4年)、「60年史」の編集長福島里佳子さん(商学部・4年)、編集者の平岡裕梨さん(商学部・3年)。

いずれも、1996~97年生まれです。96年はインターネット検索サイト「Yahoo! JAPAN」が開設した年。バリバリのインターネット世代です。

三田祭実行委員長の馬場さん(中央)、「60年史」編集長の福島さん(左)、年史制作に携わった平岡さん(右)
三田祭実行委員長の馬場さん(中央)、「60年史」編集長の福島さん(左)、年史制作に携わった平岡さん(右)

学生の主張たっぷり 1960年代~70年代前半

第一回の三田祭が開かれたのは、1959年。校舎の改装時期などを除いて、東京都港区にある三田キャンパスで毎年開催されてきました。

初期である1960~70年代は学生運動が盛んな頃。三田祭のパンフレットにも学生の論文がいくつも並び、主義・主張を訴えるものが多くありました。実行委員会の中にも、学園祭がどのような考えに基づいたイベントであるべきかを考える「理論局」という部署がありました。

1970年ごろの三田祭のパンフレットに書かれた論文。変動相場制への移行が大ニュースとされ、「革命」や「権力闘争」といった今の大学生はあまり語られなくなった言葉が並ぶ
1970年ごろの三田祭のパンフレットに書かれた論文。変動相場制への移行が大ニュースとされ、「革命」や「権力闘争」といった今の大学生はあまり語られなくなった言葉が並ぶ

 

馬場さん

だいぶ発信するということが多い感じがする。研究発表も「これみんなに知ってほしい」みたいなモノが強い

 

福島さん

初期の三田祭には模擬店がなくて、アカデミックな側面だけ。ちょっとさみしい

福島さんが話した通り、1960年代は学生による模擬店はなく、食堂が出店しているぐらいでした。そんな1969年の三田祭の地図では、中庭の中心で郵便切手販売の出店があり、「今じゃ考えられない」と3人が盛り上がりました。

模擬店は、1970年代に入ると徐々に増えていきます。最初の頃は駄菓子やラムネ、餅などの出店が多かったようです。

1970年代の三田祭での出店の設営風景=慶応義塾広報室提供
1970年代の三田祭での出店の設営風景=慶応義塾広報室提供

福引賞品に自動車、屋台にうな丼…バブルはやっぱりすごかった

そして、最も盛り上がったのが、バブル時代でした。

当時は「模擬店祭り」と冷やかされるほどに多くの出店であふれ、今では考えられない企画もありました。それらに、委員も興味津々に。中でも驚きを呼んだのが、三田祭の名物企画である「福引」の賞品の豪華さです。

1回300円で当たる特賞には自動車「ニッサン・サニー」。続く1等賞でも「米国ツアー10日間」というから景気の良さが伺えます。

1980年代の三田祭の様子。奥には賞品とみられる自動車が飾られている=慶応義塾広報室提供
1980年代の三田祭の様子。奥には賞品とみられる自動車が飾られている=慶応義塾広報室提供

 

福島さん

80年代のパンフレットが本当にすごくって。賞品には車があるし、86年のパンフレット見ると、模擬店で「うな丼」が売っている

 

平岡さん

テントでうな丼売ってたんですか??

 

福島さん

そう、すごいよね。今は菌が繁殖しやすいから米を使った模擬店が禁止されているし、時代背景が違う

80年代終盤に隆盛を誇った「恋人リサーチ」

模擬店の企画でもう一つ話題にあがったのが「恋人リサーチ」という言葉。1980年代を中心に数多くの出店があったこの企画は、恋人募集中の大学生たちが、学園祭中に来場者と電話番号などを交換する単純な内容です。

ただ、現在から見ると考えられないほど斬新に感じられたようです。最盛期には、三田祭の模擬店の1割以上を占めていました。

1988年の学園祭MAPには、多くの「恋人リサーチ」の出店があった
1988年の学園祭MAPには、多くの「恋人リサーチ」の出店があった

 

馬場さん

え、こんなテントあるの?76の出店中10店が「恋人リサーチ」になっている

 

平岡さん

一大勢力ですね。出店団体もテニスや野球、スキーサークルでバラバラ

 

福島さん

今なら企画の申請を出されても絶対断るよね、家の電話番号を聞くなんて。でも、年史の取材で当時の先輩に話を聞くと「全然電話番号聞けなかった」っていう人も多かったみたい。笑

 

馬場さん

家電(いえでん)か!そうか、この時代は携帯もSNSもないのか。だから需要があったのか

 

福島さん

1999年には2団体になり、2000年代にはなくなった。時代遅れの企画になったのかもしれない

そして現在 お酒禁止でも楽しめる祭りを

意外なところにも、時代の移り変わりが垣間見えました。それがお酒です。

現在、多くの大学の学園祭では、飲酒ができなくなっており、三田祭も泥酔者の立ち入りや酒類の持ち込みが禁止だったことに加え、昨年からは出展団体の酒の提供が一切できなくなりました。一方、昔の三田祭のパンフレットにはビールの広告が複数掲載され、地方の日本酒なども販売していました。

86年のパンフレット。ワインや日本酒と行った酒の販売や、うな丼の模擬店が紹介されている
86年のパンフレット。ワインや日本酒と行った酒の販売や、うな丼の模擬店が紹介されている

 

福島さん

昨年に酒の販売がなくなる前も、アルコール度数の制限があった。なので、ワインが売っているっていうだけでもびっくり

 

馬場さん

昔は学内で売っていたので学園祭の中で泥酔者がいたみたいだったけど、去年は学内で飲めなくなった代わりに、すぐ近くで酒盛りをはじめたり、近隣で酒の缶とかを捨てる人がいたり。今年は校外の清掃活動を強化することになりました。お酒は適量で楽しんでほしいですね

インタビューの最後に、60年続く三田祭を振り返って感じたことを伺いました。

パンフレットを手に語り合う3人
パンフレットを手に語り合う3人

 

福島さん

進化し続けていると感じました。どの年もそれぞれの時代を表していて、時代に乗ってずっと変わってきたんだなと思いました

 

平岡さん

振り返ってみると昔の三田祭からも学ぶことが多いなと。どうしても規制が増えていく中で考え方がしぼられてしまっている部分がある。もしかしたら今なら活用できる、ってこともあるのかなと思いました

 

馬場さん

パンフレットとかを読んでいると、60年間変わらないものがあると思う。それは4年間頑張ってきたこと、思ったことを表現しているという点。きしめんとかうな丼を売った人たちもみんなで絆を深めてこようとしたんだろうなって。そんな学生の思いはいつの時代も変わらないんだなと思います

学園祭直前でお忙しい中での取材ありがとうございました。60年史は12月以降に完成し、慶応大の三田キャンパスの図書館(メディアセンター)に寄贈される予定だそうです。

昨年の三田祭の装飾=三田祭実行委員会提供
昨年の三田祭の装飾=三田祭実行委員会提供

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