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2018年11月08日

「僕も殺されていたかも」“アルビノ狩り”知った当事者が選んだ道

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アルビノの伊藤大介さん(中央)とタンザニアの女性=2015年、伊藤さん提供

アルビノの伊藤大介さん(中央)とタンザニアの女性=2015年、伊藤さん提供

 「僕もアフリカで生まれていたら、殺されていたかもしれない」。日本で、そんな恐怖を感じた人がいます。遺伝子疾患のアルビノで生まれたため、肌の色が白く、金髪の伊藤大介さん(26)です。アフリカで今も続く「アルビノ狩り」を知ったことをきっかけに、国際協力機構(JICA)職員として途上国支援の道に進みました。伊藤さんは、子どものころは見た目や弱視に悩み、就職活動でも髪の色を指摘された経験があります。伊藤さんに話を聞きました。

タンザニアでの体験を話す伊藤さん。今は、JICA職員として、途上国支援のため働いています

タンザニアでの体験を話す伊藤さん。今は、JICA職員として、途上国支援のため働いています

新聞を読んで、衝撃

 アフリカでは、呪術に使う目的で、肌や体毛が白いアルビノの人々を襲い、身体を切断するアルビノ狩りが起きています。切り取られた身体は、闇マーケットで高い値段で売買されているといいます。国連の独立専門家によると、過去10年間で、アフリカ28カ国で約700件の襲撃がありました。

  伊藤さんは2012年に、アルビノ狩りを伝える新聞記事を読み、衝撃を受けたといいます。

 「僕もアフリカで生まれていたら、殺されていたかもしれません。アフリカや途上国支援に興味を持つきっかけとなりました」

 「当時は、自分がアルビノであることを受け入れきれていない時でした。一緒に記事を読んだ母親からは『日本に生まれてラッキーだったね』と言われましたが、私は『別にアルビノに生まれたこと自体はラッキーではないだろう』と腑(ふ)に落ちない気持ちになりました」

伊藤さんがアルビノ狩りに関心をもつきっかけとなった2012年12月18日の朝日新聞の記事

伊藤さんがアルビノ狩りに関心をもつきっかけとなった2012年12月18日の朝日新聞の記事

出典: 2012年12月18日、朝日新聞朝刊

アフリカのタンザニアへ

 伊藤さんは大学院に在籍中、スウェーデンに留学。記事を思い出し、アフリカのアルビノ支援に参加することを思い立ちます。2015年12月から、1カ月間、アフリカ東部のタンザニアにあるNGOにインターンシップ。アルビノの子ども約100人が通う公立の学校でボランティアをしました。

 「家から通えない子たちは、学校に併設された寄宿舎で暮らしていました。寄宿舎は、子どもたちを襲撃から守るためなのか、塀で囲われ、ガードマンがいました。中には、3歳のころから親から引き離され、ずっと暮らしている子も。保護施設としての性格もあったと思います」

 この学校に通う子どもたちの悩みは、伊藤さんが子ども時代に感じていた日々の悩みと変わりませんでした。

 「アルビノに伴う視覚障害で黒板が見えないとか、日焼けが心配とか。どこに生まれても、アルビノの人は同じことに困っています。ただ、日焼け止めが普及していない分、日本よりも深刻で、アルビノの皮膚がんが問題になっています」

タンザニアのアルビノの子ども(前列)。紫外線に弱いため帽子をかぶっている=2015年、日本財団提供

タンザニアのアルビノの子ども(前列)。紫外線に弱いため帽子をかぶっている=2015年、日本財団提供

村を追い出されたアルビノの赤ちゃん

 学校の近所にある孤児院で、生後6カ月のアルビノの赤ちゃんと出合います。母親は、15歳の少女でした。

 「彼女のパートナーである18歳の少年は、『自分と髪の毛も肌の色も違うこんな子が、僕の子であるはずがない』と言い、彼女のもとを去っていきました。そして、家族も『そんな子どもを家においておくと家族が襲われる』との理由で、彼女と赤ちゃんを村から追い出したそうです」

 「タンザニアでは、アルビノに対して『悪魔』『呪い』というイメージが存在しています。大きな原因は、アルビノを知らないことです。もしアルビノについて、彼女のパートナー、医者、両親、そして他の多くの人々が知っていれば、彼女たちの状況は変わったのではないでしょうか。知っているだけで、誰かを守ることができると思います」

伊藤さんがタンザニアで出合った当時15歳の女性とアルビノの赤ちゃん=伊藤さん提供

伊藤さんがタンザニアで出合った当時15歳の女性とアルビノの赤ちゃん=伊藤さん提供

「襲われたのは僕だったかも」

 インターンシップ中、タンザニアの都市部で、日中にアルビノの人が襲撃に遭う事件が発生します。

 「ニュースを聞いて、都市で、しかも日中にかかわらず、こんなことが起こるのかと恐怖を覚えました。もしも僕がそのとき、その街を歩いていたら、襲われたのは僕だったかもしれません。アフリカのアルビノの人たちは、僕が日本では体験したことのない恐怖を抱え、それを乗り越えて暮らしているのだと、感じました」

 今月開かれる国際会議「東京アルビニズム会議」で、伊藤さんは自らの生い立ちや、タンザニアでの体験を語ります。会議では、アルビノ狩りで襲われ、両腕を失ったタンザニアの女性も経験を語ります。

 「アルビノ狩りは当事者だけの問題ではなく、解決に向け世界が協力して取り組むべき問題です。日本では認知度が低い問題ですが、見て見ぬふりはできません」

伊藤さん(中央)と、タンザニアのアルビノの女性2人(右端と左端)=2015年、伊藤さん提供

伊藤さん(中央)と、タンザニアのアルビノの女性2人(右端と左端)=2015年、伊藤さん提供

就職活動で面接官に「髪の毛を…」

 大学院を卒業し、今はJICAで働く伊藤さん。学部生時代の就職活動では、大手の民間企業を受けた際、「接客の時、毎回、お客さんにアルビノであることを説明するんですか? 髪の毛を黒く染めたほうがいいのでは?」と面接官に言われました。

 「弱視について聞かれるならまだしも、生まれつきの見た目が問題にされるのかと驚きました。子どものとき、『外国人だ』『不良だ』って言われたり、チラチラ見られたりという経験はありましたが、まさか就職活動でハードルになるのかと。同じ能力の人が2人いたら、僕は落とされるだろうなって感じました。だから、ほかの人よりも勉強や経験が必要だと思い、大学院に進み、海外留学やアフリカでの活動にも挑みました」


アルビノ支援にタンザニアに訪れた伊藤さん=2015年、伊藤さん提供

アルビノ支援にタンザニアに訪れた伊藤さん=2015年、伊藤さん提供

弟や妹のためにも

 伊藤さんの弟(24)も妹(18)もアルビノです。妹が生まれた時、伊藤さんは母親に「妹もアルビノでよかったね」と言ったそうです。

 「僕は覚えていないのですが、その言葉を聞いて、母親は安心できたと言います。僕は弟や妹のためにも、何事にもチャレンジしようと思って生きてきました。兄である僕が、アルビノであることに悩んだり、困ったりしていたら、弟も妹も不安になってしまうでしょうから」

 伊藤さんは今、「日本アルビニズムネットワーク」で、アルビノの当事者を支援しています。

 「僕もアフリカや日本で年上のアルビノの人々と出会い、経験を聞くことで、安心できました。次は僕が若いアルビノの子たちに、自らの体験を伝える番です。アルビノだってやりたい仕事はできることを、身をもって示していければと考えています」
 

     ◇
 

 11月9日、アルビノ狩りについて考える国際会議「東京アルビニズム会議」(日本財団主催)が東京都内で開かれ、伊藤さんも体験を話します。午前9時~午後5時半、東京都港区の日本財団ビルで。8日午後6時まで参加者を募っています。応募はこちらから。


 

「僕も殺されていたかも」“アルビノ狩り”知った当事者が見た現実
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伊藤さんがタンザニアで出会った当時15歳の女性と、アルビノの赤ちゃん
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出典:伊藤さん提供
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