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「猫が逃げた」北海道地震のツイートで急増した“意外な言葉”
「猫が逃げた」。北海道地震関連のツイートを調べたところ、意外なつぶやきが1万件以上も投稿されていたことがわかりました。大阪北部地震でも同様のツイートがあったようです。地震で猫たちに何が起きたのでしょうか。猫の隠れ場所や対策についても、調べてみました。(朝日新聞社会部記者・遠藤雄司)
9月6日の北海道地震で震度5強を観測した恵庭市。自宅で寝ていた19歳の女性は、突然の激しい揺れで目が覚めました。すると、普段なら足元で寝ている飼い猫の「にゃあ(オス、1歳11カ月)」の姿が見当たりません。女性は、部屋中を探し回り、押し入れの中で声もあげずに震えている、にゃあを見つけました。
抱き上げてケースに入れようとすると、腕をすり抜け、逃げ道確保のために開けておいた玄関から走り去ってしまいました。停電で辺りは真っ暗。夜明けまでは自宅周辺を探すことも出来ませんでした。その後は自作ポスターを避難所やコンビニに張り、ツイッターでも情報提供を呼びかけました。
にゃあの突然の帰宅は12日の午後7時ごろ。エサを置き、開け放っていた玄関に自ら姿を現したそうです。女性は「鳴き声が聞こえた時は号泣した。本当にうれしかった」といいます。
にゃあのように、猫が地震で逃げてしまったケースはほかにもあったようです。
朝日新聞は、地震発生直後から一週間の日本語ツイート(約5億2890万件)のうち、ハッシュタグ(#)北海道地震が付けられた79万850件を、AI(人工知能)で分析しました。
このうち「猫が逃げた」ことに関するものは、全体の1%にあたる1万171件。北海道内から発信されたと特定できた39616件のうち、658件ありました。
女性とにゃあが暮らす恵庭市など3市を管轄する千歳保健所には、「地震で飼い猫が逃げた」という連絡が9件あったそうです。
札幌市動物管理センターにも、飼い猫が逃げたという連絡が22件ありました。
このうち、千歳保健所は1件、札幌保健所は15件、無事帰って来たという連絡があったそうです。
6月の大阪北部地震でもツイッターで脱走した猫の情報を呼びかける投稿が相次ぎました。
大阪北部地震で依頼を受けて猫を探したというペット専門の捜索業者「ジャパンロストペットレスキュー」(東京都小平市)の社員田島和晃さんは「割れた窓や網戸を突き破って逃げたケースもあった」と言います。
室内飼いの猫は、外に出ても近くにいるケースが多いため、通常は居なくなった地点から半径約200メートル以内が捜索対象で、自宅の敷地内や周辺の家、人通りの少ない場所などで見つかることが多いとそうです。
逃げた猫が戻りやすくする工夫として、田島さんは(1)窓や玄関を開けておく(2)猫自身の臭いのついた使用済みの猫砂を周辺にまく(3)エサを置くこと、などが効果的、といいます。
西南学院大の山根明弘・准教授(動物生態学)は「猫は聴覚が鋭く、ひげも微妙な揺れまで感知するため、地震や余震では人間以上に恐怖を感じやすい」と指摘します。
「『猫は家に付く』という言葉がある通り、本来家はとても大事な場所。そこを離れるというのは、相当なストレスを感じた結果だろう」
猫の隠れ場所としては、住宅の軒下、人が使っていない納屋などの建物、茂みの中などが挙げられるそうです。
「猫の祖先である山猫は元々、岩穴のような所で住んでいたため、狭くて体のどこかが接していられるような場所を好む。ただ、待つことも大事だ」と山根さん。
猫は自分の位置を把握する能力は高く、混乱が収まって安全だと感じれば、自ら戻ることも多いそうです。
脱走への備えとしては、電話番号を記載した首輪をつけることや、個体識別用のマイクロチップを身に着けさせることが重要性だといいます。
「一度逃げ出してさまよった猫は、やせこけて汚れていたり目つきも変わっていたりして、飼い主でも分からなくなることがある。不安そうにしていたら飼い主がいつも以上にケアをして安心させてあげることが大切です」
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