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2018年11月10日

結婚って当たり前? 「結婚相手は抽選で」が描く、いびつな日本社会


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主人公の宮坂龍彦(野村周平)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から

主人公の宮坂龍彦(野村周平)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から

出典: 東海テレビ提供

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 「ひとごとに思えない。泣きそう」「共感してくれる優しさみたいなのがある」「ほんとに結婚って何だろうね」――。

 そんな感想がSNSに上がっている連続ドラマがあります。放送中の「結婚相手は抽選で」(フジテレビ系、土曜午後11時40分)です。
 
 少子化対策のために、未婚者は政府から強制でお見合いをさせられる法律ができ、3度相手を断るとテロ対策活動の後方支援に従事しなくてはならないという内容です。
 
 なんとも気味が悪い法律ですが、結婚を半強制とする設定により、現実社会でも若者たちがひそかに抱えているであろう家族内の問題や、自分に自信が持てないといったつらさを、浮かび上がらせる仕掛けになっているのです。

 制作は東海テレビ。同局の河角直樹プロデューサー(44)に、この作品に込めた思いを聞きました。

東海テレビの河角直樹プロデューサー

東海テレビの河角直樹プロデューサー

共感できる人物たち

 記者が最初に心に刺さったのは、2話のシーンでした。
 主人公の龍彦(野村周平)がお見合いをした相手は、すぐに龍彦を断ってきます。その理由を龍彦が聞くと、彼女は自分の人生について語り始めます。

 子どものころに「デブス」と男子にからかわれ、「お嫁さんになりたいなんて夢」は胸にしまい、小学3年生で「一生結婚しない」と自分に誓ったこと。勉強も仕事も努力し続け、マンションも自分で買ったこと……。そして言います。

 結婚の夢を捨てたかわりに今の私があるの。なのに、抽選相手と見合いしろ、適齢期の男女は結婚しろ、なんて法律があっという間にできた。(中略)結婚しなくちゃ国からは人として認められないってこと? 私がどんな気持ちで、普通の女の子の夢、封印したと思ってるのよ。

 彼女は自らテロ対策の後方支援に行く選択をするのです。
 このシーンにはSNS上でも、「胸に刺さるものがあった」「感情移入しちゃう」などの声があがりました。

 作品ではこのほかにも、誰かにとって強く共感できるであろう人物が出てきます。高圧的な祖母に育てられ自分を出せないでいる女性、病気で子どもを産めない女性、同性愛者であることを隠して生きるエリート男性……。


 河角さんは「社会は多様化し、結婚制度や昔ながらの家族観が当てはまらないこともある。しかし、働く女性が増えているのに、『男は外で働き女は家を守る』という固定観念を押し付ける向きもあるように、今の日本社会には、差異化を促す一方で、枠にはめようとする力が働くいびつさが見える。そこに触れたかった」と話します。

厳しい祖母に育てられ、自分を出せないでいる冬村奈々(高梨臨)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から

厳しい祖母に育てられ、自分を出せないでいる冬村奈々(高梨臨)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から

出典: 東海テレビ提供

 また、河角さんは「人に『生産性』という言葉を使う議員が出てくるような世の中だからこそ、多様性を認めていこうというメッセージは込めたかった」と言います。

 
 「何事も二項対立で語られがちな世の中ですけど、様々なマイノリティーも暮らしやすい社会を作ることと、伝統を守ることを対立事項にするのは違うと思う。色んな生き方をサポートできる世の中づくりを考えるドラマを作っていきたいと思っています」

母親に依存されている鈴掛好美(佐津川愛美)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から

母親に依存されている鈴掛好美(佐津川愛美)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から

出典: 東海テレビ提供

結婚は「通行手形」?

 主人公・龍彦も苦しさを抱えています。中学生の時、いじめがある学校を変えようと生徒会長選挙に出るも落選。真面目な訴えをしたことで陰口を言われ、人間不信になりました。極度の潔癖性になり、大人になった今も特に異性とはうまく接することができません。龍彦は友人に、こう漏らします。

 みんなが普通に持っている恋愛できる才能が僕には備わってない。それが無いってだけで何をするにも自信が持てなくて。どこへ行っても僕だけ場違いな気がして。つまり僕は、この世に存在すること自体無意味なバグだらけの欠陥品としか思えないんだ。

 河角さんは独身で、龍彦を見ていると身につまされる部分があると言います。自身が感じていることをこう話します。

 「結婚をしていないことで、世の中に対する『通行手形』を持っていないというか。はっきり言葉として言われるわけではないけど、独身男性に対する世間の目線を感じることがある。自分が勝手に引け目に感じているだけかもしれませんが、社会通念が人を苦しめる部分がある。どんな生き方を選択しようと当人の人生なのですが」

主人公の宮坂龍彦(野村周平)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から

主人公の宮坂龍彦(野村周平)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から

出典: 東海テレビ提供

 抽選見合い結婚法を担当する大臣の描き方にもこだわりました。大臣は元シンクロ選手の女性で、離婚経験があり、娘が1人います。官房長官から、「結婚に失敗した」、子どもが「たった1人」、などと人目につかない所で皮肉を言われるのです。大臣が、娘との関係で悩んでいることを示唆する場面もあります。

 「ドラマに出てくる政治家は類型的な悪役になりがちですが、『国家』のために働く生身の女性が、プライベートで抱えているものがあるということを入れたかった」

抽選見合い結婚法を担当する小野寺友紀子大臣(若村麻由美)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から

抽選見合い結婚法を担当する小野寺友紀子大臣(若村麻由美)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から

出典: 東海テレビ提供

主張する勇気を取り戻す

 前回放送の5話では、龍彦は友人からゲイであることを告白され、異性愛が前提の法律により苦しんでいる人がいることを痛感しました。次回10日の6話では、性的マイノリティーについて学んだ龍彦が、「抽選見合い結婚法」の改定を求める上申書を作ります。

 主張するとたたかれるという恐怖心から目立たないように生きてきた龍彦ですが、少しずつ自分の正義を貫く勇気を取り戻していくのです。

主人公の宮坂龍彦(野村周平=左)と、龍彦にゲイだとうち明けた友人の北風祐輔(松本享恭)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から

主人公の宮坂龍彦(野村周平=左)と、龍彦にゲイだとうち明けた友人の北風祐輔(松本享恭)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から

出典: 東海テレビ提供

 ドラマの1話で、「抽選見合い結婚法」の成立は、あっさりと描かれました。河角さんは「法案が出た当初から反対運動が起こるという描き方もあると思った。しかし冷静に考えてみると、私たちは本当に反対するのか、疑問になった。世の中は意外と受け入れて、流されるんじゃないか」と話します。
 

 この部分に、河角さんの作品を通じた問いかけが詰まっています。
 「流されていいのか。自分で考え、違うと思うことは声をあげるのが本当の大人でしょ?というのを作品全体を通じて描いていければいいと思っています。皆さんだったらどうするか、考えながら見てもらえたらうれしいです」

主人公の宮坂龍彦(野村周平=左)と、フリージャーナリストのひかり(大西礼芳)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から

主人公の宮坂龍彦(野村周平=左)と、フリージャーナリストのひかり(大西礼芳)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から

出典: 東海テレビ提供

取材を終えて

 「結婚はまだ?」「子どもをつくらないと」。こんな言葉をかけられたことがある人も多いと思います。結婚を強制する空気は今の社会にもあり、ドラマはその空気を政府による「制度」として表現しているように見えます。今の社会に置き換えてみることができるドラマです。

 現実の家族とは、「男女が出会い、結婚し、子が生まれ、幸せに暮らしました」という構図だけではありません。ドラマの登場人物の奈々が抑圧的な祖母がいる家では感情を出せないように、好美の父親がアルコール依存症で母を苦しめたように、家庭の中には様々な問題があります。

 また、龍彦が恋愛できない自分を欠陥品と感じてしまうように、「異性から愛されるべきだ」という社会の空気は、人から個性をうばってしまうこともあると思います。そもそも同性愛もありますし、支え合う人間の関係は結婚だけではないはずです。

 恋愛や結婚を賛美するようなドラマも好きですが、このドラマは、「結婚」というフィルターで世の中を見ることで、「それ以外」の人生にも寄り添ってくれると感じています。

広告会社に勤める銀林嵐望(大谷亮平)。結婚してこなかったのには何か理由がありそうだ。ドラマ「結婚相手は抽選で」から

広告会社に勤める銀林嵐望(大谷亮平)。結婚してこなかったのには何か理由がありそうだ。ドラマ「結婚相手は抽選で」から

出典: 東海テレビ提供

潔癖性の主人公・自分を出せない女性……「結婚相手は抽選で」の世界
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